蟹鍋どすてぃちゃんぐつぐつ、と音を立てる大鍋に逸る気持ちを抑えられない。
蓋からしゅうしゅうと立ち上がる湯気からは醤油の匂いがしてくる。ビームはそれを嗅ぎながら目の前の親友へと尋ねた。
「なぁ、兄貴まだか?」
「もう少し待ってくれ」
瞳を煌めかせるビームに破顔するラーマ。
炬燵に入って、鍋を囲む。
遠い島国日本での囁かな夢がこうして叶って、ラーマは口角が上がらずにいられなかった。
シェアハウス探しは意外にも難航した。
互いの職場に近い事を第一条件として物件を探したものの、不動産屋は男二人のルームシェアに難色を示すばかりだ。
ラーマとビームはいつも怪訝そうに関係性を尋ねられた。
ビームが朗らかに兄貴だ、と答えるものだから、益々大家を困惑させてしまったのも、今となっては笑い話だ。
ラーマの方が歳上であるのは事実だが、兄弟と呼ぶにはまるで似ていない。それでもラーマはビームが兄貴と慕ってくれる事を咎めたりはしなかった。
仕事の関係でラーマがインドから遥々日本へやって来たのは二年前。
とあるIT企業のエンジニアとしてラーマはこの国の土を踏んだ。慣れない東方の地にラーマは四苦八苦した。
乾いた土の匂いとじりじりと照りつける太陽の国インドとは違って日本には春夏秋冬の四季がある。特に夏は湿度が高く汗の浮かんだシャツが肌に張り付く感触に根を上げそうになった。冬は冬で、ビルの谷間に吹く隙間風が肌に突き刺す程に寒い。
通勤ラッシュはインドよりはましだが、良くも悪くもおおらかなインドと違って日本は規律を重んじる者が多い。
その割には宗教観に対しては曖昧で、同僚達は戸惑うラーマに気を遣いインド料理屋へと連れて来てくれたが、馴染みの南インド料理の店は殆どなく、出されるのは北インドのレストランで提供される料理だ。厨房で働く人達は皆ネパール人、カレー自体も日本人好みの辛さ控えめな味付けばかりで、ラーマはとうとう自分で料理を作るようになった。
料理というものはやってみると案外楽しい事に気付いた。
レシピ通りに工程をやれば写真と同じものが出来上がるのはプログラミングに良く似ていた。慣れてくればスパイスの量を調節したり香辛料を増やしたり、材料に彩りを加えたり皿の色や形を料理に合わせたり、工夫次第な所が性に合っていた。
だが、そもそもスパイスを売っている店が遠かったり値段が高かったり、冷凍で作り置きしても同じ味のカレーに飽きてしまったりと、次第にラーマの食事の質は落ちていった。
ある日の夜ラーマはレトルトを湯煎しながらはたとこのままではいけないと考えた。ラーマはコンロの火を消して思い切って日本食を出す定食屋へと飛び込む事にした。
仕事帰りのサラリーマンで賑わうその店のカウンターへと通された。ラーマは箸を前に頭を抱えそうになったが、それでも周りの客の見よう見まねで箸を持った。
出された料理はシンプルで素朴な日本の定食だった。
白く艶のあるふっくらとしたご飯を恐る恐る口へ運ぶ。粘り気が強くもっちりとした食感は慣れるまでに時間が掛かったが、噛めば噛む程甘みが広がる事に気付くと箸が止まらなかった。塩味が欲しくなり味噌汁へと手を伸ばせば、鰹と昆布の出汁の風味と味噌が口の中にしっかりと広がる。汁気を吸った大根がじんわりと溶ける。その塩気を白飯でリセットすればまた塩分が欲しくなり、塩で焼いただけの銀鱈へと箸を伸ばす。程良く身が引き締まり脂の乗った鱈は肉厚で解れるような食感だ。再び白飯が欲しくなり、ご飯がどんどん進んでいく。南瓜の煮付けは煮崩れする事無く照りがあり、胡瓜の漬物はあっさりとしていてアチャールとは違った味わいだ。インドはその灼熱の気候で足し算のスパイス料理が基本だが、此処の料理は素材を生かした引き算の料理だ。気がつけばラーマは綺麗に料理を平らげていた。
