まいにち無占(ふつかめ)「お前は誰だ……」
唸るようにノワールが言うと、男は一瞬きょとんと目を瞬いた。
けれどそれからすぐに愉快そうな顔になって、ふふ、と笑う。
「なに、」
「ああ、すみません。自己紹介がまだでしたね。私は謝必安と言います」
「……しゃ……?」
「謝七、でもかまいませんよ。あなたなら」
ベッドのわきに手をついてノワールの顔を覗き込みながら、謝七と名乗った男はゆるりと目を細めた。
「ああ、そうだ。そろそろ食事ができる頃です。おなかが空いていますよね。もうじき来ると思いますから……」
「何を……」
「──謝七、ドアを開けてくれ」
何をしようとしている。そう聞こうとした瞬間だった。別の男の声が聞こえてノワールは身体を強張らせる。
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