EBIFLY_72
DONE春の終わりと新たな一歩 日が落ち、街灯が辺りを照らし始める黄昏時。夏と錯覚しそうなほどジリジリ肌を焼く昼の暑さから一転、びゅうと吹く風は肌寒さを感じさせる。
もうすぐ見頃を終える桜の木の下で、ひと足先にレジャーシートを敷いて人を待つ水無瀬は持ってきていたブランケットを広げた。
「君も使う?」
「…いらない」
ぶっきらぼうな返答だったが、小さく膝を抱える天青浄の横に一応一枚置き、少しの間敢えて体ごと視線を逸らす。
控えめな衣擦れの音が聞こえても、風に紛れて聞こえないふりを続けて数分後。陽の光が水平線の下に完全に隠れた頃、見覚えのある高身長の人影が二つ近づいてくるのが見えた。
「ええと、この辺りの筈だけど…」
「ふむ…おお!ミサちゃん殿、見つけたぞ!向こうの一番大きな木の近くだ!」
4188もうすぐ見頃を終える桜の木の下で、ひと足先にレジャーシートを敷いて人を待つ水無瀬は持ってきていたブランケットを広げた。
「君も使う?」
「…いらない」
ぶっきらぼうな返答だったが、小さく膝を抱える天青浄の横に一応一枚置き、少しの間敢えて体ごと視線を逸らす。
控えめな衣擦れの音が聞こえても、風に紛れて聞こえないふりを続けて数分後。陽の光が水平線の下に完全に隠れた頃、見覚えのある高身長の人影が二つ近づいてくるのが見えた。
「ええと、この辺りの筈だけど…」
「ふむ…おお!ミサちゃん殿、見つけたぞ!向こうの一番大きな木の近くだ!」
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DONElet's買い出し! 長袖では汗が滲むほど暑い昼が終わり、ゆっくりと気温が落ち着き始める夕暮れ時。赤く染まった夕暮れ時の空は、昼と違い視界に入りやすい分、余計に眩しさを感じさせた。
「もう夕暮れ…少し急ぎましょうか」
「そうですね」
大きな買い物袋を片手に、陽の光を避けるように日陰に沿って進む榊の後ろを篠宮がついていく。
開花宣言がなされて早数週間。その前に偶々顔を合わせた際、なんやかんやで集まって花見をしようと言う話にはなった。しかし参段が二人、壱段が一人、挙句所属も異なる面子は中々休みが合わず、桜が散るギリギリとなってしまった。
「すみません、俺のせいで気を遣わせてしまって」
「俺たちの休みが簡単に合うわけないでしょう。日程に関して何か言うなら、調整した水無瀬さんにしてください」
1609「もう夕暮れ…少し急ぎましょうか」
「そうですね」
大きな買い物袋を片手に、陽の光を避けるように日陰に沿って進む榊の後ろを篠宮がついていく。
開花宣言がなされて早数週間。その前に偶々顔を合わせた際、なんやかんやで集まって花見をしようと言う話にはなった。しかし参段が二人、壱段が一人、挙句所属も異なる面子は中々休みが合わず、桜が散るギリギリとなってしまった。
「すみません、俺のせいで気を遣わせてしまって」
「俺たちの休みが簡単に合うわけないでしょう。日程に関して何か言うなら、調整した水無瀬さんにしてください」
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DONE初めての先輩 最近天照に入った男は酷く扱いづらい。
何も珍しくないただの噂話を、酔仙は正直聞き流していた。実際会って話せば取っ掛かりの一つや二つ必ずあるはずでしょ、と思っていたからだ。
そんな酔仙の甘い考えは、対面して十分で打ち砕かれることとなる。
「んも〜〜!あの年頃なら奢りの二文字につられてくれてもいいじゃない」
篠宮蒼葉。イギリス人の祖父を持つクォーターで、金色の髪と翠眼が目を引く新人。事前に得られた情報は役に立ちそうになかったし、実際そうだった。
報連相がない、自己主張しない、無口で変わらない表情からは感情を察することすら難しい。その上で勝手に前に出るわ返事しないわ傷隠すわと問題児特有の行動の連発。何とか無事に任務を終えて、親睦を深めるために食事に誘ったら「結構です」の一言で切り捨てられ、正直かなり挫けた。
4343何も珍しくないただの噂話を、酔仙は正直聞き流していた。実際会って話せば取っ掛かりの一つや二つ必ずあるはずでしょ、と思っていたからだ。
そんな酔仙の甘い考えは、対面して十分で打ち砕かれることとなる。
「んも〜〜!あの年頃なら奢りの二文字につられてくれてもいいじゃない」
篠宮蒼葉。イギリス人の祖父を持つクォーターで、金色の髪と翠眼が目を引く新人。事前に得られた情報は役に立ちそうになかったし、実際そうだった。
報連相がない、自己主張しない、無口で変わらない表情からは感情を察することすら難しい。その上で勝手に前に出るわ返事しないわ傷隠すわと問題児特有の行動の連発。何とか無事に任務を終えて、親睦を深めるために食事に誘ったら「結構です」の一言で切り捨てられ、正直かなり挫けた。