その日からラーマはすっかり和食の虜になった。
仕事で疲れて自炊する気力のない日、胃が荒れて優しい味のものが欲しくなった時、旬の食材を使った料理が食べたい時、足繁く定食屋へ通うようになった。
凝り性のラーマはその内自分でも作るようになった。
食材は入手しやすいし値段も手頃、何よりも焼くか揚げるかしかないインド料理とは違って蒸したり煮込んだりというものもありある程度保存が利くのも魅力的だった。
そんなある日の事、いつもの定食屋へと入るとカウンターテーブルの向かい側に座る青年の姿がやけに気になった。
背丈は自分と同じ位だろうか。年齢も近いように感じる。
褐色肌に、たどたどしい日本語。
彼は箸を持つのは初めてなのだろうか、日本人からすれば変わった持ち方をしていた。
ラーマは見かねて、店員に彼の隣へ座ってもいいだろうかと声を掛けた。
青年は目の前に出された定食に目を瞬かせている。
「白いご飯は初めてか?こうやって箸で掬って食べるんだ」
ラーマが箸を持ち上げて食べる仕草をしながら声を掛けると、青年はやっとラーマに気付いたらしく、アリガトウゴザイマス、と片言で返した。
「そんなに畏まらくていい。私はラーマ。インドから日本に来た。君もそうなのか?」
「えっ?そうなのか?……あっ!俺はビーム。日本食に挑戦したくてこの店に入ったんだけど、誰も箸の使い方を教えてくれなくて困ってたんだ」
そう答えるビームに、ラーマは一緒に食事をしないかとつい誘ってしまった。久々に会う同郷に気持ちが舞い上がってしまったせいもあるのかも知れない。ビームに対して放っておけない、構ってあげたい、と思ってしまったからなのかも知れない。ビームは時折箸で料理を突き刺しそうになりながらも和食に舌鼓を打っていた。美味しそうに目を細める彼の姿にラーマもつられて空腹になり、運ばれた定食を味わいながらビームと会話を交わした。
ビームは、外国人労働者としてバイクの製造工場で働いていた。工場には他にも外国人労働者枠として勤務している者もいて、今は寮に住んでいるのだと語った。だが同僚達はほぼ中国人やネパール人ばかりで、疎外感からいずれは一人暮らしをしたいのだとビームは打ち明けた。
ラーマはそんなビームにかつての自分を重ねた。遠い地で知り合いもおらず、言葉も分からない日々は孤独感に苛まれた。似た境遇同士だからこそ、つい食事を終えた後も会話が盛り上がってしまった。
好きな音楽、好きな映画。贔屓のクリケットチームに、趣味のトレーニングの話。ビームとは驚く程気が合った。まるで長年共に過ごしてきた間柄のように。店員から店内が混んできたのでお勘定を、と声を掛けられた頃にはすっかりお茶が冷めてしまっていた。
「なぁ、また会えないか?」
ビームの申し出にラーマは勿論、と名刺の裏に個人的な連絡先を書いた。
「あっ!すまねぇ、俺――名刺とか持ってなくて」
「……それなら私の掌に書いてくれ。大丈夫、油性だからそう簡単に消えない」
「流石兄貴だ!」
兄貴、と自然と呼ばれてラーマはこそばゆさと擽ったさを覚えた。だが、悪い気はしない。
少し小ぶりな掌でラーマの手を取って手の甲へ懸命に書く様さは微笑ましくもあった。
「また此処で一緒に食べよう」
そう約束して帰路に着くまで、ラーマは上がる口角を抑えきれなかった。誰かとあんなに話したのはいつぶりだろう。
