Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💕 🙏 👍 🍻
    POIPOI 139

    狭山くん

    ☆quiet follow

    2022-08-11/13日まで夜バタバタしてるので今日は3本更新です、の、その1。

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #BL

    空閑汐♂デイリー【Memories】11「だから、言ったでしょう。危ないことなんてやめてって!」
     絶対安静。軌道ステーションに用意された医務室のベッドから動くなと医者に厳命された空閑は、辟易しながら眉を寄せた。空閑の浮かべた表情に、ベッドの横に立つ女は更に声高に自身の主張だけを叫んで。
     軌道ステーションの占拠を目論んだテロリストと一戦やらかし――その結果こうしてベッドから動く事すら許されない身分になってしまった空閑は、その生命だけはこの世に取り留める事に成功していた。
     事件があったのは一週間前、空閑の意識が回復したのは四日前、そして眠り続ける空閑の隣に付き添い続けていたという汐見を訓練場へ行くように言い聞かせたのが三日前だった。
     不幸な事故だった――けれど、汐見がこうならなくて良かったとも思う。あの場所に行こうと誘ったのは、空閑だったから。
    「――だから、退学届を提出したから。いい病院も探してあるの」
    「……今、何て?」
     右から左に聞き流していた言葉には、一言だけ流すことができない単語が混ざっていた。その言葉を確かめるように、震える声を絞り出した空閑に「だから、退学の手続きをしたの! こんな危ないことしてないで、お願いだからちゃんとしてよ!」と彼の母である人はヒステリックに叫ぶ。
     ――俺に相談のひとつもなく、勝手に退学をさせるのか。
     目が覚めた瞬間から――自分の夢が絶たれる事も、ひとつの可能性だと思ってはいた。けれど、それは自分が納得した上で――自分で自分に引導を渡したかったのだ。リハビリでどうにかなる可能性だってあったのに、この人は危ないの一言で人の夢を潰す事が出来てしまうのか。
    「変わらないね。俺はあなたのそういう所が大嫌いだったし、もうあなたには何も期待していないし、あなたの指示にも一切従わない。実家のものは全部捨ててくれていいよ」
     無事な方の腕でナースコールを押せば、外まで金切り声が聞こえていたのだろう。屈強な男達によって、空閑にとっての雑音はすぐに排除されていった。
    「――やぁ、私の事は覚えているだろうか?」
     先程空閑の母親を外へと連れ出した男の一人が、するりと病室へ戻って来る。タブレット端末を小脇に抱え、空いている片手をひらりと揺らした男の姿に記憶を探った空閑は小さく声を漏らす。
    「もしかして、軌道警察局の方ですか?」
    「尋ねたのは私だが、よく覚えていたね」
     あの状況で、と重ねられた男の言葉に空閑は小さく笑う。ひどく久しぶりに笑ったような気がした。
    「あの、母を連れていってくれて有難うございました。さすがにちょっと、顔も見たくなくて」
    「君も大変だな、乗員名簿を元に航宙士学院に問い合わせたら退学になっていると言われてね、慌ててこっちに来た所だったんだ。行方がわからなくなる前で本当に良かった!」
     タブレット端末を操りながら、男は天晴れとでも言うような調子で声高に言葉を紡いでいく。そんな男の様子に首を傾げた空閑に「そうそう、今日の本題がこれなんだ」とタブレットを見せる。そこに書かれていたのは協力者への支援と補償という文言で。
    「これは?」
    「先日の事件でこちらでマークしているテロリストの中でも一番の過激派だった組織の幹部を検挙出来てね。君たちが居なければ私たちはその場に辿り着く事すら出来なかったかもしれない――だから、上手いこと予算を引き出してみたんだ」
     男の手によってスタンドに固定されたタブレットを読み進めていった空閑は、その手厚さに思わず眉を寄せる。治療費もリハビリに掛かる費用も軌道警察局が支払うというものだったのだ。
    「俺にとっては願ってもない話ですけど、うまい話過ぎません?」
    「と思うよな。けど八割は本気の善意で、あと二割はリハビリで全快したらウチに来てくれないかなって下心だから受け取ってくれて構わないぞ」
     ベッドサイドに置いてあった空閑の端末のロックを外させた男は、端末にひとつのアプリをダウンロードする。
    「これ、ウチで使ってる申請用のアプリ。申請番号は固定してあるから後は請求情報全部これに流せば後はウチと病院で良いようにするから」
     入局の件ものんびり考えておいてね、と重ねた男は来た時と同じようにひらりと片手を振りその病室を後にするのだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works