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    しいげ

    @shiige6

    二次創作オンリー※BLを含む/過去ログは過去に置いてきた。

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    しいげ

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    GoSラルアル(有)。こちらの悪伝ラルアルなんちゃって吸血鬼話(https://poipiku.com/237679/8999455.html)の続きです。いずれもえっ…ちのこと話してるのでR15。 
    時代を超えて青春してるふたり。

    ##悪魔城ドラキュラ
    #ラルアル
    ralu

    ストリゴイの持たざるもの魔導書を研究、保管するための組織──エルゴスに招かれてしばらく。
    書物内での活動にも仲間たちとの交流にも慣れ、魔王ドラキュラの復活にまで至った事件も収束を迎えた。しばらくは書内に残る魔力の掃討が続くが魔導書そのものの対処にもはや緊急性はない。
    そんな中、有角は暇を見ては書物に目を通していた。悪魔城に少しでも関わる書物の所蔵数は他に類がなく、己が知らぬ歴史を学ぶ他、息抜きの雑学に至るまで読むものには事欠かない。創作として語られる伝承は読み物としても気楽で面白かった。
    吸血鬼伝説、その多様さと普遍さには感心する。
    時代が下るほどに吸血鬼の実在を知る者は減少の一途をたどった。だが存在を信じぬ筈のものが時代を超えて、人が抱く生と死の繋がりにより偶像を形作る。
    呼び名は様々でも設定はある程度似通っているそれは、半吸血鬼であるがゆえか有角自身には当てはまらないものも多いが、それほど荒唐無稽でもなく考えさせられるところもあった。

    (吸血鬼が鏡に映らないことも影がないことも、生ける死体であるため…か)
    鏡像や影は生ける死体が持たぬ魂の映し身であるとする考え方らしい。
    アルカードの姿は確かに鏡に映らない。が、影は普通にある。太陽の光でも蝋燭の光でも別段変化はない。
    十字架もニンニクも害にならないが流れる水は身体を苛むし、半月鎌以外の武器でも当たり前に傷を負う。というかそれが「吸血鬼を斬ることができる鋭利な武器」とされる話は初めて知った。命を刈る死神の武器であると同時に穂の刈入れに使うことから豊穣、生をも表すとは、人の発想は面白い。
    (父はどうだったのだろうな──元の肉体は失われて久しい)
    アルカードの身に起こる現象が他の吸血鬼にも起こりうるかは分からない。人であり吸血鬼である身体には、それぞれの特性が複雑に混じり合い作用しているように思える。
    どちらかの《完全》になりたいと思ったことはない。人の部分が死ねば世を脅かす魔物となってしまうし、有角の姿で力を抑えていようと腕利きの狩人たちにかかれば鏡など使わず正体を看破されてしまう。
    また、夜を選んで行動することは正しいが、別に朝日が弱点だからではなかった。人が寝静まるときに行動するから夜の一族と呼ばれ、城で生まれ育ったアルカードもそれに合わせただけだ。

    今ほど世界の夜が明るくなかったはるか昔、闇を飛び、ラルフの元を繰り返し訪っては情を交わした頃。
    その気になれば葉の陰に隠れ霧に姿を変えながら、昼に訪れることもできたのかもな…と戯れに思い出しかけ、いや、そういえば昼にそこにいた記憶もある…と有角は思い至る。
    (あれは…少し、参った気がするな)
    さすがに過ぎた時間が長すぎて詳細に覚えているとはいかないが、そうだ。褥を共にしたあと夜のうちに抜け出すアルカードを捕まえることを覚えてから、ラルフにはひどく困らされた。
    帰ると言っても帰されず、夜の戯れが朝まで続くこともしばしばだった。
    その理由は……『朝日で顔が見えるから』だったか。
    『そんなにいい顔してたなんて、燭台の火や月明かりじゃ見えなかった』と、寝台に付す人の体と髪を弄びながら甘ったるく囁いてきて…

    (……)
    若かったな、と思う。
    記憶ははるか彼方と思っていたが、不意にその場面を思い出してしまった有角は皺の寄った眉間に手を当て羞恥をこらえる。
    ラルフと過ごした時間は、人で言えばアルカードの青春のような感覚だろう。若気の至りと言ってもいい。初めて信頼できる者を得て夢中になり、記憶のラルフを必要以上に美化している恐れも否めない。
    ただそれが有角にとっての真実である以上は誤魔化さずにルーシーに伝えた。ラルフという男が皆にとって、そして自分にとってかけがえのない存在であったことは紛れもない事実だから。

