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    konatu_0722

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    konatu_0722

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    以前書いた花を贈る話の花屋のお話

    #刑桐
    paulowniaWood

    花屋は季節に敏感だ。
    各シーズンを更に細かく分け、都度一番盛りの花を用意しなければならない。細かく、それでいて重労働だが、それでも楽しいのは花が好きだからだ。そんな花を、色々なお客様が買っていかれる。
    プレゼント、返礼、謝罪、サプライズ等様々だが、大体にしてそうそう定期的に購入されていかれるお客様はあまりいない。
    だが珍しく、月に二、三度訪れては必ず花を買われていくお客様がいる。
    例えるなら、ヌルデの花。その人は男性の私から見ても目を惹くような容貌をしており、知的な眼鏡越しにお勧めの花を聞かれるとついつい余計なお喋りをしてしまう。だが彼は嫌そうに顔色一つ変えずに、花の由来や花言葉の意味を尋ねて吟味を重ねる。購入する花は幸せな意味が多いから、きっと家族や恋人に贈るのだろう。
    飽きることなく花を贈るとは、なかなか出来るものではない。できた男とは、彼のような人を指すのだろうか。
    そんな彼が、ある日を境にピタリと来なくなった。そろそろタイミング的に来られるかと思ったが、店に姿を現すことはなかった。珍しいこともあるものだと思っていたが、彼は一月近くも現れず、さすがにもう来ないのかと少し寂しく感じていた頃。
    ふらりとその彼は現れた。そしていつもは切り花のブーケを買われていくが、鉢植えを購入していった。黄色のシンビジウム。意味は誠実な愛情、飾らない心。
    「今回は鉢植えなんですね」
    「えぇ、花瓶を割ってしまいまして」
    それで花を買うこともなく、間が空いたらしい。
    「鉢植えなら、水をたっぷりやって風通しの良いところに置いてあげてください」
    「わかりました」
    ブーケよりも重さが増す花を丁寧に受け取ると、彼は大切そうに抱える。まるで大事な人がその腕の中にいるようで、見てるこちらが赤面してしまう。
    彼を見送ると、なかなか遅い時間で。そろそろ閉店の準備をしようとしていると、駆け込みで初めて見るお客様が来られた。
    その彼は見惚れるような美しさで、生けている花たちが彼の容貌を一層華やかに盛り立てているようだ。例えるならば、スカシユリか。
    「すいません、花が欲しいんですけど」
    「あ、はい。どんな花が良いとかありますか」
    見惚れていた彼に声をかけられ、ハッと気がつく。彼は物珍しそうに生けている花達を見渡した後、「恋人と仲直りに贈る花なんっすけど」と頭を掻きながら教えてくれた。
    どこか照れたような彼が微笑ましく、残っている花を集めて選別する。今の時期なら、アネモネが丁度良いか。
    「こちらなどいかがでしょう。赤と白のブーケにしますと、より華やかさが増しますが」
    「あ、じゃあそれでお願いします」
    赤と白のアネモネを選び取り、さっと手際よくブーケにする。それを手品でも見るように目を輝かせているものだから、子どものようだ。
    「お待たせいたしました」
    「ありがとうございます」
    彼もまた丁寧にブーケを受け取ると、形を崩さないようにと紙袋へ仕舞う。そして夜の街へと戻っていった。

    そして季節は巡り、寒い冬を超えて花々が咲き誇る春が訪れた。季節柄か、春は花を求める人も増えていく。
    そんな中、彼らが訪れた。ヌルデの彼と、スカシユリの彼が一緒になって。
    求める花は、幸せの象徴。
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    💐💐💐🌹🌼🌷
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    konatu_0722

    MOURNING日常推理モノが書きたいと頑張ったけど、面白くないのでここで供養
    「呪いって信じるか?」
     深夜午前二時。明かりを消して怪談話をするにはもってこいの時間だが、同じベッドに眠る刑部は興味の欠片もないようで欠伸をしている。桐ケ谷だって別段、怖い話をしようと考えたわけではない。ただ単に、ふと思い出しただけだ。
    「お前の口からそんな単語が出てくるなんてね。どうした、夜中のトイレに行くのが怖くなったか」
    「そんなんじゃねぇよ。ただこないだ大学の先輩に変なこと言われてさ」
     興味を持ったのか、枕に預けていた頭を腕に乗せてこちらを見てきた。
    「詳しく話してみろ」

     まだサブスクにも上がっていない話題の映画があった。興行収入何百億だかで、大学でも見に行ったと話題で持ちきりだった。あいにく桐ケ谷は見てなかったが、同じ学部の先輩が興味あるならDVDを貸してくれると言う。その先輩は二年に上がってから同じキャンパスで通う内に仲良くなり、来年は大学院に進むらしい。スタオケの練習と授業の兼ね合いが難しく、提出物に困っていると声をかけてくれたり、過去テストの情報をくれたりと工業部では珍しい部類の穏やかで気配りができる人で世話になっている。そんな先輩から、興味があるならと借りることができた。家に帰り早速観ようとパッケージを開けると、中は何の印字もされていないDVDが一枚。普通はタイトルが印刷されているのにおかしいなと思いつつデッキに入れようとしたところで、その先輩から電話がかかってきた。
    2883

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    konatu_0722

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    「そんなんじゃねぇよ。ただこないだ大学の先輩に変なこと言われてさ」
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    「詳しく話してみろ」

     まだサブスクにも上がっていない話題の映画があった。興行収入何百億だかで、大学でも見に行ったと話題で持ちきりだった。あいにく桐ケ谷は見てなかったが、同じ学部の先輩が興味あるならDVDを貸してくれると言う。その先輩は二年に上がってから同じキャンパスで通う内に仲良くなり、来年は大学院に進むらしい。スタオケの練習と授業の兼ね合いが難しく、提出物に困っていると声をかけてくれたり、過去テストの情報をくれたりと工業部では珍しい部類の穏やかで気配りができる人で世話になっている。そんな先輩から、興味があるならと借りることができた。家に帰り早速観ようとパッケージを開けると、中は何の印字もされていないDVDが一枚。普通はタイトルが印刷されているのにおかしいなと思いつつデッキに入れようとしたところで、その先輩から電話がかかってきた。
    2883

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    ukiistok

    DONE高2の時の刑桐幻覚。刑部さんが旧スタオケに加入して横浜へ通うことで桐ケ谷くんと会う時間が減ってそうだな。たまに会えたときは甘い時間を過ごしていたらいいなという妄想。寛容にご覧ください。
    ブランク――桐ケ谷?全く、久しぶりに学校へ来たかと思えばこれか。
    名前を呼ぶ声と、嫌味たらしい小言が不思議と懐かしい。机に伏したまま、桐ケ谷は近づく足音に耳を澄ませた。
    こいつと二人だけの時間というのは久しぶりな気がした。別に喧嘩をしたわけでもないし、疎遠になったわけでもない。ただ、お互いそれなりに多忙だったのだろう。
    特に刑部は、生徒会や家の事で駆り出されているにも関わらず、近頃は横浜まで足繁く通っていた。刑部にスターライトオーケストラという学生オケから声がかかったのはこの春のことだ。学校経由での誘いだったこともあり、優等生の面を被る刑部は断れなかったのだろう。「せいぜい楽しんでくるさ」と自嘲気味に笑う横顔を見た夜から三ヶ月ほどが経つ。そのオケは界隈でも名が知られていて、週末などはホールで演奏会なども行っているそうだ。どこにそんな時間があるのか全く理解できないが、忙しくしている方が性に合っているのだろう。
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