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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2022-08-11/3本連続更新の3本目です!狭山くんは明日から14日の夜明けまでエゾロッカーになるので次の更新は14日になります┏( .-. ┏ ) ┓

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #BL

    空閑汐♂デイリー【Memories】13「アマネ、別れよっか」
     普段と変わらない柔らかな笑みを浮かべ、柔らかな声で紡がれた彼の言葉は、汐見を打ちのめすには充分すぎるものであった。
     軌道ステーションで起こった過激派テロリストによる占拠未遂事件は、空閑と汐見の手によって破綻したが、その代償はあまりにも大きかった。
     テロリストの手に握られた拳銃から放たれた銃弾は、空閑の身体を貫き左肩を破壊して。あの日、空閑の傷口を押さえていた手に感じた彼の血潮の熱さと、ぬらりとした感触、そしてむせ返るほどの鉄の匂いは汐見の記憶にこびり付いて離れない。
     数日間眠り続けた空閑の隣でこのまま目覚めないのではという不安すら、今こうして言葉を交わす事ができるようになったというのに全く離れることはなくて。
     それは汐見にとって初めて感じた恐怖だった。空閑を永遠に喪う恐怖、死の淵に立つ人間と相対する恐怖、そのどちらともが、汐見に初めて突きつけられたものだったのだ。
     目を覚ました空閑に安堵したのも一瞬で、次の瞬間にはまた汐見を見つめる夜明け前の色をした愛おしい瞳が翳るのではないかと不安になる。それでも、訓練が始まっている事に気付いた空閑に訓練へ行けと何度も言われてしまえば行かざるを得ない。
     事情を知った教官の温情で補講の時間も目一杯に使い同期達との足並みを揃えた所に齎されたのが、空閑が退学したと言う知らせだった。医療センターで端末が使えないのか、空閑との連絡が取れなかった汐見はようやく出来た空き時間で同じ軌道ステーションにある医療センターに居る空閑の元へと駆けたのだ。
     空閑がこうなった原因は汐見を庇ったからだ、自分が気を緩めなければ空閑がこうなる事もなかったのだ。
    「――俺が撃たれてれば良かったのに」
     一人吐き出すように吐露した汐見の言葉を、肯定する者も否定する者もそこには居なかった。空閑が収容されている部屋の前で、一度深く呼吸する。そうしてようやくその扉に手をかければ、空閑からの別れようと言う言葉が汐見に突きつけられたのだ。
    「……それは、もう決めたことなのか」
    「そうだね」
     俺の頑固さは、アマネがよく分かってるでしょう? 笑みを崩すことなく穏やかに紡がれる空閑の言葉は、穏やかでいて崩すことの出来ない硬さがあった。そして、空閑がこうと決めた時には絶対にそれを曲げないと言う事を、汐見は七年半という期間でよく知っていた。
     ――これはきっと、曲げられない。俺が学校を辞めて、空閑の側に居ようとしても、空閑はそれを拒絶するんだろうな。
     諦念と共に頷きながらも、汐見の感情はそれを受け入れ難いものとして拒否する。本当は、別れたくなんてない。別れたいなんて、微塵も思っていないのに。きっとそれは空閑も同じだ。
     だからこそ汐見は涙を零し、空閑の言葉に頷きながらも震える声で懇願する。
    「俺は、オーベルトに行くから。だからお前も」
     嗚咽で繋げる事が出来なかった言葉は、今の空閑に対して酷な願いだとは解っていた。それでも汐見と空閑を繋ぐものは、もうその場所しかなかったのだ。パイロットになれなくても、別れて離れてしまっても――夜空を仰ぎ見れば明るく輝き闇を照らす、あの海しか残されていない。
     静かの海に建てられた――宇宙に憧れる人間は一人残らず憧れを持つその場所で、再び彼と出逢える事だけを汐見は強く願っていた。
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