兎と燕液晶に映った弟の顔を見るなり兄は噴き出し、一頻り相好を崩した後、こう問い掛けた。
「ふ…っ今回は何の催物だ?イースターには少しばかり早いんじゃないか?」
「笑い過ぎだ…耳の日、転じて兎の日なんだと」
そう言えば頭部に生やした耳がそのままだった。わざわざ冥府にいる彼に見せるような物でもない、どうせこのふざけた余興には参加しないのだ。ポセイドンが今日の為に生やした耳を消すと、画面の向こうのハデスが愛らしかったのに、と残念そうに呟いた。小さな声だったが、最近のマイクは優秀だ。余計な感想までご丁寧に拾ってくれる。
「また困った末弟が楽しいイベントを企画遊ばせたようだな?」
「ご明察…冥府はいつも通りで何よりだ」
身内で唯一、難を逃れている兄に対する嫌味である。それを知ってか知らずか、じっと考え込むような間ののち、これまた余計な一言が集音された。
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