Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💕 🙏 👍 🍻
    POIPOI 139

    狭山くん

    ☆quiet follow

    2022-08-29/40代の汐見♂と篠原の話。12年経っても新婚気分でお盛んな空閑汐♂は安心するね。

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #BL

    空閑汐♂デイリー【Memories】29 今日は空閑のコーディネートだな。そんな感想と共に、篠原は待ち合わせ場所に現れた汐見を呼ぶようにひらりと片手を上げた。篠原の姿を認めた汐見は、篠原が腰を下ろしている席の向かいへと腰を下ろす。左手首に巻かれた大振りな腕時計へと視線を落としながら「早いな」と呟く汐見に「思ったより早く会社出れたんだよ」と篠原は笑う。
    「にしても、本当お前ら揃って見ないな。そんなにすれ違い生活続いてんの?」
     正面に座る男とその配偶者である男は、篠原から見れば高校時代からの友人で。ルームメイトでクラスメイトかつ部活も同じと言う関係から、友人という関係を経たかは知らないがすったもんだの末に恋人に――そして、七年程の離別を越えてそこからは穏やかに二人で暮らしている筈だ。
     しかし、宇宙軍に籍を置きこの場所で各社が開発する航宙機のテストパイロットや宇宙港の警備に勤しむ汐見と、そのパートナーであり軌道警察局に所属し日夜この地の安全を守る空閑はお互いに不規則な勤務体系で。篠原はここ数年汐見と空閑が揃っている所を見ていない。
     ――確か最後に揃ってるのを見たのはヴィンがエンケラドゥスに行く前だから、二年前か。
     あれは確か辺境開発の任を請け、三年間土星の衛星へと赴任する事になったフェルマーの送別会をした時だ。そんなフェルマーも今は後発組の高師と共に仲良くエンケラドゥスで生活している。
    「浩介が思っている以上にすれ違ってないけどな。揃って休み取れた日の休前日なんて、飲みに行ってる場合じゃないだろ」
     艶然とした笑みを浮かべながらそう口にする汐見に、篠原は彼が溢した言葉の意味を察して。つまり、休前日は体を繋げるのに忙しいと。そういう事だろう。
    「お前らまだそんなお盛んなのかよ……」
    「結婚から十二年経っても新婚気分を忘るるなかれってな」
     すっきりとした濃紺のジャケットに白と紺のボーダーシャツを合わせた汐見は、胸ポケットに入れられていたらしいシンプルな端末を取り出して声を漏らす。
    「ヒロミ、これから来れるらしいぞ」
    「お、久々にお前ら揃ってんの見れるのか」
     短く返信を済ませた汐見に頷いた篠原は、あれ? と思わず声を重ねて。
    「汐見お前機種変更したんだ?」
     前に使っていた機種はかなり長く使っていたというか一度も変わった所を見た事がない気がする。元々物持ちは異様に良い男だ。体型も殆ど変わらないとかで、高校時代から着ているフライトジャケットのレプリカを未だに愛用しているような。
     アポロ計画のミッションパッチを縫い付けたフライトジャケットを、静かの海に建てられたこのオーベルトで着ているのはどうかと思うが。正直体型どころか外見もあまり老けて見えない汐見がそれを着てこの辺りを歩いていると、観光に来た学生のようにも見えるのだ。
     そんな男が手にしている端末がつい最近発売された最新機種というのには、妙な違和感がある。小型で頑丈でシンプルな機能と謳われたその機種は、確かに汐見の好みではあるだろう。けれど、それを手にしているのが使えるものは二十年でも使い続ける男なのだ。
    「そんなにおかしいか、俺が機種変更するの……」
    「お前高校の時から同じ機種使い続けてんだもん」
     あまりにも凝視しすぎたのか、訝しげな表情を隠す事なく胸ポケットに端末を戻した汐見は「今年の結婚記念日のプレゼント。流石に前のは古すぎて、部下に化石って言われちまったしな」と篠原へとその答えを齎した。
    「結婚記念日に携帯端末って、どうなんだよそれ」
    「仕方ないだろ、そろそろネタ切れなんだ。来年は二回目の結婚指輪でも買うか? って話になりつつあるんだぞこっちは」
     既に来年の結婚記念日の贈り物の話が出ている事もおかしいが、全体的に汐見が口にする言葉が理解出来なかった。首を傾げた篠原に、汐見は説明するように言葉を重ねて。
    「うちの結婚記念日のプレゼントはさ、毎年交互にお揃いの何かを贈り合うようにしてんだ。最初の年は時計、次の年はキーケース、その後もカフスにタイピンに財布、ってな感じでさ。そろそろ揃いで思いつくものがなくなってきて、苦肉の策で今年は携帯にしたんだよ」
    「あぁ、お前らなんか同じようなモン使ってんなって思ってたけど、そういう事だったのな」
    「そゆこと」
     汐見の言葉に今度は納得したように頷いた篠原は、それでも呆れたように笑みを浮かべる。
    「お前らそのうちペアルックとかしてきそうだよな」
    「流石にそれはないだろ、不惑も過ぎて」
     肩を竦める汐見に、篠原はあぁ、と漏らしながらも数週間前に顔を合わせた目の前に座る男の片割れの嘆きを思い出していた。
    「……こないだ、新人が汐見の事空閑の甥っ子だと思ってたらしいって空閑が泣いてたぞ」
    「……それは俺も泣きたいやつだな」
     思わずテーブルに沈んだ汐見に笑った篠原は、目の前を通りがかった店員へと注文を告げる。そろそろ空閑も来る頃だろう。酒宴はまだ始まったばかりだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works