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    heartyou_irir

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    記憶喪失ジャクレオ。仮4話ー3(タイトル未定)。ラギーとジャックでお土産屋さんにいるところ。

    水上からの景色を堪能し、再び湖周辺の探索に戻って写真を撮っていた二人は、最後にペンションに隣接しているお土産屋へとやってきた。
    天井では大きなプロペラが回り、柔らかな温もりを感じる照明が店内を明るく照らす。植物のインテリアで飾られた木製の棚には多くのお土産品が陳列されていた。

    ジャックはまず弟妹用にとお菓子コーナーをぶらつくことにした。正直定番のお土産品ばかりだろうと思っていたのだが、どうやらここは近くの牧場と提携しているらしく、牧場オリジナルの商品が数多く揃えられていた。

    足を進め、店の中央の一際目立つところに積んである箱に手を伸ばす。初めて見るパッケージだ。横には中身のサンプルが置いてあり、ジャックはそれに目をやった。

    箱の中にはマドレーヌやフロランタン、パウンドケーキなど、数種類の洋菓子が入っているようで、値札には一番人気と書かれていた。一つ目はこれでいいだろう。ジャックはその中でも一番大きな箱をカゴの中に入れた。

    次に手を伸ばしたのはチョコがかかったバウムクーヘンだった。他にもバタークッキーやチーズタルトなど日持ちしそうなものを次々と手に取っていく。どれも牧場で取れた材料で作ってあるらしく、見るからに美味しそうだ。

    奥に進むと今度は冷凍のケースを見つけた。中には凍ったハムやベーコンが入っている。ジャックは目を輝かせ、すぐさまお菓子が入ったカゴの中にそれらを追加した。明日の朝食はカリカリに焼いたベーコンエッグにしようか。思わぬ収穫に頬が緩む。

    あらかた欲しいものは手に入れたので、ジャックはラギーの様子を見ることにした。

    棚の影から顔を覗かせる。離れたところにいるラギーは、店内に置いてあった提携先の牧場のことについて書かれたパンフレットを広げて読んでいるところだった。
    これもいわゆる、売りのポイントなのだろう。ジャックはまだしばらくかかりそうだと判断し、もう少し店内をぶらつくことにする。

    棚には食品の他にも可愛い動物のぬいぐるみやアクセサリー、ハーバリウムなどのインテリアも少しだけだが置いてあった。瓶の中では色とりどりの花たちが美しく花びらを広げている。

    綺麗なものだと思いながら右端からゆっくりと左へ流し見ていると、ある一点でジャックの目が止まった。

    それは砂のように細かな石が入った小さな瓶だった。瓶は片手に収まってしまうほどの大きさで、ハーバリウムと比べると石だけが入ったシンプルなものだったが、ジャックはそこから目が離せなくなる。

    赤、青、紫、白といろんな色がある中、ジャックが手に取ったのは白色の石が入った瓶だった。半分ほど入った中身は、傾けるとサラサラと転がり、瓶の中で音を立てる。よく見てみると、石はまるで雪の結晶のような形をしており、白色も相まって本物の雪のように見えた。

    石、砂、瓶。ふと、ジャックの頭の中に悲し気な横顔がよみがえる。

    「雪の石ッスね、それ」
    「えっ」

    突然耳に入ってきた声に、思わず顔を上げる。隣を見ると、そこには先ほどまでパンフレットを見つめていたラギーが立っていた。ジャックの持っている瓶を横から覗き込んでいる。

    「それ最近輝石の国で出たお土産品なんスよ。輝石の国は雪での観光業が盛んだからそれにちなんだお土産で、素朴なところが可愛くてオシャレだって女の子に人気な商品ッス」
    「そう、なんですか……」

    ジャックは手のひらに転がした瓶に視線を戻す。白色が照明を反射して、まるで石自体が光っているかのように見える。

    「こういうのってちょっとしたアンティークとしても可愛いし、この雪の結晶みたいな形が輝石の国の思い出っぽくて良いらしいッスよ」
    「……」

    じっと瓶を見つめたまま固まったジャックにラギーがそっと声をかける。

    「プレゼントッスか?」

    プレゼント。再びあの横顔が頭にちらついた。
    気づいたらジャックは瓶を握りしめ、首を縦に動かしていた。

    「……はい」

    受け取ってもらえる保証はないが、もうそれを棚に戻すことなどできなくなっていた。握った手に力が入る。

    ジャックはラギーに背を向けて、レジに向かって歩き出した。
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