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    イロドリ

    今のところは「楽しい(苦しい)サモシ」の三次創作を載せる予定。
    プロフ画は(相互さんが描いてくれたイラストの)マイイカ君。

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    イロドリ

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    隙間さんの神絵から生まれたちいかわパロのイメージ小説。でかつよ(シャケ)化したエナ君と持たざるチームメンバー。
     書きたいところだけバーッと書いたので展開にスピード感がありすぎるのは許してほしいです。
    ネタがネタなので、該当話周辺のちいかわを読んでるともっと面白いです。

    #楽しいサモシ

    なんてちいさくてかわいそうなやつらプスッ。

    「ギッ……!?」
    「おいボサッとしてんじゃねえエナカス!! その微妙なカーボンで雑魚でも蹴散らせ!!」
    「ぅるっせえこのタコ!! 言われなくてもやってるってんだよ!! テメェこそキンシャケをコンテナビタ付けしなかったら許さねえからな!!」
    「んみ……誰かたすけてくださあい……」

     ……痛え。なんだ、どこかが刺されたみてえに痛む。けど大した怪我ができたわけじゃなさそうだ。シャケどものブキに刃物なんざないはずなのに、なんだこれは。耳元でムカつく笑い声が聞こえてきたからシャケのやつらなのは間違いねえ……けど。

    「クソ、どこだオレに喧嘩売ったシャケは!! 出て来やがれ、縦振りでブッ殺してやる!!」
    「雑魚シャケじゃないのか?」
    「違う、オレになんか刺すだけ刺してどっか行きやがったんだ!!」
    「そんな習性のシャケなんていないだろ!!」

     クソッ、この霧じゃダメだ。刺されたのはついさっき、けどオレを刺したやつを視認することもできなかったんじゃ追うなんてできるわけがねえ。しかも今は絶賛修羅場中、海岸に害獣が九匹も沸いてやがる。見えないだけでバクダンもフルで沸いてるな。金シャケがうろつく霧だからまだ許されて……いや許されるわけねえけども、まだ放置してるようなもんだ。大人しく最終WAVEクリアのことだけ考えるか……

    ズキ。

    「……」

    ズキズキ。

    「…………!」

    ────ズキン。

    「っあ゙、ァア……!!」
    「!?」
    「あ!? おい何倒れてんだバカ!! ってやべえ、処理追いつかねえ……!!」

     痛い、痛い痛い痛い!! インクで撃たれたんでもない、フライパンで殴られた痛みでもない……!! 頭、腕か、いや腰ッ……!? いや全身が痛え!! さっきまで別に体調は悪くなかった、あのなんか刺されたやつのせいか!? あ゙あクソッ、 痛い痛い、痛ッ……




     …………でも。

     なんだかひどく懐かしいような、心地がいいような、
     これは、これ、は、

    ぶち

    パキッ

    「────ぁ」

    まるで 誰かに おいしく食べられている ような

    「▇▆▆▃▇▃▂▇▇▅▆▃▊!!!」
    「あ゙!? おいどうした!!」

     皮膚ごと全身の肉を裂かれるような苦しみ。シャケが撒き散らした海水の上をみっともなくごろごろと転がっては、吐き気のする痛みを和らげようと藻掻くがなんの意味も無い。
     いてえ、いてえよお。気持ち悪い、頭いてえ、なんなんだよお……!

    「ふみっ……!? せ、せんぱい、それ……!!」
    「……っ、……!?」

     ザコが指差す先は、ズキズキミシミシと痛むオレの腰あたり。そこに、そこにあったのは、

    「…………尾、びれ」

     筋肉質の、よく締まった尾びれ。
     目の前にいるシャケどもと全く同じものが、ツナギを突き破ってオレの腰から生えてきていた。

    「な……んだ、これ。ンだよ、これ……!!」
    「一体何が起きてるんだ!? それにエナ君、なんだか体が……」
    「体がなんだよ!? お前こそ体小さくなってんぞ!!……は?」

     こいつにしては珍しく変なことを言う、と思って見下ろした。

    「見下ろした」。

     そんなはずない、あいつとオレは、どころかヤニカスタコやザコとさえ大して身長は変わらないはずのオレがどうしてあいつを見下ろしてる? ……そういや、真ん中の砦……こんなに小さく見えるもんだったか……?

    「違う、君が大きくなってるんだ! 君、さっきシャケに何かされたんだろう!? 心当たりはないのか!?」
    「知らねえよ、オレの方が聞きたいっつーの! 霧だったんだから仕方ねえだろ!」

     こいつの言うことは間違ってない、らしい。コンテナも周りのシャケも小さく見える、要はオレがデカくなってるってことだ。……ってやべぇ、シャケを処理しねえと全滅する!
     ……納品ノルマは行ってる、生存優先の択、ステージの真ん中じゃ害獣どもには手が出せない、ならバクダンを優先して倒すべき……!!

