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    hirokii_04

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    hirokii_04

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    暴 🧲×狐🔮のプロローグの冒頭の冒頭
    完成がいつになるかわからないので供養…

    #探占
    divination

    ただこの身が朽ちて消えるその日を待っていた。



    ***

    身に余る大儀を任されて幾百年。

    人々の願いにより神として祭り上げられたその存在は、今はもう薄れていくばかりであった。

    神と成ったばかりの頃は真白であったはずの装束は、力の衰えとともに黒く染まっていき、以前は人里まで降りる事も出来ていた身は今では社のある森の中でしか行動することが出来ない程に弱まっていた。

    消えかけの落ちぶれた神。それが今の己がおかれた立場だ。

    元々は神ですらなければ、その使いでもない。神格など備わっていないただの野狐だった身だ。役目を果たし、人々から必要とされなくなれば消えゆくのは当然のことだろう。 

    その自分の末路に、不満はなかった。

    そもそもの身分を考えれば、神として在ることが出来たこと自体が既に奇跡なのだ。

    そしてそのまま神として往くことが出来るのなら、これ以上の名誉はないだろう。



    「私の最期は君が見届けてくれないか」

    身の内にある力が衰えはじめ、いずれ自分が消える定めにあるとわかった時、古くからの友である鬼にそう言うと、彼はその美しいかんばせを歪ませてしばらく姿を見せてはくれなかったけれど。

    未練がないわけではない。

    仕方のないこととはいえ、神という立場になる前から自分という存在を認め、いつもそばにいてくれた、優しい友を残して往かなければならないのはとても心苦しいものだ。

    それに、本来の役目を果たし今ではほとんど力がないとはいえ、ずっと見守ってきたこの地を結果的に見捨てて消えることになるのも申し訳ないと思う。

    それでも、やはり定めに抗う気持ちは湧かなかった。

    受け入れて、ただその時を待つことが自分に出来ることなのだと、そう思っていた。

     ただ、一つだけ。

    もしもわがままが赦されるのなら、最後にもう一度だけ人間に会いたいと思う。

    自分を求め、神としての自分をつくってくれた人という存在に。



    そんな淡い望みを胸の内に秘め、落ちぶれた狐の神はいつか来る終わりの時を今日も静かに待っていた。

    ***

    ―×××年、秋―

    「ん…」

    ふと緩やかな眠りの淵から意識が浮上する。

     

    未だ消えるまでには至ってはいないものの、その時が近いのかこの頃は一日意識を保つことも難しく、こうして眠ってはふと目を覚ますという事が多くなっていた。



    気付けば木々の間から差していた柔らかな日差しは橙色になっており、辺りは徐々に暗くなってきている。

    ほんの少し微睡んでいただけのつもりが、思いのほか深い眠りになってしまっていたことに一抹の寂しさを覚え、苦笑する。

    最近は日が暮れるのが早くなってきているので、そこまで遅い時間ではないだろうと思いつつ、そろそろ友が来る頃かと、凭れかかっていた社の柱を支えにゆっくりと立ち上がった。



    「おや?」

    立ち上がった視線の先に映ったものに、ふいに言葉が漏れる。

    そこにいたのは森に棲む小さな妖たちだった。

    どうやらこちらが起きたことには気付いていないようで、三匹で何やら白いものを転がしながら跳ねまわっている。

    「やあ、楽しそうだね。何をしているんだい?」

    思わずそう声をかけると、彼らはぴょんぴょんと音が聞こえてきそうな程大きく跳ねながら神様の元まで近寄ってきて、転がしていたものを差しだした。

    小さな瞳をキラキラと輝かせて、どこか誇らしげな様子が可愛らしくて、くすりと笑みを漏らして差しだされたソレを受け取った。



    「白い…球?」

    薄汚れてはいるものの、白い布地に赤い糸で刺繍が施されたソレは、手のひらに収まるほどの大きさで、その見た目に反してズシリと重く、落としてしまわないようにそっと手中に包み持つ。

    長い間人と関わることのなかった彼にはそれがどういうものかわからなかったが、自然の物ではなく人工的な物であることはすぐにわかった。

    「これどうしたの?」

    人が立ち入らなくなって久しいこの森で、彼らはどうしてこんな物を見つけたのか。

    『まさか、そんなはずはない』そうは思っても問いかけずにはいられなかった。

    少し震えてしまったその声に、しかし小さな妖達は再び大きく飛び跳ねて神様の足元を囲んで進み始める。



    「わ、っわ、どうしたの」

     足元で跳ねまわりながら進もうとする妖達を踏んでしまわないよう、状況がいまいち掴めないままに慌てて神様も一歩を踏み出した。
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    hirokii_04

    MAIKING暴 🧲×狐🔮のプロローグの冒頭の冒頭
    完成がいつになるかわからないので供養…
    ただこの身が朽ちて消えるその日を待っていた。



    ***

    身に余る大儀を任されて幾百年。

    人々の願いにより神として祭り上げられたその存在は、今はもう薄れていくばかりであった。

    神と成ったばかりの頃は真白であったはずの装束は、力の衰えとともに黒く染まっていき、以前は人里まで降りる事も出来ていた身は今では社のある森の中でしか行動することが出来ない程に弱まっていた。

    消えかけの落ちぶれた神。それが今の己がおかれた立場だ。

    元々は神ですらなければ、その使いでもない。神格など備わっていないただの野狐だった身だ。役目を果たし、人々から必要とされなくなれば消えゆくのは当然のことだろう。 

    その自分の末路に、不満はなかった。

    そもそもの身分を考えれば、神として在ることが出来たこと自体が既に奇跡なのだ。

    そしてそのまま神として往くことが出来るのなら、これ以上の名誉はないだろう。



    「私の最期は君が見届けてくれないか」

    身の内にある力が衰えはじめ、いずれ自分が消える定めにあるとわかった時、古くからの友である鬼にそう言うと、彼はその美しいかんばせを歪ませてしばらく姿を見せてはくれ 1847

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    寝落ち特有の気怠さからノートンはもう一度卓に頭を突っ伏す。少しだけ首を動かし腕の隙間から覗いた先には几帳面に積み上げられたみかんの山と、その隣に転がる中途半端に皮の剥かれたはぐれものが一つ。
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    「ノートン、ノートン。起きて」
    「……眠いから嫌」
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    「うわ、最悪……」
    思わず本音が溢れてしまったのは仕方のないことだろう。
    イライが指差した窓の外ではしんしんと降り積もる白い雪。眠 2534