夏祭りの夜に(降志) 窓の外がやけに騒がしい。何事だろうと思ったが、窓辺まで行く気力も体力も彼女には残されていなかった。ふと隣の研究室の学生たちが浮き足立って近所の夏祭りの話をしていたことを思い出す。今日だったのかと思いつつ、宮野志保は床をはうようにして研究室の端にある棚までたどり着いた。下段の奥に鎮座する非常食のカップラーメンに手を伸ばす。そこで、はたと気付いた。肝心の湯を沸かしていない。ケトルは部屋の反対側にある。ゼリー飲料やブロックタイプの栄養補助食品はすでに食べ尽くしていた。志保は半ば諦めてソファーに横たわる。
「もう、食べなくてもいっか……」
「いいわけないだろ」
過度の疲労と栄養不足でもうろうとする頭を上げると、そこには降谷零が立っていた。
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