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DONE厄介な体質 篠宮蒼葉の幼少期は、彼の両親にとっては苦々しい記録の山である。
初めはほんの僅かな違和感だった。ただの幼児特有のものだと思っていたものが、原因不明の微熱だと発覚したのは、蒼葉が小学生の頃。
ただ同年代の子どもよりもマイペースでのんびりとした性格だと思っていた両親は、それはもう蒼葉に謝り倒した。今まで気づいてやれずすまなかった。辛かっただろうに気付なくてごめんね。医師だった父親に至っては今にも辞表を出してしまいそうな勢いで、それを止めたのは他でもない蒼葉だった。
「おれ、たいちょうわるくなんてないけど」
熱でぼんやりとした顔で、それでもしっかりと告げられた言葉に両親は崩れ落ちた。蒼葉は気遣っているのではなく、心の底からそう思っているのだと。
1971初めはほんの僅かな違和感だった。ただの幼児特有のものだと思っていたものが、原因不明の微熱だと発覚したのは、蒼葉が小学生の頃。
ただ同年代の子どもよりもマイペースでのんびりとした性格だと思っていた両親は、それはもう蒼葉に謝り倒した。今まで気づいてやれずすまなかった。辛かっただろうに気付なくてごめんね。医師だった父親に至っては今にも辞表を出してしまいそうな勢いで、それを止めたのは他でもない蒼葉だった。
「おれ、たいちょうわるくなんてないけど」
熱でぼんやりとした顔で、それでもしっかりと告げられた言葉に両親は崩れ落ちた。蒼葉は気遣っているのではなく、心の底からそう思っているのだと。
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DONE四月一日酔仙という人間 四月一日酔仙は参段の刀遣いであり、主に人物関係の情報屋でもある。
人間関係や人物像は勿論、何時何をしていたのか。過去何を経験したのか。何を思って現在の立場にいるのか。対等な取引を行うことで、対象の人物に関しての情報を確実に提供すると謳っている。
対等な取引で依頼人が出せる手札は金銭に限らない。求める情報と同等の情報、同等の金銭的価値のある骨董品等、最悪タダ働きや今後の情報提供者としての活動でも可能だ。つまり、彼女が同等と思う何かを提供すればいい。
当然ながら情報入手経路も方法も企業秘密だが、彼女は何一つとして特別なことはしていない。ただ限りなく情報網が広いだけだ。
例えば仲間の刀遣いやそのバディ。天照内で暇を持て余す刀神達は勿論、受付職員や事務員、アルバイトの清掃員から上の役職にも彼女の目と耳は届く。
3730人間関係や人物像は勿論、何時何をしていたのか。過去何を経験したのか。何を思って現在の立場にいるのか。対等な取引を行うことで、対象の人物に関しての情報を確実に提供すると謳っている。
対等な取引で依頼人が出せる手札は金銭に限らない。求める情報と同等の情報、同等の金銭的価値のある骨董品等、最悪タダ働きや今後の情報提供者としての活動でも可能だ。つまり、彼女が同等と思う何かを提供すればいい。
当然ながら情報入手経路も方法も企業秘密だが、彼女は何一つとして特別なことはしていない。ただ限りなく情報網が広いだけだ。
例えば仲間の刀遣いやそのバディ。天照内で暇を持て余す刀神達は勿論、受付職員や事務員、アルバイトの清掃員から上の役職にも彼女の目と耳は届く。
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DONE人様には言えないこと 人気のない夜中の商店街の路地裏で複数の足音が響く。入り組んだ道を全て把握している男は減速することなく駆け回り、体力が削れ荒らぐ呼吸と風が肩を切る音だけが鼓膜を揺らす。
振り返る余裕はない。そんな余裕があれば一歩でも前に進まなければ殺される。現に背後から聞こえる足音は数分前から少しも離れず、呼吸が乱れている気配すらないのだ。夜間でも目立つ橙色は着実に距離を詰めてきている。
それでも男には勝算があった。後数メートル先を曲がった先で仲間が待っている。戦う術だってある。相手は一人なのだから、集団でかかれば勝てるはずだ、と。
希望を胸に道を曲がる。少し足がもつれて減速したが、まだ追いつかれるほどじゃない。もう目の前には仲間が居るから。
2162振り返る余裕はない。そんな余裕があれば一歩でも前に進まなければ殺される。現に背後から聞こえる足音は数分前から少しも離れず、呼吸が乱れている気配すらないのだ。夜間でも目立つ橙色は着実に距離を詰めてきている。
それでも男には勝算があった。後数メートル先を曲がった先で仲間が待っている。戦う術だってある。相手は一人なのだから、集団でかかれば勝てるはずだ、と。
希望を胸に道を曲がる。少し足がもつれて減速したが、まだ追いつかれるほどじゃない。もう目の前には仲間が居るから。
sasa3_m
