身も恋も溶かすのはきみヒトリ「やあ、松井江。出陣お疲れ様」
「蜂須賀虎徹、ただいま。今日は君が昼当番なんだね」
「ああ。すぐに食べるかい?」
「そうしたいのだけど豊前が帰還途中から眠そうでね……。寝かせてきたらすぐ食べるよ」
「了解した。きみたちの分は取り分けておくね」
「ありがとう」
上手く誤魔化せただろうか。
豊前が眠いというのは、嘘だ。僕も豊前も戦闘の興奮がまだ体に燻っていて、興奮している。周りに悟られないよう平静を装っているが、それにも限界がある。なんとか部屋に辿り着くなり、豊前は噛み付くようなキスをしてきた。熱い、溶けそうだ。
唇が合わさっただけなのに、全身が沸騰したように熱くなっている。お互いのジャケットは畳の上に放り投げた。後で畳まないと皺になるなあ、なんてことを考える余裕はこの時まで。豊前はキスを続けながら、僕の胸を弄る。つねったり摘まんだり。裾から入り込んだ長い手が伸びてきて、胸や腹をまさぐる。うそれだけで思考は停まりそうなのに、豊前はキスを止めない。何度も何度も舌を絡め取られて、豊前の唾液が僕のと混ざる。
「ぶ、ぜ……っ、ぶ、ぜんっ」
もう腰と足に力が入らなくて、僕はその場にへたりと座り込んだ。どうやら腰が抜けてしまったらしい。
「まつい、でーじょう……」
「い、いまは見ないで……!!」
「なーんで?」
「は、恥ずかしい……から」
「これからもっと恥ずかしいコトすんのにな?」
「だ、だって……豊前の息だけでイッちゃいそうなんだ……」
恥ずかしくて、豊前の顔が見れない。両手で顔を覆ってはいるけれども、僕の顔が真っ赤なのはバレバレなんだろう。ふふふ、っと豊前の笑う声がした。
「……お望みなら、キスだけでイかせてやんんよ?」
「んんん」
完全に豊前のスイッチを入れてしまった。顔を朱に染めて獣を狙うような目――僕はこの目が好きだ。僕だけしか知らない、僕だけの豊前の色。
見惚れてしまう。オーケーの意味を込めて、僕は誘うように口を開けた。
「可愛いな」
豊前に可愛いと言われて喜ぶ自分がいる。恥ずかしいけど、豊前だから言われて嬉しいし、豊前だから僕の全てをさらけ出したいんだ。
「豊前、はやくっ」
「わーってるよ」
さっきとは違って動きはゆっくり、でも舌は確実に気持ちイイ箇所を攻めてくる。上顎をなぞられるのが快楽なのは、豊前のキスで初めて知った。鼻から抜ける豊前の匂いと相まってお腹に熱が溜まる。もっと、もっとだ。豊前のキスが欲しい。
キスの合間にゆっくりと押し倒された。こんな時でも、後頭部を手のひらで支えてくれるのだから、優しさに涙が出そう。
絡まっていた舌が離れていくと、次は首や胸、腹にキスの雨が降る。だめだ、全身が敏感になっているのにそこまでされたら、もう。
「っ、―――ん、あぁっッ!!」
「かーわいい。いいよ、好きなだけイきな。ほんと、可愛いよお前」
豊前は有言実行。ほんとにキスだけで僕をフラッシュさせてしまうのだから、この男はずるい。
「ね、豊前……もう、挿入れたい」
「まだ慣らしてねえだろ!?」
「僕が、我慢できない……なぁ、駄目かい?」
下履きを脱いでその場所に豊前の手を誘う。僕の奥まった箇所はさっきから収縮を繰り返して、早く熱いものが欲しいと訴えている。
「なあ、豊前……」
「あ~もう!!俺も結構余裕ねえから……思い切り抱いてやる」
言葉と同時に熱いものが宛がわれる。どうしようもなく嬉しい。まだ全部挿入っていないのに、僕の蜜は吹き出してしまった。
挿入が繰り返される度に豊前の和毛が当たる。それすらも快感で、お腹がきゅんと締まってしまう。
松井、動くぞ。その言葉の直後、奥を何度も突かれて声にならない声が漏れる。あ、だめ、でも気持ちいい。気持ちいいから、もっと奥に豊前のが欲しい。
「ふっ、うっ……。なぁ、松井、舐めて?」
僕の口に豊前の節立った指が近づいてきた。アイスを舐めるように長い指に舌を絡ませる。僕、これが好きだ。
「はっ…、エロッ…」
豊前のものが中でずくんと質量を増した。奥の奥まで侵入されることはあまりない。
「ァっ、やぁ!トントン、しない、っれぇ……!!」
「なんで?好きだろココ?」
「んんん……っ!」
奥と口の中を当時にぐりぐりと弄られて、背中がぞわぞわする。
「うっ…!くっ……。なぁ、松井……ナカをさ、こうされんのどう?」
「ひもち、いい……っ」
「それから?」
「あ、あひゅい……」
「はー…可愛い……とまんねえ」
「……ッッあ、ぶぜんっ!も、イ、イク…イっちゃアア……っ!」
「ん、俺もだな……一緒に果てようぜ……っ!」
熱も感覚も僕の中に残ってる。豊前の出したもので体も心も充満したならば、それはもう豊前と一体化したと言いたいくらいだ。
「ぶぜん、すき。ずっとすき」
「おれもだよ」
二人でこうやってくっついて、豊前に抱き締められて。
豊前が目の前で笑っていることが、なによりの幸せなんだ。