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    ジャンル雑多・色々上げる/@f_ACTV

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    真田武志と真田徹郎と西城KAZUYAの話。
    譲が高校生くらいの時間軸。

    #ドクターTETSU

    K's 夜半であった。G県I町H山。N県から車で2時間ほどの場所に位置する。根無し草であり、ハマー一台で国内はもとより海外にもすっ飛んでいく男がいる。だがここ数年、ややあってN県の繁華街のタワマンをヤサにしている男――ドクターTETSUには、G県もN県も海がなく、なんとなく閉ざされた世界のように感じてならない。走っても走っても山並みばかりで木、林、森が延々と続いている。海のない場所は窮屈に感じる。崖っぷちから望むあの日の日本海に思いを馳せる。過去などとうの昔に忘れていたというのに、存外覚えているものであった。

     そんなドクターTETSUが何故隣県まで飛び込んでいったというと、闇医者として上客であった「訳アリの金持ち」のバカな子供が親の金で買ったマニュアルのシルビアで峠の下りをバカみたいなスピードで走り、バカなので減速の制御もできないままガードレールに突っ込んでさらに谷に転がったという。免許を取ったばかりとも聞いた。ご丁寧に貼られていた初心者マークのほかにも、車体にロールバーが入っていたため、車は全損だったがTETSUの迅速な処置もあり手足の骨折程度で済んだ(TETSUの見立てだと全治2~3ヶ月はかかるという)が、表沙汰にしたくないがために呼ばれたのであった。
    陽が昇る前に「隠密な事後処理」を遂行するため、峠道の端っこから谷に転がってめちゃくちゃになったドンガラのS13シルビアを見てあの日を思い出す。西城KAZUYAとの日々が始まったのはこの車が流行った時期だった。車も短い期間で乗り換えるのがステータスだった時代。今では思い出の中のように美しく塗装され、バカみたいな値段が付き始めている。
    「いやあ、TETSU先生にはいろいろとお世話になってすまんなあ。こんくらいでいいっすかねえ」
    「訳アリの金持ち」はパーを出して闇医者に交渉する。五百万でお願いしたいらしい。 傍らで闇医者が呼んできた闇整備工場のクレーンがボコボコになったシルビアを引き上げる。大きな火災には至らなかったのが不幸中の幸いで、ガラスも割れ、オイル塗れで中身もスカスカで汚れてはいるが、所々外装だけは20年前の輝きを放っていた。
    「二千万だな。整備工場と俺で折半だ。ガードレールの板金もあるしな」
     TETSUは金持ちの顔を全く見ずに放った。「訳アリの金持ち」は青ざめた顔をしているが、ガキの命を救うという仕事を全うしたTETSUにとっては金さえ貰えればどうでもよかった。「隠密」にするのならそれくらいが妥当だろう。車は廃車になるが、闇整備工場が引き取り、上手いこと純正戻しして売ることになるだろう。ワンオーナー・歴無し上玉と飾り立て、高価な値段を付けて。シルエイティやワンビアになるかもしれない。
    「訳アリの金持ち」は自分のベンツからアタッシュケースを出し、TETSUに渡す。
     アタッシュケースの中身を確認し、即金で一千万を闇整備工場の社長に渡した。
    「あのガキに言ってやれ。古びたシルビアじゃなくて今度は新型オートマのGT-Rにしろ。格好だけ一丁前でもテメェ自身で制御出来なきゃあ意味ねえだろ」
     若い頃からカマロのマニュアル車をぶん回し、病に蝕まれてもなお、V8・6000ccとかいうハイスペックというよりモンスターのようなアメ車をシバき倒すTETSUは「訳アリの金持ち」に説法してさし上げた。
    「毎度あり。TETSU先生、どうぞ」
     闇整備工場の社長が一仕事終え、煙草を吸おうとしていた。既に一仕事終えていたTETSUにも、と思い一本差し出すと、「ああ」と答えTETSUに煙草を渡し、火を差し出した。
     TETSU自身煙草は全く吸わないわけではないが、差し出されて断るほどのものでもない。おもむろに煙を肺で満たす。血液が収縮する。仄かな甘い香りを伴うそれに、真田徹郎は積車に乗っかったシルビアが流行ったあの頃にトリップしそうであった。
    (――武志(ヤロオ)の匂いだ)
     20数年前、某国と共に沈んだ兄の匂いだった。今吸っているこれがキャメルであると煙草を差し出されてすぐに思い出した。今であれば「医者なのに」と言われそうだが闇医者である以前に、あの時代はガキでも煙草を簡単に手に入れてバカスカ吸っていた「そういう」時代だった。その前後に渡米し、クエイドに入った時に出会った日本人もTPOを弁えずによくその辺で吸っていた。兄もまたそういう人だった。
     真田武志亡き今、血縁関係も一方的に切られたような親戚筋で実兄を知る者は殆どいないだろう。あの事件から間もなく実母も逝去した。徹郎は重たく煙を吐き出し、再び煙を取り込む。俺もそろそろ潮時かと思った時に出会った「K」を継ぐ者たち。命を救われ、今ここに立っている。決められた運命のように思ってしまった。医師である以上迷信めいた気持ちを抱くほど少女趣味になったつもりもないのだが、どうしても思わずにはいられなかった。正直に言えば、嬉しかったのだ。
     イタリアで弱気になっていたKAZUYAをぶん殴ったこともあった。無茶とかやんちゃという言葉で片付けられず、数分後に自分も生きるか死ぬか分からない状態で、世界を飛び出しては二人で暴れまくった。武志もKAZUYAもすでに亡く、自分もいつ向こうに呼ばれるか分からないくらい年齢を重ねていた。どれだけ時間が経っても、兄もKAZUYAも忘れようにも「忘れられなかった」のであった。

