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    meltydream_meu2

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    meltydream_meu2

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    オンリー展示予定小説。続きです🍈🍦
    貞シンカヲ🍈🍦

    #シンカヲ
    thinKawaii
    #貞シンカヲ
    chosashinkawo.
    #進捗
    progress

    エメラルドグリーンの泡沫に、キスを。4 またそれから数日経った、とある日の放課後。その日は翌日に小テストが2つほど控えている、中学生にとっては少々面倒な日であった。そして来週からは中間試験も始まる。何ともストレスフルな日々が続きそうだ。

    「全く、中間試験があるってのに期末の範囲の小テストの勉強もさせるなんて教師の要領悪過ぎるんじゃないのこの学校は! っんとにめんどくさいわね!」
    「…………ていうか、なんでアスカも一緒に来るの……?」
    「ヒカリが鈴原に勉強教えてあげるからって別々に帰ることになって暇なのよ。そこにあんた達がいたから声掛けてやったってワケ」
    「誰も君に声掛けてくれなんて頼んだ覚えないよ」
    「何よこの変態男、うっさいわね!!」

    拳骨を振り翳すアスカに、べーっと舌を出すカヲル。この2人が顔を合わせるといつもこうだと、シンジは頭を抱えて溜め息を吐いた。本来ならカヲルと一緒にあの喫茶店へと勉強をしに向かうはずが、人通りの少ない道中でぽつんと1人で歩いていたアスカに捕まってしまったのだ。

    まずったな…………アスカと渚は頭良いから試験なんて余裕だろうし、この調子だと僕のただでさえ少ない勉強時間が2人の喧嘩で妨害されるぞ…………

    後ろでぎゃんぎゃんと言い争いを続ける2人を連れて、げんなりとしながら歩くシンジ。その足取りはまるで漬物石を背負っているかのように重たくなっていた。学校の生徒も見受けられない帰路では、アスカは被っていた猫を脱ぎ捨てて本来の自分をさらけ出している。近所迷惑だからあんまり騒ぐなよ、と嗜めると、カヲルの頭を小突いていた彼女は突然何かを思い付いたように振り向いて人差し指を立てた。

    「そうだ、あんた達今から喫茶店行くんでしょ? シンジ、勉強教えてあげるからコーヒーとケーキ奢りなさい!」
    「えぇ…………」

    14歳にしてドイツの大学を卒業しているという非常に秀才な頭脳を持つアスカからしてみれば、中学の試験範囲などお茶の子さいさいだろう。確かに教えてもらえるのは助かるかもしれないな……とシンジは思う。カヲルも頭のキレは良いが、使徒であるが故か他人に上手く説明する能力は少々劣勢気味であった。国語などの筆者の思いを述べなさいという問いにもいまいちピンと来ないようで、得意科目とそうでないものの点数の差は激しい。彼も分からないところは教えてもらったほうが良さそうだ。

    「じゃあ、分かった。アスカにも渚にも僕が奢るから、今ここで喧嘩するのやめて……」

    シンジがそう言うや否や、再び掴み掛かろうとしていたアスカと何か罵詈雑言を投げつけようと口を開く寸前だったカヲルの動きはぴたっと止まる。そして、ふんと無表情になって顔を背けた2人は早足で歩き出した。前を歩いていたシンジのことを抜き去りそうな勢いだ。なんて現金な奴らなんだ…………と、じとりとした視線を送ると、3人は何となく気まずい雰囲気を纏いながら喫茶店へと向かって歩いていった。

    ***

     ダークウッドの扉を開くと、上部に取り付けられた小さな鐘がカランカランと軽やかな音色で出迎えてくれる。シンジは中に入ると目の前に立つ少女を見て、あっと声を洩らした。カヲルよりは少し色味があるが真白に近い肌に、空色の髪をした少女――――綾波レイが鞄を持って立っていたのだ。

    「あ、綾波も来てたんだね」
    「……今日は時間があったから」

    レイはまだ来たばかりで席を決めていなかったらしく、後ろの2人を見るとまたシンジへと視線を戻した。その僅かに丸くした紅い瞳からは驚いたという感情が伝わってくる。彼女から見ても目の前の3人が揃って喫茶店に来ることは珍しく映ったようだ。

    「あはは、ちょっと色々あってね。アスカが勉強教えてくれるって言うから3人で来たんだ。綾波もどう?」
    「じゃあ、一緒に座る」
    「ファースト、シンジがケーキ奢ってくれるわよ」