    「ってブキ持てねえ!! どうすんだよこれ!!」

     体が大きくなりすぎてブキが持てない。持てたところでカーペットをコロコロするアレくらいの大きさしかなくてうまく扱える気がしない。マジでどうすりゃいい!?

    「……せっかく大きいなら、そのフィジカルを活かせるんじゃないか?」
    「あ、そうか」

     言われてみりゃ確かにそれもそうだ。……目を凝らしてよく見ると、バクダンと大体同じ大きさ。ならどうする?倒せるならそれでいいが、倒せなくてもコンテナから遠ざけることができれば……

    「殴るか」

     ドカッ!!

    「グオッ!!」
    「うおおっ!?」

     ムカつくその横っ面をアッパー気味にぶん殴ったら、聞いたことのない声を上げながらバクダンがいとも簡単に吹き飛んでいった。放物線を描いて砦の向こうまで飛んでいき、……しばらくして、派手な音を立てて地面に墜落する音。

    「……すげえ」
    「オレが一番驚いてるよ……」
    「すごいです先輩! それであの、できれば起こしていただけると嬉しいんですが……」
    「いや無理。物理的に無理。ヤニ野郎にでも頼んどけ」
    「ふみい…………」

     ……バクダンをブッ飛ばせるなら、他のオオモノもイケるな?

    バキャ!!
    べコン!!
    ブチュン!!

     やっぱりだ。テッパンをボディごと叩いて潰せる。ナベブタを真っ二つに割れる。ハシラのコジャケもハエみてえに叩いて潰せる!
     なんだこれ、なんだこれなんだこれ、なんだこれ、すげえ!! クマブキと同じくらい、いやそれよりずっと簡単にシャケどもを倒せる!! どころかちゃんと「殺してる」実感があってすこぶるいい!! 強い、強いぞこのカラダ!! これならテッキュウどころか場に沸いてくるシャケを皆殺しにできる……!! ……ん? そういやブキ使ってねえな。クマサン的にありなのか?

    「ハッ、アハハ……まあいいかァ、そんなこと……!」

     のろのろとフライパンを振りかぶるドスコイを蹴り飛ばす。いつもいつもオレらを見下してきたバクダンを真横からぶん殴る。わざわざ膝をついてしゃがみこんでやれば群がってきたやつらを腕で薙ぎ払って、ヘビのシャワーをわしづかむ。普段は無敵のボディを掴まれて慌てている操縦士の顔が無様でたまらなくて、思い切り海に向かって投げ捨てて。目障りに宙を浮くカタパッドを地面に叩きつけて操縦席ごと踏み潰して、タワーの本体をナベから引きずり出して握り潰して、そしてテッキュウさえもこのカラダの力で引きちぎって……!!

     楽しい。楽しい。
     強いことが楽しい。強いのは楽しい!!

    「楽しいッ!!!」
    「お……おい! おまえ……この、クソイカ野郎!!」
    「ぁ、あ゙……!?」

     ムカつく呼び名と共に聞こえてきた小さな声。か細すぎて聞こえやしないその声がした場所をなんとか見つけ出した。

    「なんだ、お前らそこにいたのかよ……見えなかったじゃねえか……」

     インクリングとオクトリングが、足元でオレを見上げているのを。



    「簡単ッッッ!! 簡単ッッ!!!」

    グチャン!!

    「ウワァアアア!?」
    「ぃいい〜〜〜っ!! せんぱ〜〜〜い!!! 元に戻ってください〜〜!!」
    「騒ぐのは後、とりあえずブキを構えて!! 彼がいつこちらを標的にしても動けるように!! 今の彼は……よくわからないが、僕らにとってとても危険な状態だということはわかる……!!」

     スプラマニューバーと震える.96ガロンの銃口をエナ君に向ける。ザコの手も借りたいと、彼の暴走に巻き込まれてあえなく浮輪になっていた後輩ちゃんも復活させた。
     アラマキ砦のそこかしこに積み上がった、シャケたちのブキやフクの残骸。……それら死屍累々の有り様を作り上げたのは他でもない、僕らのバイトチームを率いるエナ君、そのイカだった。いや、今やイカと呼べるのかどうかすら怪しい。

    「アハッ、ハハハ!! アハハハハハハ!! 弱え、弱え弱えなあ!それでも戦士か、情けねえ!! オラもっとよこせ、オレに殺されたいやつは寄ってこい! どいつもこいつもオレが美味しく平らげてやるよ!!」

