「……ここ、どこ」
エンジェルがぽつんと立ち尽くすそこは、慣れ親しんだ地獄の風景とも違う、なんとも奇妙な場所だった。
建物どころか人影さえもないそこは、まるでただっ広い荒野のようでありながら天も地もない無機質な空間のようでもあり、見上げた先には赤黒くどんよりとした血のような色が広がっていた。
地獄に堕ちてからそれなりの年月を過ごしていたエンジェルでさえも、こんな光景は見たことがない。
「なにこれ。なんで俺こんなところにいんの?」
ここに至るまでの記憶を辿ろうとしても何一つ思い出せることがなく、エンジェルは途方に暮れる。
「待て待て待て、どういうこと?なぁ!誰かいないのか!?なぁ!!」
理解が追いつかない状況に頭を抱えながらも一縷の望みを抱いて虚空に向かって叫ぶが、やはり応えが返ってくることはない。
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