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    そのこ

    @banikawasonoko

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    文責 そのこ

    以下は公式ガイドラインに沿って表記しています。
    ⓒKonami Digital Entertainment

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    そのこ

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    シュウさんが仲間になったよ。シュウ、自分が生き残るための策としてハイランドを打ち破る策そのものは考えてたりしたんだろうか。

    #幻想水滸伝2
    theWaterMarginOfIllusion2

    2025-04-30


     まさか、都合よく群島諸国のコインが落ちているなど予想出来るはずもない。冷え切ったアップルの手にのった小さなコインが満月の明かりにきらきらと光っていた。まあ、もう腹を括るしかないのだろう。アップルはコインを見つけ、連れてきた少年はゲンカク老師の養子だという。
     利用出来る。ハイランドを打ち破る策ならずっと考えていた。ただ、シュウには実行するための手段がなかっただけの話だ。
     サウスウィンドウは降伏を選び、グランマイヤー市長は処刑された。サウスウィンドウの兵は大部分が市内に留め置かれ、動けるものなどごく少数。頭もいなければ、軍を指揮するものもない。
     そんな状態で何が出来るものか。
     だというのにあの子ときたら。久しぶりに顔を見せたと思ったら、まっすぐな目でシュウを戦争に誘った。それが何を意味しているのか、本当に分かっているのか。
     ビクトールの傭兵隊に加担したと聞いた段階で、無理にでも連れてくれば良かった。自分の指揮で人が死ぬ。マッシュでさえ、それを厭うて庵にこもった。目を逸らし、耳をふさいで逃げをうつ。それを責められる人間はそう多くもないだろう。
     それでも師は最後には立った。アップルも最後まで諦めはしないだろう。自分のつたない指揮で人が死ぬのを見続ける。最後にはすり減って壊れてしまうかもしれない。
     コインをすり替えたのは、逃げる口実を与えるためだったというのに、まったくあの娘を甘く見ていた。
     紹介状を書き終え、シュウは手を叩いた。家令が姿を現し、少し困ったように笑う。
    「まさか解雇されるとは思いませんでした」
    「お前たちなら次の館でもすぐに馴染むだろう」
     ハイランドへ反抗する以上、シュウの身内はすぐに手が回るだろう。そんなところに今まで仕えてくれた彼らを置いておくことは出来ない。が一つの理由。
     いくつかの紹介状の宛先を眺めた家令が、口ひげをねじった。
    「お友達の屋敷ばかりですな」
    「お前たちの行く末を任せられる奴らだが?」
     ラダトの行政を担う人間と、ラダトの財政を握る人間とは渡りをつけている。シュウが頼めば断ることはない者たちだ。ここがハイランドに飲まれるにせよ、そうはならないにせよ、彼らの動きを把握することはサウスウィンドウの半分の動きを把握するに等しい。
     ここに迎えた者たちはシュウ自ら選び抜いた精鋭だ。そう簡単に手放せるものか。
     シュウは戦争に行く。アップルに望まれ、自らも勝算を見出した。アップルにこれ以上の重荷を背負わせる事もない。
     ただ、今まで紡いだ交易商シュウのつながりを捨てる必要も、またないはずだった。
     彼は深く頭を下げる。
    「お任せを。旦那様は旦那様の成すべきことをなさいませ」
    「ああ」
     さほどの時間はない。ノースウィンドウの地図がそろそろ届く手はずだ。兵はいくら集まっているだろうか。その中に、きっとサウスウィンドウの市軍がいるはずだ。頭の中に策がぐるぐると回る。高揚感と薄い恐怖。これはおそらく、シュウが飼いならさなければならないものだ。
     家令たちはラダトのみならずサウスウィンドウ、トゥーリバー、マチルダに散るように手配した。あとはシュウが腹を括って行くだけだ。
     足になにか柔らかなものが触れた。にゃあと鳴いた猫を抱き上げ、家令を見やる。
    「こいつは連れて行く」
    「はい。では用意を」
     猫には苦労をかけるが、行くのが戦場だとしても自分が、この子が危うくなるような事態こそを避けるのが自分の役目なのは分かり切っていた。
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