    「アルカード」

    亡くした者は声から忘れていくというが、では再現された英雄ラルフの声は誰のものだというのか。いつでも有角の耳に馴染み、胸を懐かしさと温かみで満たす。
    「ラルフ、どうした」
    「お前こそ。ひとりで百面相しているなんて珍しいこともあるじゃないか」
    有角の前に立ち、ラルフは無遠慮に顔を眺める。人間離れと称されがちな美貌にしばしば刻まれる苦悩の皺は、今は目の前の男との記憶が原因だった。
    だが、召喚された今のラルフはそのことまで覚えているものなのだろうか?
    ……問いただす気にはとてもなれない。

    「大したことじゃない」
    そう答えて平静を装う。
    ラルフの隣で夜から朝を迎え、逆に朝日の中でアルカードの方が寝てしまうこともあったくらい。『このままここで暮らしてもいいぞ』などと、たちの悪い冗談で片付けられない言葉をアルカードは抗えぬ眠気の向こうで何度も聞いた。
    それが真に煩わしかったなら、抱え込まれた腕の中から霧にでもなんでも変身して逃げ出すべきだった。
    そして二度とラルフの元へ行かなければいい。体を重ねなければいい。
    そのどれもできなかった。
    会いたかった。情を交わして確かめたかった。満足げに笑う顔が好きで、愛おしいと呟いた唇を合わせ、腕を絡め合うのが好きだったのだ。
    (……確かに分かり辛いが、分かれば単純な奴なんだよな)
    百面相と言った有角の内心の動揺が、今また恐らく本人無意識のまま繰り広げられるのをラルフはつぶさに観察している。それもまた有角自身は頓着しないのだからたちが悪い…と思いながら。

    有角の思考がどうやら落ち着くのを待ち、ひそりとラルフは相手の耳にだけ届くよう用件を囁く。
    「今夜、時間は?」
    「………」
    誘いの言葉に、落ち着きかけていた有角の心臓は再び跳ねる。創作のように血の通わぬ死体であれば、心臓がこうもうるさく鳴ることも、頬が熱いと思うこともあるまい。
    「……窓を開けておけ」
    夜通し起きている仲間も多いため、室内を通るよりその方が人目には付きにくいのだ。いくら時代が変わっても『吸血鬼』のやることは変わらないなと思いつつ、せせらぎの清水も銀の十字架もそれを少しも妨げはしない。
    「あまり待たせるなよ。待ちくたびれて寝てしまうかもしれん」
    「それはそれで構わん。夜に眠る者の寝所に忍び込むなど、伝承のストリゴイらしい」
    ルーマニアにおける吸血鬼、蘇りし死体の総称。生者の血を吸い死した体をながらえるもの。ラルフは知らなかったようだが、雰囲気で察せられる。
    「アルカード」
    咎めるように、しまったと言いたげにラルフが呼ぶと、有角も心得た返答をする。
    「分かっている。俺は違うと言いたいのだろう。いつまでもお前は俺を化け物扱いはしないんだな」
    「したいはずがないだろ。知っているなら、からかうのも程々にしてくれ」
    魔王の息子に向かって、仲間たちの前で、出自は関係ない、お前はお前だと言い放つ男だ。
    まっすぐに有角の魂を射抜くラルフに、いつまでも救われていて、ずっとその瞳を奪っていたくなる。

    「…それと、あんまりそういう顔をするのはやめておけ。人に見せるのが勿体ない」
    「?」
    ラルフを見て多少緩んでいたことは認めるが、どんな表情だというのだろうか。訝しげに首を傾げる有角へ、ラルフは一歩近付いて忠告を続ける。

    「…そう甘い顔をされちゃ、朝まで離せないだろ。覚悟しておけよ。やっぱりお前の顔は、朝日の中で見たい」

    その言葉に思わず目を白黒させる間に、他の仲間たちが近付く気配を察したラルフはその場を離れて行った。

    (あれは………覚えている、という意味か?ただの偶然の一致…?)
    ラルフを追って問い詰めることはやはりできず、有角は再びひとり悶々と苦渋の表情をし続け、仲間たちに多少の心配をかけることになった。
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