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    ooxlll1

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    ooxlll1

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    書きたい所だけを勢いのまま書いた。いつかちゃんと綺麗に書いて纏めたい。

    虎釘最後の指が見つかるまで呪術高専の腐った蜜柑に飼い殺される虎。呪術高専の管理下に置かれ、監禁状態。
    そんな状態の虎を置いてはいけないと釘が噂を頼りに不老不死になる道を選択する話。





    宿儺の指を全て食べてから死ぬ。
    その決定は覆されないまま入学して二年が経過した。
    今も尚最後の指は見付からず、虎杖悠仁は呪術高専の管理下に置かれ、言わば監禁生活を送っている最中である。
    この場所は虎杖が最初五条に連れてこられた場所でもある。
    少しだけ変わっている事と言えば寝る場所が増えた事だろうか。
    虎杖は要らぬ気遣いに思わず苦笑した。
    嘗て処刑宣告された頃を思い出し、懐かしさを噛み締めながらも壁一面には御札の数々を眺めては顔を顰め、小さなため息を零した。
    呪いを抑える為の物だと理解してはいるが未だ不気味さを覚えてしまう。
    監禁生活と言っても身の清潔を保つ事は許されている為、シャワーを浴びたり、餓死しないように食事を摂ったり、必要最低限、人として生きる為に行うべきことは許可されている。
    それにずっとこの場所にいる訳ではなく任務があればそれに赴向かなければならない。監禁と言うよりも軟禁と言う言葉の方が正しい。
    正直、指が見付からずとも処刑されると思っていた。故に処刑されず生きている事に驚きを覚えている。
    その件に関して五条は『悠仁が死んだ後で指が見付かったら大変でしょ。封印は出来ない訳だし』
    と言っていた。


    かつん、かつんと足音が響き渡る。
    この足音の主は姿を見なくても分かってしまう。
    何度も耳にして覚えた音だ。
    かつん、かつん。音は次第に大きくなり、その音の正体と共にとある人物がこの場所へとやって来た。

    「よう、虎杖、元気か?」

    「ははっ、元気に見えます?釘崎サン」

    態とらしくそう答えれば釘崎は見えないわね、と乾いた笑いを零す。
    足音の主は他の誰でもない、釘崎野薔薇だ。

    彼女は決まった時間にこの場所に来て虎杖の様子を観察し、此処での出来事を上の人間に報告している。
    この場所に連れてこられてからずっとこの役目は釘崎が担っている。釘崎は虎杖の監視役なのだ。

    釘崎が何度もこの場所に尋ねて来るうちに虎杖はふと違和感を憶えた。
    釘崎は毎日虎杖の元へと足を運ぶ。毎日顔を合わせているが、如何せん変化が無い。
    顔も、声も、身長も、何もかもが変わらない。

    流石にこれ以上は耐えきれず、虎杖は抱いていた疑問を迷わす釘崎へと投げ掛けることにした。

    「なぁ、釘崎。一個聞いていいか」

    「何よ」

    「お前さ、何で変わんねぇの?」

    「変わんないって、何がよ」

    「何がって、身長とか、そう言うの。毎日顔合わせてるから分かるけど、流石におかしいだろ」

    虎杖の言葉を聞いて、釘崎は一瞬顔を顰めた。
    そして盛大に舌打ちを一つ。
    そして大きな溜息を零しながら頭を乱雑に掻き揚げ、再度虎杖をじろりと睨んだ。
    これ以上隠してはおけないと悟ったのだろう。釘崎は躊躇いながらもゆっくりと口を開き、己の身に起きている事を虎杖に向けて説明し始めた。

    「不老不死って聞いた事ある?」

    虎杖がその単語を耳にした瞬間、心臓が煩く高鳴った。
    嫌な汗が背中を伝い、一気に身体の芯が冷えていくような感覚が走る。

    「アンタの監視役になる条件がそれだったの」

    「っ、なんで!どうして!釘崎は普通に生きて、歳とって、幸せになれば良かっただろ!」

    「——だって、アンタ一人を先に死なせる訳にはいかないじゃない?」


    「私の幸せは私が決めるわ。それに、この先アンタよりいい人見つけられる訳ないもの」


    「虎杖。私ね、アンタが思ってる何百倍もアンタに惚れてんのよ」





    あれから何年も月日は経過した。
    それでも矢張り最後の指は見付かる事は無かった。
    いつしか虎杖は外に出る事はなくこの場所で静かに生活するようになっていた。
    ベッドの上で眠る虎杖の顔は昔に比べて皺だらけだ。
    ピンクの髪色も色が抜け銀色へと変わっている。
    節くれだつ大きな掌も、今となっては随分と小さく見える。
    ベッドの傍に置いてあるパイプ椅子に腰掛け、虎杖の顔を覗き込めば、閉じていた眼がゆっくりと開かれていく。
    虎杖の双眸は濁っていて、以前の様な輝きは失われていた。
    もう、彼の目には何も映らない。当然、私の姿も。

