まいにち無占(なのかめ) ◆◆◆
「……」
「ノワール、まだ体調がすぐれませんか?」
「……いや、」
「随分元気になったと思ったんだがな」
謝七と范八は心配気にノワールを見ている。
食べたくない、とか、体調が悪い、とかそういうわけではない。
ノワールは目の前に用意された皿いっぱいに盛られた赤い料理に頬をひくりとひきつらせた。
赤い。とにかく赤い。
つんと鼻をつく刺激的な香りは決して不快な臭いではなかった。
むしろ香味野菜の焦げた香ばしい匂いがして食欲をそそる。
ただ、赤いのだ。
大量の真っ赤な唐辛子と鶏肉、だろうか、それらが一緒に炒められている。それだけならまだ理解できるのだが、なんとこれは料理の八割を唐辛子が占めているのだ。
料理名を聞いても理解できない。そもそもこれは料理として成立するのだろうか。
困惑するノワールが謝七と范八を見上げるも、二人はノワールがそうしている理由が分からないらしい。
フォークを握りしめているノワールに首を傾げている。
たちの悪いいたずらでもないようだ。
──意外と、食べればそうでもないのかもしれない。
ええいままよ。ノワールはフォークで唐辛子と鶏肉を刺して口に放り込んだ。
瞬間、口中に広がる尋常ではない辛み──いっそ痛みである──にノワールは悶絶した。
「~~~~!」
「ノワール!」
「大丈夫か?」