地獄も妖怪横丁も、何もかもから逃げ出して数十年。毎日見えない何かに怯えながら、息を潜め、誰にも関わらずに済むようにと、宛もなくただ日本中を彷徨い歩いた。
私が姿を消した後、何度か鬼太郎さん達と出くわすことはあったけれど、「帰っておいで」と差し伸べられた手を私は振り払い続けた。
自分のせいで大切な人たちが傷付くくらいなら、独りの方がずっと楽だった。
何の目的も野心もない無感動な日々を無駄に繰り返すくらいなら、いっそ夜霧の元へ行ってしまいたい。
『お前は生きろ』
たった一言の呪いで私は今も生き長らえている。
ほんの気まぐれだった。
私が居なくなった後も、きっと彼らは私が戻る日を待っている。
私の部屋はどうなっているだろうか。
1922