「飛雄くんがいるから力仕事が捗るねえ」
祖父の葬儀で会ったきりの親戚にそう言われて、影山は「っす」と短く返事をした。
夏休み中の部活もなくなるいわゆるお盆休み、祖父の生家に初めて両親と共に訪れたのは、家の解体の手伝いのためだった。
宮城県内といえど車で2時間近くかかる山奥にある祖父の生家には幼い頃に一度祖父に連れられて来たことがあるそうだが、覚えてはいない。次男である祖父が自由にバレーの道を歩めたのは、この家の家長である祖父の兄が長男の務めを果たしてくれたおかげだ、と両親が話してくれた。その、祖父の兄が先月亡くなった。それを機に山奥で不便なこの家を畳んで、同居していた家族は麓の町に移り住むのだという。
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