同僚とはビジネス上の付き合いしかないし、オフの休日も独りで過ごしてばかりだった。
ビームからメッセージアプリで次いつあの店に行くんだ?と問われ、ラーマはすぐにでもとキーボードを打とうとして、そっと文字を削除した。ビームともっと親しくなりたいのは本心だが、すぐに距離感を詰めるのは躊躇いがあった。
日本で長く過ごす内に日本人の感覚が染み付いてしまったのかもな、とラーマは週末なら大丈夫だと返信した。
それからは、時折ビームと定食屋で他愛のない話をしながら食事をするのがラーマの楽しみになった。それでも、あまり長居が出来なくてもどかしい気持ちを抱いていた。
ラーマは幾度目かの相伴の時、思い切ってビームへ提案した。
「君さえ良ければ私の家で食べないか?」
「えっ……!いいのか?」
くりくりとした瞳が嬉しそうに輝く。
ビームは喜怒哀楽がわかりやすい。特にその人懐っこい笑顔を見ていると、もっとその表情を見ていたいと考えてしまう。
「これでも料理を勉強したんだ。ひとりだと作った料理を余らせてしまうし、特に礼とかは必要ないし、」
言い訳がましい誘い方をしている自覚はあった。
だがビームはあっさりと兄貴の作る料理が食べたいと眩しいまでの笑みで快諾した。
ラーマは自分の為ではなくビームの為に、腕によりをかけて和食で持て成す事にした。
ビームはすっかり箸の使い方も上達しラーマの手料理を美味しそうに完食してくれた。
「なぁ兄貴、せめてもの礼として片付けと皿洗いぐれぇは俺にやらせてくれよ」
「ああ、任せるよビーム」
久々に誰かがいる部屋にラーマは心地良さを感じていた。
ビームは手慣れたようにあっという間にキッチンのテーブルの上も台所のシンクも綺麗にしてしまった。
一番面倒な作業を進んでしてくれるビームの優しさにラーマはこのまま帰らせるのも忍びないと思ってしまった。
「ビーム、今日泊まっていかないか?」
考えもなしについそう口に出してしまった。
内心しまったと呟いて冗談だと誤魔化そうとしたラーマに、ビームは兄貴が良ければいいぞ、と安堵の笑みを向けてきた。
「ルームメイトが最近恋人が出来て相部屋なのに恋人を呼んで長い事過ごすんだ。意地悪だよな」
苦笑を浮かべながらそう告白して小さく肩を竦めるビームに、ラーマは急いでベッドの上に積読していた本を棚に戻した。
「狭くないか?寒くないか?ほら、もっとこっちに」
遠慮がちに身を捩るビームにラーマは肩を軽く叩いた。
「兄貴は俺を甘やかすのが上手いなぁ」
とろりとした瞳でまろい頬をひたりとラーマの胸元へビームが寄せる。そのまますやすやと寝息を立てるビームにラーマもつられて睡魔に襲われ、人肌の温もりを感じながらビームを抱き締めたまま眠った。
ビームは泊めてくれた礼もそこそこにそのまま仕事へ行ってしまった。ラーマもまた職場へと向かう中、あれは夢だったのだろうかとふわふわとした心地だった。
だが、ビームからメッセージアプリでまた泊まりに行ってもいいか、という言葉を受け取った時、今更現実感が湧いてきてラーマは内から沸き立つ歓喜を抑えきれなかった。
――その日から、ビームはラーマの家に訪れるようになった。
その日食べたい料理の食材と共に。
ラーマは食費が浮く事とビームと寝食を共に出来るのがいつしか楽しみになっていった。暑い夏もビームの汗の匂いを嗅ぎながら寝床に潜り込んだし、寒い冬はビームとくっついて眠るのが癒しだった。
そんな日々が続いたある日、ルームシェアをしないかとラーマがビームへ持ち掛けた。
