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    5jinkaku_ik

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    5jinkaku_ik

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    リ探
    ふらいみーとぅーざむーん

    私を月へ連れてって
    たくさんの星々で遊ばせて
    火星や木星の春を見てみたい
    言い換えると、私の手を掴んで…
    つまりね、私にキスをして愛しい人


    掠れた低音が、ぽつりぽつりとかすかにメロディを奏でる。
    淡々と紡がれるそれは、甘い言葉を歌っているとは思えないほど。
    言葉の意味を理解せず、気に入ったリズムを口ずさんでいる子供じみた歌い方だ。


    私を月へ連れてって
    たくさんの星々で遊ばせて
    火星や木星の春を見てみたい
    言い換えると、私の手を掴んで…
    つまりね、私にキスをして愛しい人


    そこしか知らないのか、そこが気に入ってるのかわからないが同じ調子で同じ歌詞が続く。
    その部分も可愛らしいが、次の歌詞をその口から聞きたいのだけれど。
    そう願えど、愛しいカナリアはやはり同じところしか奏でてくれない。
    仕方なく、カナリアに歌の2番を請う事にした。
    「続きは歌ってくれないのですか?」
    「あ!おかえり、りっ……」
    リッパーと続く筈だったのだろう。
    私との昨晩の約束を思い出したらしく、たっぷりの沈黙の後に俯きながらジャックと呼び直した。
    2人きりの時は名前で呼び合う約束をなかなか守らずにいたのは、気恥ずかしさが勝っているからだと理解はしている。
    慣れないうちは仕方ない、照れ臭さが勝つのならば待ってやろうという心算だった。
    けれど流石にこちらが何も言わないのをいいことに、ベッドの上でも通り名呼びをし続けたのは些か不満であったのだ。
    約束を守るようにと理性がとろとろに蕩けてもジャックと呼べるまで、根気よくベッドで言い聞かせた結果が出ているようで何より。
    「ただいま、ノートン。随分可愛らしい歌を歌っていましたね」
    「揶揄わないでくれ。汚らしい音を聞かせて悪かったね」
    「またそんな卑屈な事を。あなたの悪い癖ですよ。私は貴方の声でその歌の続きを聞きたいと思っているのに」
    「……さっきのは、誰もいなかったら歌ってただけだよ」
    「歌の続きは知っているんですね?」
    「知ってはいるけど、人に聞かれるのは恥ずかしいんだ。……やっぱり今日は帰る」
    腰掛けていたベッドから降りて、部屋を出て行こうとする手を掴んで腕の中に閉じ込める。
    帰ると言った割には大した抵抗もなく、ただ帰るから離してと言葉だけの反抗を寄越す。
    意地を張ってるだけなのはあまりに明確で、自分と同じ時間を過ごしたいと考えているのだとわかり嬉しくもある。
    恋人のような触れ合いを求めるのに、羞恥心が邪魔をして素直に言えないんだろう。
    こういうわかりやすい所も好ましい。
    逃げられない理由を与えてあげよう、君が望むように。
    そう考えて、腕の中の愛しいカナリアを抱き直してベッドに腰掛けた。
    向き合う形で膝上に座らせれば、どうするの?と表情で問いかけてくる。
    「ノートン、もう少し体を私に寄せて」
    「こ、こう?」
    「もっと。私の耳元に貴方の息がかかるくらい」
    「ん。……これ以上はくっつけないよ」
    「ありがとう。さて、これなら他の奴等に貴方の歌声は聞こえないと思いますが」
    「えぇっ!?そういう事!?」
    「恋人のお願いを少しくらい聞いてくれても良いのでは?」
    「リッパーはすぐそういう事を……」
    「今なんと呼びましたか?」
    「歌わせていただきます」
    「よろしい」
    通り名を口にした際に深い意味を込めてノートンの臀部に手を滑らせれば、歌う事を快諾してくれた。
    さぁ、早くと急かす私を睨みつけながら、溜息をひとつ。それから、すう、と息を吸う音がした。


    私の心を歌で染め上げて
    そして、ずっと歌っていたい
    あなたをずっと待っていたの
    貴方の事をとても慕っているの
    この想いを本物にさせて
    つまりね、


    「愛しているわ」
    「……私もです、ノートン」
    「歌詞がそうなの!」
    「ふふ、わかっていますよ」

    私の望んだ愛を歌う歌詞は先程ひとりで口ずさんでいた時よりも、甘い色を乗せていたように感じるのは思い上がりだろうか。
    もちろんアイラブユーはあくまで歌詞だから口にしたのだとわかっている。
    照れ屋な君の口はなかなか私への好意を紡げずにいることも。
    それでも、と続けるとついに耳まで赤くして私の肩口に顔を押し付けてしまった。
    拗ねてしまっただろうか。
    ノートン?と声をかけても黙ってしまっている。
    あぁ、しまったな。機嫌をとっておかねばと思い、再度口を開いた所で俯いていた顔が勢いよく上を向いた。
    真っ赤な顔、いつも強気な眉がへにゃりと下がって少し潤んだ瞳をより頼りなさげに見せる。

    「ぼくも」
    「ん?」
    「ぼくもあいしてるよ、ジャック」
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