Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💕 🙏 👍 🍻
    POIPOI 139

    狭山くん

    ☆quiet follow

    2022-06-12/本日のデイリーは後半へ続いたお前らさっさとくっ付け騒動。800字とは以下略。
    3日間に渡った告白編が書けて拙者満足でござる。

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #BL

    空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:12 どうしたもんか。
     汐見はフェルマーから送られたメッセージを見つけてから数えて数度目になるその言葉を胸の内でだけ呟いて。涙に濡れた空閑の瞳と残る三人の男たちからの視線、合わせて八の瞳を向けられて居心地の悪さに少しだけ眉を寄せる。
    「……アマネ」
     所在なさげに小さく漏らされた空閑の声は、この一年半殆どの時間を共に過ごしていたというのにはじめて聞くかのような弱々しいもので。どこか赦しを乞うかのような色を帯びたその声に、汐見はこの場所に足を踏み入れてから二度目になる溜息を吐き出した。
    「……おい、浩介」
    「ん?」
     ジーンズの尻ポケットに差し込んでいた財布を手に篠原へと言葉を掛けた汐見へ、彼はどうしたと言わんばかりに首を傾げて見せる。
    「これで足りるか」
    「おう。釣りは明日渡すって事で良いか?」
    「あぁ、頼んだ」
     財布から札を一枚引き抜いて篠原へと押しつけた汐見は、ぐすぐすと洟を啜り涙を止めようと目元を擦る空閑の手首を掴み上げ「行くぞ」とだけ口にした。
     レストランから空閑を連れ出した汐見が向かったのは、宇宙港の屋上に作られた展望デッキで。軌道ステーション行きのスペースプレーンや国内の他空港へと飛ぶ旅客機の姿を見る観光客の間を縫って、少しだけ奥まった人の居ない場所へと空閑を連れ込んだ汐見はそこでようやく彼の手首を掴んでいた手をそっと外してやる。
     転落防止の柵に寄り掛かりながらじろりと空閑へと視線を向けていた汐見へ、空閑はようやく口を開いた。
    「……さっきの、聞いてたんだよね」
    「そうだな」
     消え入りそうな、困り果てたといったような声色で漏らされた空閑の言葉に、汐見は常と変わらぬ淡々とした調子で答える。
    「アマネ。俺の事、避けてるよね」
     重ねられた問いに、汐見は溜息混じりに肩を竦めながら「違うと言っても、納得しないだろ」と言葉を紡いで。少し考えるように視線を滑走路へと向けた汐見の言葉を待つように、空閑は涙に濡れた瞳を彼へと向けていた。
    「……怖かったんだ」
    「え?」
     少し逡巡するように、言葉を探していた汐見はその一言を口から零した。予想していなかった彼の言葉に、驚いたような声を漏らした空閑へ言い含めるように汐見は言葉を繋いでいく。
    「お前と一緒に居るのが心地良くて、一人に戻れないくらい駄目になりそうで怖かった。だから距離を置こうとした」
     自嘲げな笑みと共に吐き出された汐見の言葉をうまく理解し切れなかった空閑は「なんで」という一言だけをその唇から漏らして。その小さな問いかけに、汐見は「俺は一人で生きていくもんだと、そう思ってたから」と口にする。
     汐見の言葉に是とも否とも口に出来ずに居た空閑は、再びその瞳からぽろりと雫を溢れださせていた。声もなく涙を流しはじめた空閑に、汐見はぎょっとしたようにその切長の瞳を見開いて――狼狽えたように声を上げる。
    「何で泣く!? 泣かないでくれ、いや、泣く程に俺はお前を追い詰めてたのか。すまん」
     汐見が声に乗せる言葉はどこか支離滅裂で、慌てたように自身が纏う服のポケットというポケットを探してもちり紙ひとつ見つけられなかったらしい彼は小さく舌を打ちつつも無骨な指先を空閑の目元へと添える。
     普段の態度からしてみれば存外に柔らかい手つきで、空閑の涙を優しく拭い取った汐見は「お前に泣かれると、どうすれば良いのか分からなくなる」と困ったように小さく笑う。
    「アマネ……ごめん……」
    「お前は俺に謝るような事、やってないだろ」
     ぐずぐずと泣き止めない幼子のように洟をすすり涙を止めようと眉を寄せていた空閑は、しゃくりあげながらも汐見へと謝罪の言葉を口にして。そんな空閑の言葉に、汐見は訝しげに眉を寄せながらその謝罪の根拠を否定する。
    「違くて、だって、俺……、アマネの事が好きで。ずっと一緒に居たくて、だから、なし崩しみたいな感じでセックスとか……」
     汐見の理解を誤解と捉えた空閑がしゃくり上げながら連ねた言葉に合点がいったように「やっぱあれセックスって認識だったんだな」と頷く。
    「え、待って!? それじゃぁアレ、アマネ的には一体何だったっていうの!?」
     あんまりな言葉に涙も飛んでいった空閑が喚けば、ようやっと泣き止んだと満足げな表情を浮かべた汐見は「相互自慰の拡大解釈って可能性もあるだろ」と切って捨てながらも空閑の涙を拭っていた指先で彼の頬をするりと撫でる。
     その指は頬から顎、首筋へと下がり――力強く首元の布を掴み空閑の体を自身へと引き寄せた。
    「ん!? っ、ん、ぅん!?」
     ぐいと引き寄せられ驚きに上げた筈だった空閑の声は、汐見の口の中へと消えていった。見開いた目を白黒させながらも空閑は汐見を引き離す事など出来ずにいて、汐見は空閑の口腔を弄るように舌でその上顎を舐り逃げる舌へと舌を絡めて終いにはその舌を吸い上げる。汐見の唇が空閑の唾液を啜る水音は、ジェット機の轟音にかき消された。
    「アマネ!? 今、なん、えっ!?」
     ようやく解放された空閑は互いの唾液でてらてらと光る唇を指で拭いながら何かを確かめるように小さく唸る汐見へ、慌てふためき声を上げる。慌てている空閑とは対照的に、汐見は熱烈な口付けを送った人間とは思えない程に淡々と言葉を紡いでいった。
    「嫌じゃないんだよ。お前とセックスだったり、キスしたりするの。違うな。寧ろ好きと言っても良いかもしれない。俺は恋愛というものがよく分からないんだが――お前が俺の事を好きでそうしていたのなら、俺もお前の事が好きという理解で良いんじゃないか?」
     試しに自分からしてみたが、嫌ではないんだよなこれが。
     乱心したかのような唐突な口付けの理由を重ねながら、首を傾げそれでも笑みを浮かべた汐見を空閑は勢いよくその腕の中へと仕舞い込む。
    「好き……俺、アマネに恋したし、愛してるんだよ。この一年半。アマネも俺のこと好きになって、俺が居ないと駄目になって」
     懇願するように囁かれる空閑の言葉に、汐見は呆れ混じりの溜息を一つ吐き出してから今告げるべき言葉を声に乗せ、空閑の鼓膜を震わせてやるのだ。
    「困った事に、もうなってるんだ」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works