    後ろからアスカが言うと、シンジは肩をぎくりとさせる。しかし、後ろにいる2人に奢ってレイだけ仲間外れにするわけにもいかないだろう。僕ちょっとトイレ行ってくる……と陰の方へ行って、シンジは少しの焦燥感に駆られながら財布を確認する。エヴァパイロットという役職に就いてはいるものの、年齢はたったの14歳でまだ中学生だ。手持ちも未成年故にミサトに管理されているため少々心許ない。しかし、中身を見てみると今回は何とか自分の分も含めて全員の分の食事代を支払うことができそうだった。

    「シンジ君は僕の隣ね」

    安堵して戻り3人を探せば、アスカが先導して席を選んでいたようだった。普段はあまり座らない4人掛けの席に男子2人、女子2人で腰掛けると、窓側に座っていたアスカが最初に食べてからにしましょ、とテーブルにメニューを開く。

    「あたしはティラミスとブラックコーヒーね」
    「私、チーズケーキと紅茶」
    「僕はメロンクリームソーダ!」
    「はいはい……じゃあ僕も渚と同じのでいいや」

    店員を呼んでメニューを一通り頼むと、先程の喧嘩をする2人を引き連れての移動と財布の中身を確認するまで少し焦ってドキドキしていたことも合わせて、気が張り詰めてしまっていたらしい。取り敢えず一仕事終えた……とばかりに、シンジは椅子の背凭れにガクッと寄り掛かった。まだノートも教科書もテーブルの上へ上げてすらいないが、この疲労感は少しキツいものがある。

    「明日の漢字と英単語の小テスト、範囲は分かってるわよね」
    「知ってる」
    「あ〜〜、僕そういうのは何となく見れば覚えられるから大丈夫」
    「ダメよ、あんたはそう言って毎回ケアレスミスが多いんだから。何度も書いて、単語とその意味を結び付けて覚えるようにすんのよ。明日の小テストは範囲外だけど、中間の範囲は気を抜くな」

    早速勉強を開始する3人にエネルギッシュさを感じ、シンジも英語の教科書とノートをバッグから取り出した。授業中に書き記しておいた英単語とその意味を繰り返し書いていると、5分くらい経ったところで店員がテーブルへと駆け寄って来る。

    「メロンクリームソーダ2つ、お待たせしました」

    夕方の時間帯は人が少なく、店内に人は疎らであったため、比較的注文も早くできたようだった。アスカやレイが頼んだメニューもすぐにテーブルへと運ばれてくる。カヲルは、グラスに注がれ煌めく泡沫を立ち昇らせるエメラルドグリーンに瞳をきらきらと輝かせていた。

    「あんた達2人してメロンクリームソーダなんて、おっ子ちゃまね〜〜。……ていうか、フィフス、そういえばあんたって食事に興味あったんだっけ?」

    アスカはティラミスを頬張りながら向かいに座る男子2人のお揃いのメロンクリームソーダをふふんと嘲笑って揶揄してきた。彼女の棘のある言動はシンジには馴れたものだが、カヲルは気に障ってしまう。やられたらやり返すとムキになった彼は、隣に座るシンジの腕に両腕を絡み抱きついた。自身の恋人を自慢するように腕に顔まで擦り付ける。

    「今まさに君が馬鹿にしたメロンクリームソーダで僕は『食』に目覚めたの。シンジ君がここに連れてきて教えてくれたんだよ。ねー! シンジ君」
    「うん……渚、ここは目立つから離れろ。学校とはまた別なんだから…………」
    「ふぅん、そういう感じなのね。やっぱり訊かなきゃ良かったわ……」

    シンジとカヲルから漂う甘い雰囲気で何となく2人の関係を察したアスカは、じとりとした視線を絡み合う彼らへと向ける。彼女の隣に座っていたレイもいつもの無表情に少々影を落とした瞳をして紅茶を嗜んだ。チーズケーキは美味しかったらしく、もうペロリとたいらげてしまったようだ。

    綾波って意外と食べるの早いほうなのか……? それともよっぽどお腹空いてたとか?

    カヲルを引き剥がしたシンジはレイの前にあるいつの間にか空になった皿を見ると、誰よりも早く食事を終えた彼女を意外に思う。アスカとカヲルと3人で話しているうちに全部食べてしまったようだ。

    「碇君、どうかした?」
    「あぁ、いや。チーズケーキ美味しかったのかなって」

    無意識に皿を凝視していたようで、レイが向かい側から顔を覗き込んでくる。シンジは驚くと手をぶんぶん振って誤魔化したが、彼女も4人の中で自分が1番最初に食事を終えたのだということに今更気付いたようだ。レイはほんの少しだけ目を見開くと、シンジから目を逸らして恥ずかしそうに頬を染めた。

