えれ誕2023 今年もエレンくんのご実家からたくさん食材を頂いたので、それを使ってご馳走を作り、ミカサちゃんやアルミンくんなどお友達を呼んでお祝いをすることになっていたのだが……。
「ケーキは無理だけど、お料理は冷凍しとくから近いうちにミカサちゃん家に届けてあげてね」
「わかった」
ミカサちゃんが体調不良でお誕生日会を欠席することになってしまった。本人は「エレンの誕生日なのに当日にお祝いできないなんて、この世界は残酷……」と大袈裟なことを言っていたようだけど、アルミンくんの説得により無事安静にしていてくれることになった。アルミンくんもプレゼントを持って顔を出してくれたものの、ミカサちゃんの様子を見てくると言ってすぐに帰ってしまった。アルミンくんが来た時に後ろにいた、金髪の綺麗な女の子からもエレンくんへのプレゼントを受け取ったけど、あの子は誰だったんだろう。エレンくんに聞いてみたけど、「同級生だけど」としか返答は得られなかった。たぶんただの同級生ではなさそうだったけど、エレンくんはそういうのに鈍そうなのでこれ以上は今度ミカサちゃんに聞くことにする。
みんなで食べるはずの料理を小分けにし、二人分をお皿に盛ったので思いのほかテーブルが寂しくなってしまった。なのにケーキはワンホールまるまる残っているので、ちぐはぐなディナーである。生物なので後日持っていくわけにもいかない。明日の朝ごはんに残った分は独りで食べるつもりである。
「エレンくん、たまには実家帰ってあげなよ」
「ん、まあそのうち」
「カルラさんいつも心配してるよ」
「心配いらねえって伝えといてくれ」
「自分で連絡しなさい」
これぐらいの歳の子はみんなこんなものなんだろうか。わたしなんかはホームシックで今でも実家に帰りたくなるのに。エレンくんはチーズONチーズハンバーグ(チーズインハンバーグの上に更にチーズをのせたもの)を食べながら、「まあでもシチューだけは母さんのが食べたくなるんだよな」と呟いていた。エレンくんの好物はいろいろあれど、カルラさんの作るシチューは中でも特別なようなので、わたしはシチュー以外を作るようにしている。作ってもきっと敵わないし、カルラさんから秘伝のレシピを引き継ぐのはミカサちゃんであるべきなので。とエレンくんに話をしてもきっといまいちピンとこないのだろう。ミカサちゃんがんばれ。
「九時になったらカルラさんとビデオ通話の約束してるから、食べ終わったら先にお風呂入っちゃいなさい」
「え? オレテレビ見てえんだけど」
「……じゃあお風呂は寝る前でいいからカルラさんとの通話までね。わかった?」
「わかってるって」
「ほんと、かわいいなあ」
「はあ?」
エレンくんは本当にかわいい。これからもずっと君が生まれた日を祝わせてほしいと思った。だってみてくださいよ、こんなにかわいい。