タイトルはまだない帰還中から豊前の機嫌が悪い。理由は判っている。今回の任務で僕が坊主に色仕掛けをしたからだ。本番まではしていないから僕は別に構わないのだけど、豊前は最後まで反対していた。ずっと口を聞いてくれていないから、相当怒っているのは伝わってくる。なんというか、びりびりとした怒り。
あの生臭坊主を始末するには、この方法が手っ取り早かったんだ。
部隊長である山姥切長義が主に報告に行くと言うので、僕はそのまま部屋に戻ることにした。部屋に戻る間も、豊前は黙ったままだ。ああ、これはしばらく口を聞いてくれないだろうなあ。仕方ないか……。
「シャツが血でべとべとだ。漂白しないと……」
部屋の入口でコートを脱いでいると、いきなり腕を掴まれたと思えば壁に押しつけられた。眼前には、燃えるような瞳をした豊前の顔。てっきり怒っているのかと思ったのだけど、どちらかと言えば悲しいような、切ない表情で。
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