    ビチッ。ビチビチ、ビチッ。

     愉快極まりない、とばかりに地面を叩く尾びれは、彼の腰あたりから生えてきたもの。胸ビレの代わりとでも言うように後ろで結んだゲソがヒレのようなものに変質していたり、彼の二の腕からヒレのようなものが生えていたり。そのせいで彼のツナギは上半身がボロボロに破けてしまっている。そして黄色だったゲソは、やつらの背ビレと……身の色と同じ橙色に染まりつつあった。
     ……けれど、何よりも異常なのは。

    「大きすぎんだろ!! バクダンと同じかそれよりデカくなってんじゃねーか!! 」
    「んみいいいぃ……! わたしなんか一口で飲まれちゃいそうですうううぅ」

     インクリングでは有り得ないその巨体、だった。ヤニ君が言ったとおり、シャケ軍の中でも随一の大きさを誇るバクダン相手に、鏡写しのように血走った目で取っ組み合いができるほど。半イカ半シャケの、なんかでかくてつよいナニカだ。そんな身体で好き放題に暴れられては、例え彼にその気がなくてもいつ巻き込まれるかわからない。そうでなくても、彼が今「どちら」なのかわからないというのに。
     前々から、そういう気のあるイカであるとは思っていた。ダイナモローラーを持たされてしまったばかりに、ドスコイ轢殺一確、テッキュウ二転が死の威力に酔いしれていた彼。そして今、シャケをも圧倒し愚弄できる力を欲望と愉悦のままに振り回す彼を見て想う。
     場合によっては……心苦しいが、ここで彼を介錯してやらないといけない。

    「楽しい! 楽しい、たのしいッ!! アハハッ、ギャハハハハハハハハハ!!!」
    「〜〜〜ッ、お……おい! おまえ……この、クソイカ野郎!!」
    「ぁ、あ゙……?」

     彼とその周りのあまりの光景に耐えかねたのだろう。ヤニ君が、バクダン共々ナベブタを遠くに投げ飛ばして高笑いしていたエナ君に声をかける。呼ばれたエナ君は周りをきょろきょろと見回して……少ししてようやく、僕らの方を見下ろした。

    「なんだ……お前ら、そこにいたのかよ……みえなかったじゃねえか……」
    「なんだはこっちのセリフだボケ!! なにやってんだお前、そんな、シャケをボロ雑巾みたいに……!」
    「……なにって、そりゃバイトに決まってるだろ」
    「はあ……!?」
    「んなことより、なあさっきのオレ見たか!? スゲェだろ、ハシラ引っこ抜いてブン投げてやったんだ! 吹っ飛んで自分の柱の下敷きになったハシラとか雑魚シャケの声がクソほど無様でさあ!! 口から内蔵飛び出てたんだ、お前らにも見せてやりたかったな!!」
    「ふみぃ……」

     聞く者によっては卒倒しかねないグロテスクな話を嬉々として語るエナ君。肉体の半分近くをシャケの神経毒に蝕まれた先輩の異形の姿に、抱き締めるようにパブロを構える後輩ちゃんの体がすっかり怯えてしまっている……だがそれもそうだろう。話す内容も話す内容だが、その顔が、その目が、明らかにおかしい。

    「ほんとスゲェよこのカラダ、最強だ!!なあお前ら、そうだろ! どんなブキでもあれだけの大群は追っ払えなかったろ!? 追い払うだけじゃつまらねえ、シャケどもを絶滅させることだって……これならビッグランもオレだけで……!!」

     いつも不機嫌な普段の彼からは想像もつかない笑顔。

    「エナ君」
    「あ?」

     ダイナモローラー最強という幻想に囚われたときと同じ、猟奇的な笑顔。

    「君は、何のためにその力を振るう」
    「なんだそれ。────つよいことに、理由がいるのかよ?」

     彼らしさを……我を失った、狂気の笑み。

    「そうか……ならばしょうがない。
     エナ君。君は今ここで死ぬべきだ」

     秩序のもとに共存できない存在を、世界は「怪物」と呼ぶ。

    「おい! お前なんてこと言って……!」
    「君だって薄々感じていただろう。たった三匹のときでさえ手に負えないでいたというのに」

     口を噤むヤニ君。ああは言っていたが、いつも厄介事など御免こうむるという態度を取る彼の本音は透けて見える。

    『あんな化け物と関わり合いになりたくない』。

     ……そこまでとは言わないが、僕とて似たような考えではある。巨体。シャケの特徴入り交じる身体。暴力。凶暴で残虐。そんな彼の居場所がバンカラ街にあるだろうか。
     その精神性は、もはやイカではないものに変貌しているのに。