    「…………美味しかった。あんまりこういうの食べたことなかったから……」
    「そっか。良かった」

    打ちっぱなしコンクリートの半ば廃墟のようなマンションの一室――――家具や嗜好品などは必要最低限の無機質な部屋で1人暮らしをしているレイ。シンジは彼女がこの喫茶店に来ているところなど今まで見たことがなかった。今日はたまたま立ち寄っただけなのだろうか。色々気になることはあったが、あまり根掘り葉掘り訊くのも何だか疲れさせてしまうような気がして、シンジは口を噤んだ。

    …………僕には離れろって言う癖に、ファーストには自分から話し掛けるんだ……なんか、やだな……そういうの。付き合ってるのは僕の方なのに

    レイとシンジが仲良さげに話し、彼女が頬を紅潮させるのを見ていると、カヲルの心は薄暗く重い闇に覆われる。そして、心の柔らかなところがちくちくと針で刺されたように痛くなった。『嫉妬心』や『やきもち』という言葉は聞いたことがある。彼はまだシンジと出会ったばかりの頃に同じようにレイに嫉妬して、独りぼっちの部屋で雑誌を床に叩き付けたことを思い出した。

    今、僕はシンジ君と仲良く話してるファーストに嫉妬してるんだ…………前にもこんなことあったな。ファーストが使徒に怪我させられて目覚めたって分かった時もシンジ君は僕のこと置いてすっ飛んで行ったんだっけ……

    俯いていた顔を上げると、数学の試験範囲でよく分からないところがあると言ってレイはシンジに教科書とノートを見せていた。さらさらと式を書き加えて説明をしてやるシンジのその表情は優しく、カヲルは自分の隣に座っているシンジが急に遠くに行ってしまったような錯覚に陥る。エメラルドグリーンを啜る唇には、無意識に齧り、草臥れて平たくなったストローが寂しく挟まれていた。

    今日のメロンクリームソーダ、何だか苦くて冷た過ぎて、炭酸もばちばちして口の中痛い。シンジ君がせっかく奢ってくれたのに……アイスもあんまり甘い感じがしない…………僕の舌がおかしくなったみたいだ……

    カヲルは寂しくて堪らず、シンジのノートに『ファーストばっかりズルい。さみしいよ』と小さく書くと、グラスを片手に隣に座る彼のスラックスのちょうど太腿の上を引っ張った。シンジは最初こそ煩わしそうに振り向きもせず手を振り払っていたが、あまりにもカヲルがしつこくするため呆れてやっと此方を見てきた。

    「渚、いたずらならやめろ……君も勉強しないと――――」

    ノートの端にそっと走り書きされた、カヲルの書いた小さな文字。シンジは言いかけてからそれに気付くと、カヲルが今にも泣き出しそうな顔でしゅんとしていることがやっと分かったようだ。カヲルは自分でも意識しないうちに表情を思いっきり顔に出してしまうところがある。紅い瞳は涙で薄っすらと膜を張り、眉もハの字を描くように下がっていたのだ。僕さっきから綾波とばかり話してるな……とシンジは振り返ると、だんだん寂しんぼのカヲルがいじらしく思えてきて、彼の書いたSOSのメッセージの上に返事を書いてやった。

    『ごめん、もう少しで終わるから、渚も勉強して待ってて』

    渚、少し構ってやらなかっただけで子犬みたいな顔して……やきもちでも妬いてるのかな。……可愛い

    シンジが書いてくれた返事が気になり、カヲルはすぐに目を通す。『もう少しで終わる』『待ってて』と少々角張って右上がり気味の愛しい彼の字で書かれた言葉は、カヲルの寂しさと嫉妬心で薄暗くなった心に光を差してくれた。もう少しで終わるなら……僕も勉強しようかな…………と、伏し目がちになっていた紅い瞳に光を宿して、やっと英語の教科書を開いてみる。小テストの範囲にはオレンジ色の蛍光ペンで雑に線が引っ張ってある。本来なら少し目を通しただけである程度記憶することができる使徒由来の能力は持っているが、時間潰しも兼ねて単語とその意味を何度も書いてみることにした。

    「碇君、ありがとう」
    「いいよ。…………僕、ちょっと休憩」
    「奢ってくれるんだし、あたしにも分からないとこあったら聞きなさいよ」
    「後で聞くよ」

     カヲルが勉強を始めて10分程が経った頃。レイに勉強を教え終わったシンジは、椅子に浅く座って猫背のようになっていた姿勢を解く。背凭れに寄り掛かるように座り直すと、隣に座って集中してテーブルに向かうカヲルの横顔を見た。鼻筋はよく通り、紅玉のような瞳は長い銀糸に縁取られている。血が通っているのかぱっと見ただけでは分からない真白な肌は、シンジは本でしか見たことはなかったが、まるで冬という季節に降っていたとされる雪のようだ。黙っていると『絶世の美少年』とまで表しても過言ではないカヲルのその姿には、うっかりしていると感嘆の溜め息が出てしまいそうになる。

