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    aoixxxstone

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    aoixxxstone

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    空の星になれない(1)
    千ゲ/復興後/名前のあるオリキャラ/男性妊娠/ハピエンですが道半ば/息をするように巻き込まれる羽京ちゃん

    #千ゲ
    1000Sheets

    それが分かったとき、ああやっぱり神様は俺のことを見逃してはくれなかった、と我知らず笑みがこぼれた。



     石神千空、二十九歳。考えるまでもなく、この世界で一番有名な科学者で、突然の全人類石化という大災厄から七十億人と文明を復興した地球人類の救世主だ。──その評を聞けば本人は『俺はただの科学オタクだ』などと笑うだろうけれど。
     俺は、そんな千空ちゃんの傍にいることを許してもらった、幸運な一般人。マジックの腕とメンタリズムにはそれなりの自負があるけど、 それが人類のためにどれくらい役に立ったのかってなると、ね。優しい科学王国のみんなはフォローしてくれるだろうけど、俺なんかいなくても千空ちゃんは絶対にやり遂げた。微力、なんて言うのも烏滸がましいほどだ。
     俺がしてあげられたのは、ただ科学が大好きなだけの男の子が背負うことになってしまったものから、ほんの少し、煩わしい埃を払うことだけ。だって千空ちゃんは本当に『ただの科学オタク』だったんだもの。──ただの、って言うには、愛が深すぎたけど。科学のために、何度も命を削って、体を張って、背負わなくてもいいものまで背負い込んでしまうくらい。
     俺は、千空ちゃんに幸せになって欲しかった。例えばそれが人類七十億人を見捨てるようなロードマップだったとしても、千空ちゃんが幸せになるなら幾らだってそれを『正義』にしてあげただろう。──優しくて、賢くて、人の生み出した科学とその進歩を愛する千空ちゃんは、どんなに苦しくてもそんな道選ばないって分かっていたけど。分かっていたから、尚更に。
     だから俺にとって『今』は本当に幸せだった。
     千空ちゃんは『ただの科学オタク』ではなく、本物の、世界に認められた科学者になった。復興した大学で博士号を取得して、大学教授として教鞭を振るいながら、自分の研究所で日々大好きな科学に邁進してる。クロムちゃんの存在がよかったのかな、自分の持つ知識や経験を教えることにも、新しい楽しみを見い出せてるみたい。『若いヤツらは発想が違えわ、面白え!』って、自分もまだ三十前のくせにそんなことを言う千空ちゃんの笑顔が俺は大好きだった。
     そんな千空ちゃんが、一番面白がって構い倒しているのが、万理ちゃん。石神万理、九歳。千空ちゃんが四年前に養子にした、石化災厄孤児の男の子だ。
     万理ちゃんは、とっても賢くて、好奇心旺盛で、すごく可愛い。ちっちゃい千空ちゃん、って感じ。もちろん千空ちゃんと万理ちゃんに血の繋がりはないので、二人の容姿はあまり似ていない。万理ちゃんはさらさらの黒髪に茶色の濃い瞳、涼しげな目元が印象的な子だ。でも、科学に目を輝かせてるときの表情は、本当に千空ちゃんとそっくりなんだよね。口癖の『唆るぜ』も、千空ちゃん譲り。いつだったか、百夜さんもそんな感じだったのかって大樹ちゃんに尋ねたことがあるけど、二人はまた全然違ったみたい。親子って不思議だね。俺だって万理ちゃんにマジックをいくつも見せたのに、タネを見破ることばかり夢中になって、ちっとも演ずる方には興味をもってくれなかった。
     そう、万理ちゃんは俺にとっても大事な息子で、大切な家族だ。俺は千空ちゃんのパートナーとして、一緒に万理ちゃんを家族に迎えて、二人で育ててきた。万理ちゃんが小学生になるまでは、千空ちゃんと三人で川の字に布団を敷いて寝てたんだ。
     同性同士の俺と千空ちゃんには、万理ちゃんはただ一人の子供だった。──だった、のだ。



