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    kuromituxxxx

    @kuromituxxxx

    文を綴る / スタレ、文ス、Fate/SR中心に雑多

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    カルデア時空剣伊(※剣不在)

    #剣伊
    Fate/Samurai Remnant saber×Miyamoto Iori

    【剣伊】夜の端、夢の隙間 食事も睡眠もサーヴァントには必要のないものだと知ったのは自分の身がセイバーと同じそれになってからだった。
     カルデアには厨房や食堂があるし、与えられた部屋にはベッドがあったけれど、食事も睡眠も必要不可欠なものではないサーヴァントにとってそれは嗜好品に近いものなのだという。
     なるほど、確かに食事も睡眠も取らずとも問題なく動き続けていられるし、だからひと晩じゅう剣の稽古だってしていられる。
     よくよく考えればもう死んだ、生身の人間の体ではないのだ。勝手が違うのは当たり前といえば当たり前だ。

     そんなことひと言も云ってなかったじゃないか。

     ベッドに横たわって思い出していたのは自分が現界した江戸によく似た街で幾らかの時間を共に過ごした、かつて自分のサーヴァントであったというセイバーのこと。
     当たり前のように朝餉や夕餉をせがんできたので当たり前のように食事を作って食べさせていたけれど食べなくたって問題なかったのではないか。
     かつての自分達がどう過ごしてきていたのか記憶はないけれど、あの様子を見るにきっと同じように食事を共にしていたのだろう。
     その頃の自分は彼が食事も睡眠も必要ないこと、知っていたのだろうか。
     けれど御御御付けを口にする彼はとても良い顔をしていた。それに好ましさを覚えたのも事実で、だからきっと知っていても知らなくても同じように自分は彼に食事を出していただろう。

    『イオリ』

     ベッドに横たえた体の向きを変える。
     食事も睡眠も必要ないと解っていても生前のようにそれを行ってしまうのは自分に英霊としての自覚が薄いからだろうか。
     灯りはとっくに落としたけれど、どうしてか今日はなかなか眠りに落ちていかないせいか、思い出すのはセイバーのことばかり。
     食事を好んだ彼だったけれど、そういえば夜はどうしていたのだろう。
     布団に入ることもせず、部屋の片隅に腰掛けていたちいさな後ろ姿。
     長屋に客用の布団なんて置いていなかったけれど、かつての自分達はどうしていたのだろう。同じ布団で寝ていたのだろうか。だったらあの背中に声を掛けて招き入れてやるべきだったのだろうか。
     考えても正解のわからないことばかりだし、何も覚えていない自分ではあの特異点での時間では短すぎて正解に辿り着けない。

    『イオリ、』

     瞼を閉じればまだ鮮明に思い出せる自分を呼ぶ声、笑った顔、何も覚えていない自分に向けられる少し寂しそうなまなざし、何かを言いたげな口元。
     まだこのカルデアには来ていないきみ。
     夢でくらいなら会えそうなものだが、そんなときに限って夢に落ちていくことも叶わないから夜だけが、ただただ長い。



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    kuromituxxxx

    PROGRESS無数に存在する並行世界のひとつにて、転生できる魂を持つアベンチュリンとその専属医になるレイシオのはなし
    【レイチュリ】明日の僕もどうか愛していて 1 明日にはきっと僕は君のことを忘れている。


     ああ、早く。早く終わればいいのに。
     今日もまた閉め忘れたカーテンから差した陽の光で目を覚ます。朝の透明なきんいろの光の中で瞼を開くのは孤独を確かめることによく似ている。そこにあるのは自分ひとりだけの体温で、ひかりの中にいてもそれに自分の輪郭が溶けることはない。
     アベンチュリンは枕元に置かれた端末に手をのばす。
     液晶に表示された今日の日付を確認する。僕の記憶が確かなら、三日飛んでいる。
    「僕は今回も死ねなかったのか」
     ぽつりと零した言葉も朝の光の中に落ちて溶けてどこかへ行ってしまう。
     ベッドから抜け出して、ひた、と床に裸足の足を着ける。痛みはない。洗面所で鏡を見れば記憶の中と寸分変わらぬ姿かたちのままの自分がいる。平均的な男性より幾分小柄で痩身のからだ、窓から差していた光に似たきんいろの髪、そこから覗くピンクと水色のまるい瞳、首元には奴隷の証である焼印。鏡で自分の体を隈なく確認してみたけれどひとつとして傷痕はなく、だから今回も僕は前回の自分がどう死んだのかがわからない。何度死んでもどうしてか、死んだときのことは思い出せないのだ。
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