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    じぇひ

    @Jjjjehi_51

    月鯉  いろいろかく

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    じぇひ

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    月鯉 書きたいとこだけ
    7/11 加筆

    #月鯉
    Tsukishima/Koito

     涙も美しいのだな、と眼前でしゃくり上げている男を見つめる。彼の長い睫毛を濡らすそれは朝露のようで、きらきら輝く様は彼の目を一層魅力的にするアクセサリのようだった。大きな雫となり輪郭を滑り落ちていくので溢れてしまっては勿体無いと拭い取ってやる。それでも流れ続ける涙の粒はやがて一筋の川の様になっていった。拭き取るだけでは追いつかなくなって、軽く舐め取る舌に広がる塩味は、痺れと共に確かな甘露ものせて味覚を刺激した。根源ごと吸い取ってしまおうか、と眼球に舌を這わせようとしたところで鯉登が目を見開いたので大きな瞳が露わになる。涙で濡れたそれは、かつて故郷の地で見た海。或いはかの人を、またはあの人を呑み込んでいった溟渤のようだった。ゆらゆらと強い輝きを放ち熱を持ちつつこちらを見つめている。なかないでください。と、言うとお前もだ、月島と言いべろんと瞼ごと舐められた。少し瞼がひんやりとして、また熱い流れができてようやく自分も涙を流していることに気がつく。ツン、と脳をつんざくような刺激が電流の様に鼻奥を駆け上がる。枯れたと思っていたのに。そう思っていたからこそ言われるまで気が付かなかったのだ。大切な物を、尊い物を諦めて進む道の途中に置いてきたからこそ染みついた鈍感さだった。喉が締め付けられる様に収縮するのが酷く苦しい。堪えきれずにえずくと泣くなぁと自分よりも大きな声でわんわん泣いている鯉登につよく、強く抱きしめられる。
     少尉も悔し泣き、と言う物をするのだろうか。少なくとも青年期ならば幾度かは涙を流したはずだ。決して知ることのない士官学校時代に思いを馳せる。自分以外が鯉登の瞳を湿らせたことなど、考えたくもなかった。強くあれと何度も言われた筈だ。そんな男が、無防備に泣くのは自分の下だけで十分だと醜いと分かっていながらそう思わずにはいられない。それ程までに目の前で起こっている光景は誰にも見せたくない素晴らしい物だった。
     互いの熱が平衡になる頃には肩口の布が変わるほどに、摺り寄せられた鯉登の涙で濡れていた。鼻を啜る音に変わったから、もう涙は引いてしまったのだろう。惜しい、と思いつつ。行きますよ、と普段はぴんと張られた背中を軽く叩くといやだ、離れたくないと幼子のように縋ってくるものだから決意というものも鈍ってしまう。もう日が昇り始めたようで部屋の中にも微かな光が先程まで満ち溢れていた闇を隅へと追いやっていく。照らされた黒髪は色を変えている。月島はこの、夜明けのような移り変わりが狂おしいほど好きだった。閨の中でさらりと揺れる黒も、眩い日差しに当てられて一層輝く紫紺もその両方を見ていられるのは自分の特権だと、先日まではそう誇りに思っていたからだ。
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    ゆき📚

    DONE【sngk】【ジェリーフィッシュが解ける頃】Ⅱ
    続きました。現パロです。
    現世では感情豊かに生きていて欲しいという作者の願望がにじみ出ているのでキャラが崩れてる感あります。
    あとエレリと言っていながら今回はほぼハンジ&リヴァイがメインのような感じになってます。
    相変わらず諸々雑な感じですが
    大丈夫、どんなものでもどんとこい!な方よかったら読んでやってください
    【ジェリーフィッシュが解ける頃】Ⅱ 「えぇッ!?エレンに会ったの?」
     某月某日、とある大手企業会社の一室にてリヴァイは大声を出した相手に睨むような視線を向けながら耳を塞ぐ仕草をしてみせた。
     「うるせぇぞハンジ、ボリューム落とせ」
     「ごめんごめん」
     ハンジと呼ばれた女性は快活な笑みを見せながらそう言うと座っている椅子の背もたれにぐっと寄りかかるようにして普段使っている作業机からノートとペンを取り出した。
     「同じ地域にいたんだね。すごいじゃん」
     「あぁ」
     「元気そうだった?どこで見たの?」
     「エルドとペトラがやってるパン屋の前で雨宿りしてた」
     「そうなの?え?え?話しかけた?彼リヴァイの事―」
     「覚えてなかった」
     ハンジが言い切る前にリヴァイはそう言うともう一度「覚えていなかった」
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