    「釘崎、そこにいる?」

    「居るわよ、当たり前でしょ」

    「はは、そっか、だよなぁ」

    掠れる声は何処と無く覇気がないように思える。
    大きな吐息と共にか細い音で紡がれる言葉。
    一つ一つの言葉を拾い上げながら、野薔薇は虎杖の手をぎゅう、と力強く握った。

    「釘崎、そんな握ったら折れちまう」

    「冗談言う元気はあるのね」

    お互い理解していた。
    今日が最後だと。
    かち、かち、と時計の針が時間を刻む中、その音と共に確実に虎杖の命の時間も刻まれていた。
    刻一刻とその時が迫る。

    釘崎の鼓膜を震わす心臓の音。
    とく、とく、と一定のリズムで刻む心臓の音が次第に小さくなっていく。

    「…釘崎、俺のせいで、お前の人生縛っちまってごめんな」

    ぽつり、ぽつりと言葉が紡がれる。
    小さく、か細い。それでも確かな強さを秘めた言葉がつきりと釘崎の心臓を穿っていく。

    「何今更謝ってんのよ。私が決めた事よ」

    「かっこいいなぁ、釘崎は」

    「当然。つーか、かっこいいってだけじゃなくて可愛いって言いなさいよ」

    「釘崎はかっこよくて、可愛いな」

    「当たり前でしょ」

    「釘崎、俺さ。お前の事好きだよ」

    最後の最後。
    気力を振り絞るように紡がれたその言葉に釘崎は目を丸くした。
    何て言葉を残して逝ってしまうのだと、胸ぐらを掴みたくなる気持ちをぐっと堪え、釘崎はただ静かに彼の掌を握る。
    いつしか釘崎の手を握りかえしていた掌は力なくベッドへと落ちていた。
    ふにゃりと柔らかく笑いながら、そう紡いだ男はそのままゆっくりと息を引き取ったのだ。
    虎杖悠仁の人生は此処で静かに幕を閉じた。




    静かに息を引き取った目の前の男を眺め、釘崎はぼんやりと頭の中を整理していた。
    この人が息を引き取った事を伝えなければならない。
    誰に言うのだったか。ぐるぐると巡る。
    そもそもこの人は誰だったのか。

    かつん、かつん。足音が響く。
    閉じられていた扉がゆっくりと軋みながら開かれていく。その音の主を見遣る為、釘崎はゆっくりと振り向いた。

    「…釘崎、お疲れ」

    「伏黒」

    こつん、と再度足音が響く。
    釘崎の双眸に映った人物は見知った顔の男だ。
    相変わらず代わり映えのないツン、と尖った黒髪。端正な顔立ちをしたその人物は伏黒…否、禪院恵だった。
    嘗て同じ戦場を駆け巡っていた頃よりは少しばかり老けて見える男がその場に現れた。
    タイミングを知っていたかのように現れた伏黒を見遣り、釘崎は漸く要件を思い出した。

    「そうだ、伏黒。この人。たった今息を引き取ったわ」

    「嗚呼、知っている。長らくお勤めご苦労様だった、釘崎」

    伏黒は男が眠るベッドへと近付きそっと頬を撫でている。
    割れ物を扱うように、優しく丁寧にゆるりと撫でるその仕草に気付けば釘崎は感嘆の声を漏らしていた。
    二人の逢瀬を眺めていると釘崎の頬に暖かい何かが伝った。
    次第に視界は歪み初め、上手く景色を捉えられなくなる。
    止まって欲しいのに、それは溢れて止まらない。分からない。理解出来ない。それなのにこの男が死んでしまったという事実が釘崎の胸を確かに苦しめていた。

    「伏黒、私、この人の事好きだったのかしら」

    その問いに返事は無い。伏黒はただ黙って釘崎の頭を何度も撫でた。



    (不老不死の呪いの代償は大切な人と過ごした記憶。それは一定の期間を経て失われていくので直ぐに無くなる訳では無い。釘は虎が息を引き取った瞬間全て抜け落ちた感覚。ちなみに不老不死の呪いはちゃんと解ける。天元様がその知恵を伏黒くん(禪院くん)に授けているので。)

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