Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    羽兎@hato_ht

    @hato_ht

    @hato_ht

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    羽兎@hato_ht

    ☆quiet follow

    似た者同士の恋俺の恋人、花垣武道についてはなんていったらいいだろうか。例えるにしてもそのことについては何も思い浮かばない。それは恋人としてどうかと思うが、現に俺の隣にはタケミチはいない。否、傍にはいるけれど、触れ合う訳でも話ができる訳でもない。隣に座れるのだって何十回かに一度だけ。必ずといってマイキーがその傍にいて俺の相手は二の次だ。それに俺以外の誰かの相手をしていることが多くてこれが恋人だと言えるのだろうかと思う日々が多かった。
    けれど、誰かがタケミチのことを人誑しと例えた言葉を聞いてからはその言葉に酷く納得してしまった自分がいた。それは俺もそうだから。自分よりも強い人間だろうが飛び込んで傷だらけになってもキラキラとその蒼い眼を輝かせるものだから誰もがその眼に心を奪われる。俺もその一人。タケミチに救われている。
    それは《黒龍》との諍いを場地以外に話してなかった筈なのに俺の所にタケミチはやってきた。それも一人で。誰よりも弱い癖に《黒龍》と諍いに飛び込んできた。否、後で場地もやって来て俺と二人で《黒龍》と喧嘩をすることにはなったが、それが俺とタケミチがつるむようになった始まりだといってもいいだろう。そこから友人として、弟分ができたと可愛がるといってもいい。場地と遊べない時はタケミチで遊んでやった。だから、巻き込む気はなかった。否、人数が少ない方が危険はないと考えた。それは俺がマイキーの誕生日プレゼントを考えてある店にあるバイクを贈ろうと場地に話をした後の矢先のことだった。タケミチからある男、マイキーの兄である真一郎君を紹介された。彼はバイク屋をやっていてその店が俺と場地が盗みに入ろうと思っていた店で俺がタケミチに救われたのはそれで二度目のことだった。
    困っている人間を見かけたら何も言わずに飛び込み、先の未来を見るかの如く救い続ける。それが俺から見たタケミチの印象。そして、そんなタケミチが俺の恋人である。
    けれど、最近は隣に座っているだけで俺のことを見ていない。今だってずっと千冬と話をするだけで相手をしてくれていない。
    ――だから。
    「タケミチ」
    「どうしたっスか、一虎く、んッ」
    タケミチを呼んだ時、リィンと鈴が鳴る。その音に返事を返すかのようにタケミチにキスを仕掛けてそこからどうするのが正解だろうかと俺は考えた。けれど、キスをしただけで顔をリンゴのように染め上げるのを見るといつになったら慣れてくれるのかと思ってしまう。何度もキスをしている筈なのに慣れないタケミチで遊びたくなる。もう一回、したらどんな顔をするんだろうかと考えただけで楽しい。けれど、タケミチはオレの胸を叩いた。
    「一虎、君。急には止めてください。まだ皆がいるっスからね」
    慎みをもってくださいとタケミチは告げる。人前でキスをしたのにその台詞とは笑いたくなる。現に、いうことはそうじゃねえとタケミチの隣にいた千冬の言葉が正解とオレだってそう思う。
    「なあ、タケミっちと一虎って付き合ってんの?」
    そういえば、だ。俺達が付き合っていることについて誰にも、否、タケミチの友達、アッ君達だけ知っている。同じ中学であるからこそ彼らは血の雨が降るんじゃないだろうかと、戦々恐々と騒いでいた気がするが、俺らが付き合っていようがいまいが他の奴らには関係のない話じゃないだろうかと、タケミチの体で俺が知らないとこなんてないに等しいしと思ったところで頭に衝撃が走った。
    「いってーな! 何すんだよ、場地!」
     そういや場地にだけは話していたわ。俺とタケミチが付き合うことをタケミチの幼馴染の一人である場地にだけは話していた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    asagi_bd

    DONEココ武メイン。イヌ武・寿武要素もある。
    支部とTwitterにて連載していた「ヒーローになんかさせない」の本編後の番外編。
    仲良し(執着)11BD。ちょっぴり不穏です。
    支部の本編→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16773536
    イベント後、数日したら支部にも載せます。
    【ココ武編】ヒーローになんかさせない番外編 黒龍の人間に九井一がどういう人間かを聞くと、誰もが一瞬口を閉ざす。それは口に出すのを憚られるような恐ろしさがあるからなどではない。皆どう答えたものかを悩み、それから言うだろう。
     ――どれが本当か分からない、と。

     11代目黒龍の幹部である、柴大寿、乾青宗、九井一。この三人の中では、九井は一番話しかけやすい人間ではある。

     大寿は武道が総長になってからは、まるで人が変わったように落ち着きのある人間になった。とはいえ、十代目総長だった時の記憶は鮮明に残っている。いつどうキレるか分からず、圧倒的な力がある存在であるという認識は変わらず、軽々しく話しかけられる相手ではない。
     乾はあからさまに武道とそれ以外とで態度が違う。話の内容が武道関連だとかぶりつきでくるものの、そうでない時はこちらから話しかけない限り口を開かなければ目も合わせない。武道以外ではバイクなんかは話が盛り上がることもあるが、まあ話しかけやすい相手かと言えば答えは否。
    8299

    羽兎@hato_ht

    DONE支部から移動二つ目。
    イザ武。
    首輪の先はベッドの中人が一人いなくなった所で、世界は淡々と流れていく。それはニュースになる事もないから、誰の記憶にも残る事はない。誰か訴えでもしない限り。それが武道だったとしても、彼を知る人間は、もう誰もいない。この世には。武道を残して死んでいった。

    「……ああ、今日、満月なんだ」
    武道の呟く声は、誰にも届かない。ここには誰もいないから。否、この部屋を知る人間は、誰もいない。たった一人を除いて。そのたった一人は武道を置いて出かけていった。仕事だと言って機嫌悪そうな顔で出ていったのは、数時間も前の事。否、どれ位の時が経ったのだろうかと、武道は部屋にあるたった一つの窓に手を伸ばすと、ジャラリと音が鳴った。武道が動く度にその音が部屋に響く。それこそ、白いシーツの海に映える事もなく、酷く重い。それこそ起き上がる事が億劫だと、寝返りをうつのも邪魔だと、音を鳴る代物―鎖を引っ張った。引っ張った所で取れる事はない。武道の首とベッドヘッドに繋がれているから。いつからそれが繋がれているのか武道には分からない。気が付いたらこの部屋にいた。それこそ、あの時、銃で撃たれた筈だった。死に際に直人の手を掴んで、彼をトリガーにして、タイムリープをする筈だった。筈だったのに、気が付けばここに居た。そして、首に鎖があった。そう、鎖。お前はイヌだと、この部屋の主が言ったから武道はそれに頷いた。今が昼なのか、夜なのか、分からないままに、ただ、飼い主の帰りを待つイヌのように、首輪をつけて部屋の出入り口を見るだけの生活になった。けれど、時々、頭が痛い。直人が、過去を変えてくれといったから。直人って、誰だっただろうか。頭がぼんやりとして、ドアを開くのを待つだけ、その人が俺の飼い主なんだと、誰かに教えられた様な気がした。
    2142