    本当に……黙ってればお人形さんみたいに綺麗なんだもんな…………

    しかし、そんな『お人形さんのように綺麗なカヲル』はシンジにとって彼を好きな理由のほんの一部でしかない。英単語を繰り返し書くことに次第に夢中になっていってしまったカヲルのスラックスを、今度はシンジが引っ張る番だった。少し日に焼けた健康的な肌色をした腕を、向かいの女子2人に気付かれないようにさりげなく伸ばしてカヲルの太腿に触れる。すると彼はそのいきなりの指の感触に驚いたのか、持っていたシャーペンをノートの上に落として全身をびくりとさせた。

    「…………ッ、終わったの?」
    「うん」

    小声で話すと、シンジはノートの端にまた何かを書いた。カヲルが気付いて覗き込むと、そこには『渚の甘えん坊』と書いてあった。彼はそのさっと見ただけで分かる言葉の意味を頭の中で何度も反芻すると、じわじわと頬が火照ってしまう。隣にいるけれど遠くに行ってしまったと感じていた愛しい彼は、実はどこへも行ってなどいなかったのだという安堵でカヲルの心は満ちていった。

    「ん…………」

    シンジ君……ズルいよそんなの…………と赤くなった頬を隠すべく俯いていると、またスラックスを引っ張られる。シンジのほうへと目をやれば、テーブルの下で今度は空いていた左手を彼の右手に捕まえられてしまった。少し強引に恋人繋ぎにされ、にぎにぎと柔らかく、優しく握り込むように指を動かされてしまえば、ただ手を握り合っているだけであるのに心臓が早鐘を打って堪らない気持ちになる。カヲルもぎゅっと手を握り返し、真白な細い指でシンジの手の甲を撫でた。お互いの掌の温もりが心地良くて、徐々に頭までふわふわと熱に浮かされたようになってくる。何だか、手を繋いだまま夢を見ているようだ。

    …………渚の手、凄くドクドクいってる。可愛いな……

    シンジはカヲルの指の動きに呼応して、手の甲に指を立てる。そして指の腹で優しくねっとりと愛撫するように動かしてやれば、カヲルの身体はびくんと跳ねた。

    や、やだ……、何だろうこれ……身体の芯が熱くなってくる……感じ…………こわい

    まるで感じてしまっているようなカヲルの様子に、シンジは俯いたまま伏し目がちになって熱い視線を送ってしまう。俯いたままのカヲルは空いている右手をテーブルに乗せ、シャーペンを手に取ると、シンジが先程書いた文字の近くにまた何かを小さく書いた。

    『これ以上したら、僕のからだおかしくなりそう。ドキドキする。シンジ君のいじわる』

    丸かったりはみ出していたり所々形が歪なカヲルの文字は、また違う意味でのSOSをシンジに発信していた。その可愛らしい反応に彼もぶわわと頬を紅く染める。思わずキスをして、頭をもしゃもしゃと撫で回してやりたい気分だ。だが、状況が状況だけになかなかそんな大胆なことなどできるはずもなく。カヲルが長い前髪の隙間から大きな瞳を細めて切なそうな表情をして掌の力を弛めてくると、シンジもこれ以上は可哀想かな…………とぱっと手を放してやった。今まで密着し、お互いを捏ねくり回すように握り合っていた掌の感触や体温がいきなり離れてしまうのはカヲルは何だか寂しかった。しかしあのまま手を握り続けていても、向かいの女子2人には勿論、公の場で変な声が出てしまったり他にもあまり考えたくはない醜態を晒してしまうかもしれなかった。そう考えると、やむを得ない判断だ。

    左手に残るシンジの体温や掌の感触の余韻に浸りながら、カヲルはどろどろに溶けたアイスが沈んだメロンクリームソーダを飲む。中に入り込んでしまったさくらんぼをスプーンで探って救出すると、それも口の中に放り込んだ。今度は嫉妬で心を曇らせていた先程とははっきりと違っていた。弾ける炭酸が心地良く、爽やかな喉越しやバニラアイスの滑らかで甘美な口溶け、さくらんぼの甘酸っぱさなど、そのどれもが鮮明にカヲルの味覚を擽ったのだ。

    ……人間の味覚って、心と繋がってたりするのかな?

    カヲルはメロンクリームソーダによって涼しさを摂取すると、しかしまだ何となく余韻で火照った頭でそんなことを考えた。
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