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    ロマ🗝

    @a_deviant_hell

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    ロマ🗝

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    遅刻したけど葉五のバレンタイン。
    甘くないです🤣

    今日は二月十四日、バレンタインデー。
    毎年、この日は地上に帰る許可を貰ってねこ娘さんと一緒にお菓子を作る。
    大量に作って地獄に持ち帰り、十三王にプレゼントするのが毎年の恒例だ。
    そして、五官王様と付き合い始めた年からは、十三王に渡すものとは別のお菓子を用意して、本命チョコとして五官王様に贈るようになった。
    今は、皆さんとプチお茶会を楽しんだ後、五官王様の部屋で二人、バレンタインの二次会中。
    お菓子作りでの出来事やバレンタインに全く関係のない話をして、ついさっき食べたばかりのパウンドケーキを消化する。

    「必要な材料の計算を間違ってしまっていて、大慌てで買い出しに行きました」

    「お前はたまにそそっかしいからな」

    「アマビエさんが『ロシアンルーレットにした方が面白いよ!』なんて言ってデスソースを入れようとしたり、ねずみ男さんがつまみ食いをしようとしてねこ娘さんに成敗されたり、とっても楽しかったです!」

    「それは楽しかった話なのか?」

    五官王様は普段からあまり口数は多くないけれど、あれもこれもと思いつくままに話す私の言葉を全部ちゃんと聞いてくれる。
    いつものように話が逸れて広がって、気が付けば一時間も話し込んでいた。

    「そろそろ持って来ますね」

    「ああ」

    冷蔵庫の中に入れて置いた箱を取り出して、淹れ直したお茶と一緒に机に置いた。
    改まって渡すのが少し気恥ずかしくて「お納めください」なんて照れ笑いながら、五官王様へ差し出した。
    受け取った五官王様は、ラッピングをやたらと丁寧に解いていく。
    結んでいたリボンはきちんと畳まれているし、五官王様からしたらかなり小さい箱なのに、できるだけ歪まないようにと迷いを感じさせる手つきでゆっくり開けていく。
    律儀で不器用な五官王様なりの気遣いに頬が緩むのは内緒だ。
    本人が知ったら、次からは私の前で開けてくれなくなるかもしれない。

    「チョコレートか」

    箱の中には、四角とハート型のチョコが二つずつ。

    「食べてみてください」

    私にそう促され、四角いチョコを手に取った。
    (やっぱり四角い方を先に取った)
    きっと五官王様はそうするだろうと予想していた通りで、一人勝手に嬉しくなる。
    チョコを口に入れて一口噛むと、「む」と何かに気付いたようだ。

    「中に何か入っておるな」

    「はい。今年はボンボンショコラを作ってみました。中身はラズベリーのガナッシュです」

    「ラズベリー?」

    それを聞いた途端、五官王様が首を傾げた。
    訝しげに眉を寄せ、今度はハート型のチョコを口に入れた。
    味を確かめているのか、モゴモゴと口を動かす様子に不安が湧き上がる。

    「お、美味しくなかったですか……?」

    「いや……。儂がラズベリーの味を知らんだけかもしれん」

    「不味い」とは言わないけれど「美味しい」とも言わない。
    嫌な予感がして、残った二つのチョコを見る。

    「あの、一つ頂いてもいいですか?」

    「お前が作ったのだ。もちろん構わんが」

    四角い方を口に放り込んだ。
    ゴリっと噛み砕き、ラズベリーガナッシュが舌に触れた瞬間 ───。

    「〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」

    思わずチョコを吐き出しそうになった口を抑え込む。
    これラズベリーガナッシュじゃない!
    めちゃくちゃ辛い!!!
    まだ半分ほど固形のチョコを死ぬ気で飲み込んで台所へ走った、が、それは失敗だったかもしれない。
    五官王様の前で汚いことはしたくないと思ったけれど、口から胃までが燃えるように熱い!
    (これ絶対デスソース……! 初めて食べたけどこんなに辛いの!?)

    阻止したつもりだったのに、どうやらアマビエさんの企みは成功していたみたいだ。
    とはいえ、まさかアマビエさんが五官王様に渡す分にそんなことをするはずがない。

    そういえばチョコができた時、五官王様の分を四つだけ他のお皿によけておいた。
    残りは横丁の皆と食べる用にと、アマビエさんが作ったものと一緒に一つのお皿にまとめておいた。
    でもその後、いざラッピングをする段になって、自分で避けておいたのをすっかり忘れて大皿から取ったんだった。
    自分の間抜け具合が嫌になる。
    長屋では今頃、「デスソース入りのチョコが足りないよ!」なんてアマビエさんの声が響いているんだろうか……。

    「どうした!? 何が起こっている!?」

    ゲホゲホ咳き込みながら顔を真っ赤にして水を飲み続ける私に、五官王様が慌てて駆け寄った。

    「すみません、今年のチョコは失敗です……。どうかなかったことにしてください……」

    お腹がタプタプになるまで水を飲んで、やっと辛さが落ち着いた。
    でも情けないやら恥ずかしいやらで、五官王様の顔をまともに見られない。
    落ち着いたのならと、五官王様に背を押されて一度机に戻る。

    「美味しくなかったですよね……。勿体ないけどこれは捨てますね……」

    私の手が箱に届くより早く、五官王様が最後の一個を手に取って迷うことなく食べた。

    「確かに文句無しに美味いとは言えんが、これはこれでいける」

    そう言って涼しい顔で完食してみせる五官王様。
    その気遣いは嬉しい。とても嬉しいんだけど、冷静になった今思う。

    どんな味覚してるんですか!?
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