     自分が燻らせる消毒液の匂いに混じるヤニの匂いに亡き兄を求めてしまいそうになる。徹郎はそれを振り払うように地面に落とし、ブーツの底でヤニを消す。
    「じゃあ金も頂いたし、俺は引き上げるぜ。あとはよろしくな社長」
    H2に乗り込んだ徹郎は、アタッシュケースに入った一千万を助手席に投げ、セルモーターを回してV8エンジンに火を入れる。家で待つガキがいるが、放っておいても一人で数日生活出来るくらいの年齢だし、小遣いも渡してあるので、メールを入れておけば平気だと徹郎は折り畳み携帯を開き、自宅で待つガキへ「もう暫く帰れない」とだけ打って送り、すぐに「絶対に戻ってきてください」と返信があった。ガキの早打ちも大したもんだと徹郎は一人運転席で笑う。
    アクセルオンでダウンヒルをしていった。
    徹郎は一度山を下り、国道まで出たのち、関越自動車道を北上し、新潟方面から北陸自動車道を抜けて富山に入る頃には、既に陽も高く昇っていた。

    【了】
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    金柑🍛

    MOURNINGなんか不適切なものを格納していくところにしたい。大したことないけど性癖が駄々漏れなのでワンクッションしときます。ここは性癖の供養塔。
    パスワードは2人の暮らしたマンションの階数で。
    1、興味の無さ所以の快楽に対する無防備さで、まぁ耳舐めくらいなら…と許してみたらめちゃくちゃにされちゃう闇医者が見たいなぁ!!と元気いっぱい思ったりしています。
    2、ドクテツさんの乳首は今までマジ付いてるだけの無の器官からゆっくり開発していってあげてほしいなぁと思います。色も加齢で色素沈着きみでぺったりしてていい…綺麗な色のぷっくりパフィーニップルじゃなくていい派です。よろしくお願いします。
    3、でかい攻めの丸太みたいな太もも持ち上げてうっとりすりすりしながら、重たい…❤️って被害者ぶって言うやつ、多分何度も描くので見守ってて欲しい。人体で好きなパーツは前歯と太ももなので……。どっちも股関節柔らかいという有益情報、ありがたいです。
    4、なかなかセッ…に至らないので間をすっ飛ばしてぇという気持ちが迸りました。テツは肉体の性的な接触に慣れてない興味ないまんまあの歳になって譲介にねちこく色々開発されてしまうといいです。
    キャプションが長くなってきたので性癖の供養塔、増えたら次は新しい塔を建てます。(増やすな)
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