第23回「癇癪」「花束」「穴」 急転直下。天変地異。
足元から崩れて、奈落の底に落ちていく。
ある種覚悟めいたものを決めて、なすがまま身を任せた。
ついさっき、恋人と口論の果てに地の果てまで落ち込んだ。
だから、崖っぷちに立たされた気持ちになった…などという話しではない。
猗窩座の足下の地面が、忍者屋敷の罠のように、衝撃ニュースの映像で見た事のある地盤沈下映像のように、ぽっかりと口を開けて大きな穴が空いのだ。
「おっ」
踏み締めるはずの地面が沈み、体を支える事が出来なくなるとそのままバランスを崩し、崩落していく地面と共に落ちるしかなかった。
危ない、と思った次の瞬間には、体が落ちていくのを感じて、ほんの一秒にも満たない間に、危機的な状況であるにも関わらず頭の中は冷静に「こういうとき、意外と悲鳴って出ないものだな」と悠長に考えていた。
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