    「君はもう、何もするな。何もせず、何も成さずに……死んでくれ」
    「……な」

     「彼」は、信じられないものを見る目で、己に向けてブキを構える僕らを見ていた。

    「おまえ……オレが今まで、なんのために、」
    「知ってる」
    「ずっとできなくて、苦しくてもやってた、のに」
    「わかってる」
    「…………まさか」
    「ミッ……」
    「……ああそうだよ、コイツと同じ意見だぜ俺は!! お前はもうインクリングじゃねえ、ただのバケモンだ!!
     お前のやりたい放題を間近で見させられる立場にもなれよ、気が気じゃなかったぜ本当に!!」

     僕たちに伸ばされていた鉤爪のような手がビク、と震えて止まって、だらりと垂れ下がる。

    「……オレのせいか。オレが悪いって言うのかよ」
    「……」
    「わかってるって思ってた」
    「……」
    「お前らならって思ったオレがバカだった」
    「せん、ぱい」
    「わかってるなら……言わないだろ、そんなこと」

     ……ぶるぶると震える彼の目が、ギュル、と真っ赤な憎しみに染まった。

    「言わねえよなァッ!? そうだろうがァァァッッッッ!!!」

     タツの咆哮に勝るとも劣らない、ビリビリと鼓膜を劈く叫び。音圧と激しい威嚇、体が動かない……!

    カタコトカタコト…………
    ヒュウッ…………カンッ。
    ゴオオオオォォォッ…………

    「!? お、おいこれって……!!」
    「たたた大変です!! タワーとテッキュウとカタパッドが沸いてますううぅぅ!! ふみぃいいい!!」
    「なんだって!?」

     海岸を見やると確かに、嫌になるほど目にしてきた吐き気を催す光景があった。しかも雑魚シャケや追加のオオモノが瞬く間に増えてきて、……これは、これはまずい……!! だが一体どうして急に、もうウェーブは3つ終わっているしあり得るとしたらオカシラくらいだがこの場には────まさか。

    「まさか……!!」
    「▇▆▆▃▇▃▂▇▇▅▆▃▊────…………!!!」
    「頼むエナ君落ち着け、鎮まってくれ!! ああくそっ……!」

     手近なオオモノや雑魚を処理しながらエナ君に呼びかけ続けるがしかし、彼の発狂は止まることを知らず、その身体がさらに大きくなっていく。山を見上げるような巨躯……あのヨコヅナと同等までに、巨大に。

    「お前らあああァァァ……よくもオレの……オレらシャケのナワバリを、螂ス縺榊享謇玖穀繧峨@縺ヲ縺上l縺溘↑縺√=縺√い繧「繧「……!!」
    「────、」
    『縺雁燕繧 縺薙縺ョ繧、繧ォ繧ソ繧ウ縺ゥ繧ゅr縺ゥ繧薙縺エ縺髣俶橿蝣エ縺ォ騾」繧後※縺¢……!!!諤昴≧蟄伜螫イ縺」縺ヲ、縺昴@縺ヲ繧ェ繝ャ縺ョ蜑阪↓蟾ョ縺励□縺!! 繧イ繧ス繧よョ九&縺壼眠縺」縺ヲ繧k繧!!!』

     オカシラシャケが一際大きい声で吼えたてたその瞬間。
     この場にいる全てのシャケの視線が、三匹の獲物を串刺しにした。

    「ヒィッ……!!」
    「み、みぃみミミみ……!!」

     すっかり興味が失せたらしき彼は僕たちに背を向け、海に向かってのそりのそりと歩き始めた。……彼らの住処、彼の寝床である、暗き海の底へと帰るために。

    「……!! 待て、頼む、待ってくれエナ君……!!」

     エナ君に手を伸ばすも届かない。目の前がシャケの分厚い壁で埋め尽くされていく、突破できそうにない。
     とうとう彼の姿が海の中に消えて……そして。

    「「「√﹀\_︿╱﹀╲/╲︿_/︺╲▁︹_/﹀\_︿╱▔︺\/\︹▁╱﹀▔╲︿_/︺▔╲▁︹_/﹀▔\⁄﹀\╱﹀▔︺\︹▁︿╱\╱﹀▔╲︿_/︺▔\︿╱\︿︹_/▔﹀\_︿╱▔︺\︹╱﹀▔╲︿_/︺▔\╱﹀╲▁︹_/﹀\_︿╱▔︺\︹▁︿⁄╲︿╱﹀╲︿!!!」」」










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