今の住処を気に入ってない訳では無いが、ビームと同衾をする内に、こんな不便な所で半分同居のような形で暮らすのはきっと不便だろうと感じたのだ。
そして、ようやく引っ越しが落ち着いた週末。
ビームはスーパーの袋を引っ提げて、ラーマへ入るぞ~と呼び掛けてくる。
「もう私だけの部屋じゃないんだ、そこは『ただいま』だろ?」
「あっ、そうか。ただいま」
少し照れ臭そうにはにかむビームのふわふわの癖毛をラーマは撫でる。
「おかえり」
積み上がった段ボールだらけだった華のなかった無機質な部屋にはビームの為のコップや歯ブラシ、マグカップや食器が増えた。
相変わらず片付けの苦手なラーマの為にビームが大きな本棚を家具屋から買って取り付けてくれたが、結局仕舞ってあるのは殆どあまり読まない本で、ラーマのデスク周りには本のタワーが出来上がっている。
一方のビームのスペースはシンプルだった。
お気に入りだと語るゴンドアートを壁に飾り、着替えは全てウォークインクローゼット。テーブルにはラーマと同じようにパソコンがあるが、キャスケットにバイクの雑誌が数冊に、お気に入りのクラシックバイクのミニチュアがあるだけだ。それでもビームは少し歩けば自然が残る公園があるこの部屋を気に入ってくれた。日当たりもいいし、近くに商店街もある。近所の人達はラーマとビームを同性パートナーシップという前提で付き合ってくれるが、ラーマは特に訂正したりはしなかった。それだけビームは家族のような存在だからだ。一緒に居るのが当たり前だし、こんなにも波長が合う相手なのだから。
「これは鍋の食材か?」
ラーマは袋の中の豪勢な食材に目を丸くした。
「正解だ!流石兄貴だな!」
ビームは嬉しそうに笑う。流石も何も、葱、豆腐、白菜、えのき茸、それに大きな蟹が一盃入っているのだ。
「どうせなら、炬燵で食べよう。カセットコンロもあるし」
「やった!炬燵で鍋、いつかやってみたかったんだ」
並んでキッチンに立ち上手く分担しながら材料を切っていく。元々器用なビームは包丁の使い方をすぐに覚えた。
台所へ入るのをどこか遠慮していた頃と違って今では隣で鼻歌まで歌っているのだから月日が経つのは早い。
鍋をカセットコンロの上に置いて鍋のつゆをたっぷりと並々と注ぐ。
鍋というのはシンプルな料理だ。材料を入れてただひたすら煮込む。ただし順番が大事だ。野菜は煮込み過ぎるとくたくたになるし、かといって遅く入れても味が染み込まない。
その内煮立つ音がしてきて、ビームはそわそわと落ち着かない様子だった。ラーマはもう少し待ってくれと窘めたが、空腹が最大の調味料とは言えやはり耐え難いものだ。
「ビーム、君が蓋を開けてくれ」
「……俺が?」
声を弾ませるビームに、彼の少年のような一面に微笑ましくなる。
「蟹の出汁が丁度染み出してきた頃だからな」
ビームは頷き返すと、鍋つかみと共に蓋をゆっくり開けた。
程良く煮込まれた野菜とえのき茸、そして赤く艷めく蟹が美しく中央に鎮座している。
ラーマは肺いっぱいに鍋の匂いを嗅いだ。
「なぁ、蟹ってどう食えばいいんだ?」
「専用の鋏を使うんだ。この長い方でくり抜くように中身を押し出す」
ラーマはビームの分もひとつだけ分ける事にした。自分でもやりたいとビームが言うのを見越して、だ。
「俺もやってみる!」
ビームは火傷に注意しつつ悪戦苦闘しながら蟹の身をつるりと殻を剥いて取り出した。
そのまま口へと運ぶと、言葉にならない唸り声を上げる。
「う~んまい!蟹って馴染みなかったけど高い理由も分かるなーこれ!」
ラーマも鍋を掬って食べ始める。程良く味の染みた白菜、歯応えを残した葱、柔らかな豆腐、そして蟹の風味に暫し余韻に浸っていた。