TRAINING疾を潜入捜査に連れて行くと勝手に刀ごと隠れてくれるしスパイもしてくれるので流石隠密の刀って感じの動きになるのですけど、会話させると殺意が思ったより高い。描いてた時のBGMはこれ(テーマソングではない)
https://youtu.be/gD2mhJ3ByGQ 5
choco_lateshow
DONE刀神非公式イベント「歌唄いの夏白浜」まとめ。表紙・設定
1第一ターム(2P)
2第二ターム(10P)
3閑話休題(3P)
4第三以降(8P)
5最終ターム(4P)
6SS「刀遣いの潮目)(5P)
7おまけ(6P) 39
ran_1z
CAN’T MAKE冠雪漫画の補足ネタ、のつもりが詰んだ。桜の下の待ち人「此方に居たんですね、冠者様」
「お迎えにあがりましたよ」
満開の桜の木の下に佇む尋ね人を見つけて声をかける。
山は一面、桜色に覆われ正しく圧巻の景色で。
「……雪鶴、」
ゆっくりとこちらを振り向き私を視界にとらえて口を開いたのは、私が今1番に会いたかったお方。低く、落ち着いた声が私の名を呼ぶ。
「えぇ、冠者様。」
「ぬしは、何処に?」
「私ですか?…帰郷、と言うのでしょうか。」
私が生まれてすぐ奉納されたあの場所を、私が守れなかったあの場所を、故郷と呼んでも許されるのかは分からないけれど。自身の原点であるその地を訪れたのは……、今の私なら、故郷の冬を終わらせられるのではないかと思ったから。でも結局は、私の力など無くても故郷は冬を終え、既に春を迎える準備をしていた。故郷を雪崩が襲ったのはもう200年以上も前のことで、その場所はもう集落も何も無くなっていて、小さな祠と雪の下で春を待つ蕾達があるだけだった。勿論とうの昔に長すぎた冬を終え、幾度と春を迎えていることだって分かってた。それだけ、時間は経ちすぎてしまっていたから。
1937「お迎えにあがりましたよ」
満開の桜の木の下に佇む尋ね人を見つけて声をかける。
山は一面、桜色に覆われ正しく圧巻の景色で。
「……雪鶴、」
ゆっくりとこちらを振り向き私を視界にとらえて口を開いたのは、私が今1番に会いたかったお方。低く、落ち着いた声が私の名を呼ぶ。
「えぇ、冠者様。」
「ぬしは、何処に?」
「私ですか?…帰郷、と言うのでしょうか。」
私が生まれてすぐ奉納されたあの場所を、私が守れなかったあの場所を、故郷と呼んでも許されるのかは分からないけれど。自身の原点であるその地を訪れたのは……、今の私なら、故郷の冬を終わらせられるのではないかと思ったから。でも結局は、私の力など無くても故郷は冬を終え、既に春を迎える準備をしていた。故郷を雪崩が襲ったのはもう200年以上も前のことで、その場所はもう集落も何も無くなっていて、小さな祠と雪の下で春を待つ蕾達があるだけだった。勿論とうの昔に長すぎた冬を終え、幾度と春を迎えていることだって分かってた。それだけ、時間は経ちすぎてしまっていたから。
ran_1z
CAN’T MAKE冠者様と正宗おじ正宗おじの独白😉
#春霞に酔ふ_ギャラリー
敵の急所である核を突き、力で圧し斬る。
山の頂上に近づくにつれ増えてくるのは、ガンキンにササヤキ…、どうやら人を惑わし落とし込む類の妖魔が主体の様だが、今回の件とどう関係しているのか。現在地は鷹尾山山頂付近。無所属として他部署のサポートに回るのが今の任務ではあるが、正直に言うと今、一寸した私情で動いてる。次いでで任務してるって訳でもないんだが。それに私情と言っても俺自身の事情でもない。全ての元凶は…、
「萬鬼、どうだ。久しぶりの“本来の感覚”は」
この無表情でヒトを見下ろしながら無神経に話しかけてくる刀神、冠者。…とそれから、何回か臨時でバディ組んだだけで何故か我が物顔で俺ん家に入り浸る刀神、雪鶴。何故俺がこいつら2人に付き合ってやらなきゃならんのか納得いかねぇが、元はといえば雪鶴が居なくなったから共に探せ(とまでは言われてない)とこの無機質な大男に言われたのが始まり。本当に面倒臭ェ…。
1804山の頂上に近づくにつれ増えてくるのは、ガンキンにササヤキ…、どうやら人を惑わし落とし込む類の妖魔が主体の様だが、今回の件とどう関係しているのか。現在地は鷹尾山山頂付近。無所属として他部署のサポートに回るのが今の任務ではあるが、正直に言うと今、一寸した私情で動いてる。次いでで任務してるって訳でもないんだが。それに私情と言っても俺自身の事情でもない。全ての元凶は…、
「萬鬼、どうだ。久しぶりの“本来の感覚”は」
この無表情でヒトを見下ろしながら無神経に話しかけてくる刀神、冠者。…とそれから、何回か臨時でバディ組んだだけで何故か我が物顔で俺ん家に入り浸る刀神、雪鶴。何故俺がこいつら2人に付き合ってやらなきゃならんのか納得いかねぇが、元はといえば雪鶴が居なくなったから共に探せ(とまでは言われてない)とこの無機質な大男に言われたのが始まり。本当に面倒臭ェ…。