クリームソーダは恋の味?(わぁ。もうなくなっちゃった)
禰󠄀豆子は桃色のクリームソーダを前に目を丸くしていた。透明な器に脚があって中には桃色のソーダ。小さな泡がぷくぷくと上がっていき、ソーダの上にはあたたかみのある白色のアイスクリームがのっている。空気みたいに軽い豆腐でも半分は味噌汁に沈むのに、これは液体の上にぷかぷか浮いている。不思議だなぁと思いながらひとくち食べてみたのだ。
柄の長いスプーンがまだくちびるから離れていないのに、もう口の中には何もない。陽だまりみたいな色だったのにひんやりと冷たかった。まったりとした甘さの余韻だけ残して、まばたきしている間に消えてしまったアイスクリーム。飴みたいに口の中で溶けるとは聞いていたけれど、こんな一瞬で消えてしまうとは思っていなかった。そして、とても甘い。飴とも餡子とも違う。
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