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    owl47etc

    @owl47etc

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    owl47etc

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    虎と七で朝ご飯を一緒に食べる話。
    誕生日記念なのに誕生日一切関係ない、丸一日、七が誰かと食事するだけ。

    6:00、虎杖と目覚ましの音に起こされる。時刻は早朝4時半。いつもであればまだ夢の中だ。
    少々早い起床に欠伸をしつつ、ぼんやりした頭でよろよろとベッドから身を起こす。
    今日の任務は午前と夕方の2件のみ。夕方の方は調査書を読む限りでは窓からの報告に不確定な内容が含まれており少々厄介な案件で、定時に上がれるかどうか微妙なところだ。
    顔を洗って無理矢理意識を覚醒させ、軽く身なりを整えて、寝巻きからスーツへと着替える。ジャケットはまだ羽織らない。
    袖のボタンを外して腕まくりをしながらキッチンに向かえば、タイミングよく炊飯器が音を立てた。蓋を開ければ水蒸気と、炊きたてのほんのり甘いお米の香りが立ち込め、釜の容量いっぱいの白く艶やかなご飯が顔を出す。
    しゃもじで十字に切り込みを入れ、外側からひっくり返すようにしてほぐし、水気を飛ばすようにして手早く混ぜる。3合のご飯ともなるとそれなりの量だが、ほぼ日常的に振り回している鉈に比べれば重さなど気にならない。
    全体をほぐし終わったら、ミトンをはめて炊飯器から釜を取り出し、テーブルにあらかじめ用意しておいた鍋敷きの上に乗せる。前日から仕込みをしていたタッパーと小鉢を冷蔵庫からいくつか取り出せば準備は完了。炊きたてのご飯はまだ熱を持っているのでしばし置いておくことにする。
    アルミのボウルに水を入れ、大皿と共にテーブルへと運ぶ。釜から立ち上る湯気はまだ止みそうにない。できれば炊きたてのうちに終えてしまいたいが、湯気の量からして相当熱がこもっているのが伺える。潔く諦め、分厚い紙製のお弁当パックにタッパーと小鉢の中身を移し替える。
    定番のお出汁の効いた卵焼き。冷めても美味しさを損なわぬように片栗粉を使い、衣に味をつけた唐揚げは多めに。彩りと不足しがちな栄養を補うためにプチトマト、人参を多めに入れたきんぴらゴボウ、ブロッコリー、汁気は控えめのほうれん草のソテー。一晩タレに漬け込んだ味付け卵は半分に切る。程よく味が染み込んでいて、1つ、味見と称して口にする。良い具合だ。
    用意していたおかずはお弁当パック2つに綺麗に収まった。釜の方は湯気がおさまりつつある。そろそろ頃合だろう。ボウルの水に1度手を浸し、釜の中のお米を手で掴み、両手で素早く握る。湯気は立たないが、手の中のお米は未だに熱を持っている。鉈を振り回すせいで厚くなった手の皮のおかげでそこまで熱さを感じないのが救いだ。
    一般的な男性に比べて掌が大きいと自覚しているので、完全に両の手で隠してしまえるほどの大きさになるように、コンビニ顔負けの綺麗な三角形ができあがる。後に軽く手に塩をまぶして軽く握れば、塩むすびの完成だ。
    残りのお米も同じように黙々と握っていく。塩、鮭フレーク、鰹節、梅干しにツナマヨ。見分けがつくようにおにぎりの具を三角のてっぺんに少しだけ埋め込んで盛り付けていく。
    釜の底が見えた頃には、白んだ空はすっかり日が昇り、雲一つない青が広がっていた。3合分のおにぎりもおかず同様お弁当パックに詰めていく。中の具材ごとに、取り出しやすいように多少の隙間を空けて並べる。海苔はパリッとした方が好みなので、長方形に切ったものをジップロックに入れて封をする。お弁当パックは全部で5つになってしまったが、まぁ、いいだろう。食べ盛りがいるのだから。





    「ナナミンおはよう!」
    「おはようございます。」

    ひっそりと結界で厳重に隠された住居の中。薄暗い部屋には似つかない、明快な声で出迎えられる。
    朝から元気な虎杖くんは、今日も修行をつけてもらうために身支度を整えたところらしい。服こそ着替えたものの、髪が所々跳ねている。指摘をしつつ、朝食のことを聞けば、山積みにされたカップラーメンの山から選ぼうとしていたという。
    やはり用意してきて正解だった。持ち込んだお弁当パックを取り出し、蓋を開けて机に並べ始めると、虎杖くんのお腹が大きな音を立てた。

    「え、これどうしたの!?」
    「作ってきました。」
    「ナナミンが!?マジで!!?」

    おにぎりと惣菜、そして私へと視線を移しながら、盛大に腹の虫を鳴らし続けている。

    「育ち盛りにそれはどうかと思うので。良ければですが……」
    「食べる!」

    瞬く間に椅子に座り、いただきます、と手を勢い余ってパン、と音が鳴るほど合わせたあと、鰹節が頂点にちょこんとのせられたおにぎりに手を伸ばす。

    「うっっっま!!」
    「そうですか。」

    いつの間に用意したのか、割り箸で惣菜を口に運びつつ、おにぎりも食べ進めていく。私もそろそろお腹が空いてきたので、塩むすびに手を伸ばす。塩むすびは海苔を巻かない方が好みだ。そのまま口に運べば、お米の甘さと塩気が丁度いい塩梅で食欲を刺激する。食べる方だと自覚していた私と、虎杖くんで半分ほど中身を食べた頃、虎杖くんが急に私を呼んだ。口に入っていたきんぴらを咀嚼し終えてから返事をする。

    「なんですか。」
    「久々に五条先生以外の誰かと飯食った。それもこんな美味いやつ。ありがと。」

    明るく見えたところで彼はまだ高校生。根明な虎杖くんとて、祖父を亡くし、そのまま高専に連れられ出来た友人とも別れ、独り寂しかったのだろう。理由は分かるがここに一人きりでいて、気分転換をしようにも難しいだろう。その辺、五条さんは得意ではないだろうし。

    「また今度、持ってきて食べましょう。」
    「やった!」

    次の約束を口にすれば、大口を開いて喜ぶ虎杖くんを見て、彼はまだ子供なのだと改めて実感する。大人として、虎杖くんにできることを。
    多ければお昼に、と思っていたが、おにぎりと惣菜は私と二人で綺麗に完食してしまった。

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