     医者の言葉は、まるで心臓に刃物を突き立てたような、冷たい心地がした。



     むかしむかし、三千七百年よりもっと昔。あるところに一人の男の子がいました。
     男の子には、お父さんもお母さんもいません。生まれたときからずっとです。おうちがない男の子は、シセツというところでたくさんの子供たちと一緒に暮らしていました。
     男の子の髪は不思議な色をしていて、半分が黒で半分が白色でした。大人たちはそれを気味悪がり、子供たちは変だと笑いました。
     男の子は、いつもひとりぼっちでした。
     そんなある日、男の子のところへ大人の男の人と女の人がやってきました。優しそうな二人は、男の子にこう言いました。
    『私たちには子供がいないの。幻くん、私たちの子供になってくれないかしら』
     男の子の、初めての家族でした。



     泣き腫らした俺の顔を見て、羽京ちゃんは何を思ったんだろう。きっと色んなことを考えたはずなのに、羽京ちゃんは何も言わずに俺を部屋へ上げて、黙って温かなお茶を淹れてくれた。
     金木犀の優しい香りがする。村で──石神村で出されていたお茶に、それはよく似ていた。
    「羽京ちゃん……おれ、俺ね、」
     子供がいるの。俺のお腹に、千空ちゃんとの子供が。
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    aoixxxstone

    DOODLE花に嵐(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20351543)のちょぎくにが、南泉にご迷惑をおかけする話、の始まり。終わらなかった……
    時系列的には、花に嵐本編→本作→花に嵐のr18部分。
    にゃんくにっぽい雰囲気に見えるところがあるかもですが、二振りの間には一切そういう感情はありません。終始ちょぎくにです。
    猫の手を借りる夜 (1)「南泉一文字……その、折り入って頼みたいことがあるんだが」
     そう言って夜半、部屋を訪ねてきたのは、普段あまり話すことのない相手だった。
     山姥切国広。本作長義以下五十八字略こと山姥切長義の写しであるこいつは、誰かさんみたいにひねくれた性格はしていないが、別方向に難儀な性質を抱えていて──まあ、はっきり言って社交的な性格とは程遠い。修行から戻ってからは『写し』という自身の出自に由来する卑屈さはなくなったようだが、口下手なところは相変わらずだ。その上、そこに『自分は主のための傑作である』という自負が重なって、却って面倒を起こしてしまうこともある。
     その最たるもんが、本歌山姥切との確執だろう。どっちが悪いとか、どっちが正しいとかいう話じゃない。山姥切には山姥切の、国広には国広の考えも想いもある。それだけの話──なのだが、したたかに酔った山姥切から聞かされた、二振りの会話の下手くそさときたら、これがとんでもなかった。山姥切のやつは端から喧嘩腰。対する国広は言葉選びを間違いまくり。拗れるのも無理はない、という気持ちと、何でここまで拗れてんだ、の気持ちで、聞いてるこっちの頭が痛くなったくらいだ。
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    aoixxxstone

    DOODLE千→ゲ♀/先天にょた/幼なじみ
    惚れた女と一つ屋根の下で暮らすことになった俺の天国と地獄についての記録と考察「千空ちゃん、お待〜! えへへ、今日からお世話になりまーす! シクヨロ〜♪」
    「……おー、自分ちだと思って好きに使え」
     言いながら、千空は不自然にならない程度に、そっと視線を下げた。淡い藤色のワンピース。トップスの部分はレースで大人っぽく、ウエストラインから膝丈のスカートはシフォンを重ねたデザインで、幻のスタイルの良さが際立つようだった。──少しばかり胸元が窮屈そうに見えることに、言葉にならない気まずさを覚えて、千空はふいと顔を逸らす。
     二人が出会ったのは千空が十歳、幻が十三歳のときだ。紺の襟に白い三本ラインのセーラー服とプリーツスカート。或いは進学した先の、胸ポケットにワンポイントの刺繍が入ったブラウスと山吹色のリボン、ボックスプリーツのスカート。千空の大脳新皮質にあるのは、登下校時に見かけた制服姿の幻ばかりだ。私服姿を目にしたのは、偶然に都内の図書館で行き会った一度きり。普段のコンタクトレンズではなく黒縁の眼鏡をかけた幻は、シンプルな黒のニットセーターに、スキニーのジーンズを履いていた。いつもは見ることのないウエストから腰、細い脚へとつづく綺麗な曲線に、千空は跳ね回る心臓を抑えるのに必死で、ほとんど顔を上げられなかった。
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