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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2022-06-17/クソ重男2人連れに高師くんを添えて。道民、道外の人間に地元土産菓子振る舞うの好きでしょ(クソデカ主語)

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #BL

    空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:17「お、良いとこに来たな」
     冬季休暇に伴う寮の閉鎖によって帰省を余儀なくされた高師は、閉鎖期間終了日に合わせてこの雪に閉ざされた北の大地へと舞い戻ってきた。それは、高師へと声を掛けた男達も同様だったのだろう。まだ学生の姿も少ない寮の談話室の一角を占領していた四人の男――フェルマーと篠原そして空閑と汐見。その中で高師へと声を投げたのは篠原であった。
    「お前らはドイツだったんじゃないのか」
     フェルマーの実家に世話になる、と寮を出た筈の篠原は高師に頷いて「どうせお前も寮が開いたらすぐ帰ってくるだろ、ヴィンがそのタイミングで戻らない訳なくない?」と笑みを含んだ言葉を返す。
    「ドイツまで行くんだったら、休暇ギリギリまで向こうにいるものだと思ってただけだ」
     鼻を鳴らしながらも四人の男が占領していたその一角に旅行鞄もそのままで腰を下ろした高師を、篠原は少し意外そうな表情で見る。
    「……何だ」
    「いや、普通に座っちゃうのなって思って」
    「悪いか」
    「いや、上出来なんだけどな?」
     馴染んで来たなぁ。と感慨深げな言葉を重ねる篠原をジロリと見遣り、テーブルの上へと視線を向ける。
    「何をやってたんだ?」
     二人と三人でそれぞれ分かれて座るソファの中央にはローテーブルが置かれ、そのテーブルの上に積まれていたのは様々な菓子類だった。それも学内にあるコンビニエンスストアで売っているようなスナック菓子ではなく、箱に入れられた――所謂銘菓と言われるような菓子。
     このタイミングでそれらが広げられる理由は、ひとつくらいしか見当たらない。その答えを高師へと告げたのは、フェルマーであった。
    「おみやげ交換だよ! ちゃんとシュンメの分もあるからね!」
     楽しげに薄いビニール包装をされた菓子を一つ手に取りながらそう口にしたフェルマーに、それにしてもと高師は首を傾げる。
    「やけに量が多くないか?」
    「殆どは汐見から。今まで使ってなかったバイト代とお年玉思いっきりぶち込んだんだと。「そういやお前ら全員道民じゃねぇ事に気が付いた」とか言って、山のように北海道銘菓買ってきたんだ」
    「ボクのお気に入りはこれ! ウエハースでフロレンティーナなの、サックサクで美味しいよ」
     大箱でいくつも詰まれているいくつもの焼き菓子の出所が汐見であるという事に多少驚きながらも、フェルマーが勧める個包装にされた薄いビニールの包みを手に取り開けば軽く漂うアーモンドの香り。サクリ、と薄く軽い感触のそのアーモンド菓子は薄いウエハースとアーモンドの香ばしさが高師の口の中で絶妙なマリアージュを果たしていた。
    「美味いな」
    「でしょう?」
     ニコニコと笑みを浮かべるフェルマーに、おずおずと頷く高師はテーブルの端に置かれた箱にあ、と小さく声を溢す。
    「しまった、被ったな」
     旅行鞄から取り出すのはテーブルの上に置かれた箱と全く同じもので。恐らくは空閑が買ってきたものなのだろう。テーブルを挟んで向かいに座る空閑はデレデレとした笑みを浮かべており、あまり言葉を掛けたくない。そっとテーブルの端、絵合わせのように同じデザインの箱を重ねる高師はまともな回答を返してくれそうな方――篠原へと正面に座る二人の男たちがどうなってしまっているのかを問う。
    「……あいつら、どうしたんだ。休み前は、もう少し、こう、距離があっただろ、物理的に」
     どう尋ねていいのか分からなくなり、言葉を探しながら途切れ途切れに篠原へと問う高師の言葉は、彼の困惑を篠原へと伝える一助となってはいたがそれと同時に篠原の笑いを誘発させていた。
    「高師お前、挙動不審すぎ。まぁ、あれだ。空閑が帰ってきておやすみ三秒って感じだったな」
     正面に二人並んで座る空閑と汐見はそれはそれは仲睦まじくといった様子でべったりとくっ付いていた。空閑の肩に凭れすやすやと眠る汐見は、常の仏頂面はどこへやら無防備な寝顔を晒しそんな汐見の体重を受け止めている空閑は普段の爽やかさを投げ捨てて好相を崩してそのまま顔が溶けていくのではと危惧する程にデレッデレの笑みを浮かべている。
     幸せいっぱいの新婚さんか。思わずそんな言葉を胸の中でだけ吐き出して、あまりにもざっくり過ぎる篠原の言葉に眉を寄せた。
    「汐見と俺らが丁度玄関でかち合って、ここで土産交換してたら空閑が帰ってきてさ。空閑が隣に座ったらいきなり汐見が空閑にべったり引っ付いて、そのまま寝落ち。何でも空閑が居なくて寝れなかったとかで、寝不足だったんだろうな」
     掻い摘んでその経緯を口にする篠原の言葉に高師は小さく息を吐く。数ヶ月前に起こった、彼らのゴタゴタ――今思えば痴話喧嘩にも近いそれを思い出した。
    「汐見あいつ、こんなんで大丈夫なのかよ。この先」
    「空閑に責任取らせるしかないだろ、これはさ」
     高師からしてみれば彼らは一年には満たないながらも、同じ部活で切磋琢磨してきた仲ではある。空閑の隣で高師の登場にも気付かずに、すっかり牙を抜かれた野生動物のような汐見はすぅすぅと健やかな寝息を立てて夢の中。彼らを見て、気持ちが重いのは空閑の方だとばかり思っていたが――汐見も大概なのだな、なんて高師は認識を改める。
     高師と篠原の会話を聞きつつ汐見へ愛おしげな視線を向けていた空閑は、その笑みをゆっくりと深めながらもようやく高師へと口を開く。
    「俺が居ないと上手く眠れないくらい、俺なしじゃダメになってるとか。最高だよね」
     訂正。空閑の方なんて、もうどうしようもないくらいに重い。高師はそんな事を思いながら、フェルマーが勧めてくれたアーモンド菓子へと再びその手を伸ばすのだ。
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