確かに美味しい。口の中で解けるようにほぐれていく蟹は噛めば噛む程旨みが増す。
「ビーム、蟹味噌はご存知か?」
「カニミソ?」
ラーマは鍋に残った蟹のお頭を丁寧に割る。見た目こそグロテスクだが、中の蟹味噌を鍋に溶かすと一気に味噌味の鍋に変化した。
「醤油のつゆの時と違ってこれも美味い!」
「ふふっ、楽しみはまだまだこれからだぞ?」
ラーマは蟹を取り出し残った鍋にご飯を入れてみせた。
「こ、これは!雑炊ってやつか!?」
「そうだ。ねこまんまに似てるが、粥の方が近いだろうか」
ラーマは茶碗へ蟹雑炊を入れるとビームへと差し出した。
「こんな豪華な雑炊なんて毎日食いたくなっちまうよ!あっ、そうだ!」
ビームはまだ熱々の雑炊の中へ割って掻き混ぜた卵を入れた。
「味がまろやかになって良さそうだな!」
「だろ?」
ラーマも真似してビームが半分残してくれた溶き卵を回し入れる。普通の雑炊と違って卵が優しい味わいにしてくれる。
確かにこの雑炊は毎日食べたい気持ちも頷ける。だが高価な蟹をビームに毎日買って貰う訳にもいかない。
たまの贅沢だからこそ蟹鍋は格別に美味しいのだ。
「は~、食った食った。兄貴ー、片付けるぞ」
腹を撫でさするビームにラーマも満ち足りた気持ちになる。
やはりビームと食べる時間は心地がいい。
「う、む、しかしだな、炬燵の抗い難い誘惑が私を離してくれないんだ」
わざとらしく渋ってみせると。
「も~!片付けが終わったらまた炬燵であったまればいいだろ?ほら兄貴、どいたどいた!」
こういう所はしっかり者のビームに育ちの違いを感じる。
だがラーマは特にビームの出自に関しては言及しなかった。
後妻の子だからあまり両親が構ってくれなかったとぽつりと漏らした事もあったが、ビールを飲んで酔っていた事もありラーマはその吐露を聞かなかった事にした。
ラーマは女系家族の末っ子だった。姉達は美しいが気が強くいつの間に彼氏に仕立てられた回数は数しれず。
独立してからは姉からも干渉されなくなったが、ラーマの事を分かった気でいる両親は日本人の嫁は見付かったのか、と余計な探りを入れてくる。ラーマは面倒になり次第に両親からの電話を着信拒否するようになった。だが疎遠になった事は後悔していない。きっとビームの事を紹介した所で両親は受け入れてはくれないだろうから。
「意地悪だな、君は」
コタツムリ作戦が失敗したラーマは渋々シンクへと向かった。冬の洗い物は手が荒れるとゴム手袋をしててきぱきと片付けていくビームに手伝う事なんてないんじゃないかと感じたが、食器用乾燥機に入れるのがすっかりラーマの役割になってしまった以上さぼるわけにはいかない。
「ったく、兄貴は俺と炬燵どっちが大事なんだ?」
「それは君に決まってるだろう」
ラーマは本心を漏らす。寒さも孤独感もビームが居なければ耐えられないに違いない。
「あー、なんだ。それ、俺以外には言わねぇ方がいいぞ」
「言うものか」
そんなやり取りをしながらようやく片付けを終える。
冷たいフローリングを裸足でぺたぺたと歩いて、ラーマは炬燵へと素早く潜り込んだ。足の裏をビームが足の指で擽ってくる。
「おいこらビーム!」
「やっぱり炬燵の方が愛おしいんじゃねぇか!炬燵に浮気した罰だ!」
ビームはラーマと同じ位冷たい足の指でラーマの足の裏をつんつんと突っついてきた。擽ったさに堪えきれずラーマが吹き出せばビームもつられて笑い出す。
これからは、こんな暖かい記憶を積み重ねていければいい。
ラーマは身悶えるビームを眺めながら心の中で呟いた。