∞「もう辞めましょうよ。もう望んでないんでしょう?」
黒いアイツが語りかけてくる。
いつものような、「自分が嫌だから」といった表情は見えない。
まるで、俺の事を心配しているような表情をしている。
「復讐は何も生まないって言うじゃないですか。気づいているんでしょう?こんなことは間違ってるって……」
俺の事を知っているかのような口振りで話しかけてくる。
黙れ、何も知らないくせに……
「ジェルベーラさんが殺されたって分かったら、みんな悲しみますよ……
ポルペッタさんも、チカさんも、ネーヴェちゃんも……」
"その"単語に身体が反応する。
何を気にしている……赤の他人に同情する必要は無い……
「……ジェルベーラさんが最近心配そうに声をかけてくるんです。
大丈夫?って。何か思い悩んでることは無い?……って。
私は何も悩んでいないので、絶対貴方のことだと思うんです。
それだけ他の人にも分かるほど元気ではない顔をしてるって事ですよ……!」
クローバーはカルドの手を取る。
「思い悩むほど迷っているなら、ネーヴェちゃんの為にも復讐は辞めてください!」
その手を勢いよく振り払う。
「アイツの味方は全員殺す。それならば思い悩む必要も無くなるな」
「──っな、なんでそんな事を思いつくんですか!
冷酷過ぎます!血も涙もなッ……!!」
クローバーの口を手で塞ぐ。
「俺はインポスターだ。いつだって最も残酷な判断をするのが普通なんだよ」
クローバーを軽く突き飛ばし、踵を返す。
「貴様のおかげで少し悩みが解決した。
感謝するぞ、クローバー」
そう言ってカルドは闇の中に消え、準備をしに向かった。
残されたクローバーは独り、頭を抱えた。
「──こんなはずじゃ……」