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    きみどり

    @kimi_0812

    かきかけ途中のログ投下場所なので、完成したものはpixivに体裁整えてまとめています。
    詳しい事はプロカを見て下さい。
    TRPGは全部ワンクッション入れているので、閲覧は自己責任。
    リンク一覧:https://lit.link/gycw13

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    きみどり

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    前半青空のしたでいちゃいちゃする凪茨と、後半ベッドの中でいちゃいちゃする凪茨。
    いちゃいちゃ成分は控えめ。甘くしたいけど、なかなか甘くならないので一旦区切りでぽいぽい。

    #凪茨
    Nagibara
    ##底なしのこころ

     いつの間にか用意されていた昼食を済ませ(後で聞いたが決まった時間にシェフが作りに来ていたらしい)、茨と凪砂は日和によって送り届けられた謎の避暑地を散策していた。
    「おそらく、移動時間からして国内ではあると思うのですが……」
    「……歩いて見た限り、周りは海と青空ばかりだね」
     歩いて辿り着けそうな場所にあった高台に到着した二人は、視界に飛び込んできた景色に驚愕と感嘆が同時に声をあげた。
    「は……?」
    「……わぁ」
     眼下に広がる鮮やかな緑と、蒼い海、白い雲が広がる青い空。
    「……自然豊かな海に囲まれた島。素敵だね」
    「聞こえは良いですが、つまるところほぼ無人島じゃないですか」
     連れ出される時から白旗はあげていたが、悪足掻きのように茨は目視できる範囲を見渡す。今のところ綺麗な水平線が見えるだけで航空機や船舶の類は見当たらない。マジで何処なんだここは。
    「散々歩きましたが、ここも収穫はありませんでしたね。これ以上は手掛かりも得られそうにないので、先程の屋敷に戻りましょう、閣下」
    「……戻っても特にする事が無いなら、私はしばらくこの自然を眺めていたいな」
     転落防止の為に設置されている柵に腕をのせ、腰までかかる長い髪を風と戯れるようになびかせる。太陽の光を受け、きらきらと輝くその立ち姿、光景は、誰もを魅了する。あぁ、雑誌の表紙にしたい!
    「……私のこと、『雑誌の表紙にしたい』とか思っていない?」
    「思って……ま、せ……ん……!」
     嘘をつきました。めちゃくちゃ思っているし、今も口を滑らせそうになるのを下唇を噛んで必死に耐えてます。クソ、思考を読まれている!
    「……今は何も仕事道具は無いから、仕方ないよね♪ そうだ、うん……茨の目に、脳裏に、素敵だなって思った姿を焼き付けて欲しいな」
    「どういう目的で?」
    「……日和くんやジュン達のお土産話に」
     そう言って笑う凪砂の表情は、いつもの穏やかな笑みというより、無邪気な子供っぽい笑顔だと茨の目には映った。



     それから暫く二人は、青空の元で他愛のない話を続けた。
     互いに一般的な生い立ちでは無いのは知っていたし、凪砂の生い立ちについては日和と共にスカウトをするため、茨自身の手で散々調べ尽くしていた。
     様々な方法で調べ上げて、調書を読んで、知っていたし、凪砂の語るその話も、凪砂が歌うその歌も、何度も何度も書類と睨み合い知っていた。
     知っている話を凪砂の口から聞かされているだけなのに、何故か止めることができなかった。
    『その話でしたら、存じ上げております』
    そう伝えれば、
    『……茨は物知りだね』
    と言って、口を噤んでしまうのを知っている筈なのに。時間の無駄だと、そう割り切ってしまうことは簡単だったのに……、それが出来なかった。

    「……なんだか、私ばかり話してしまったね」
    「いいえ、自分こそ……閣下の話に相槌ばかりで申し訳ありません」
    「……こんなにも、自分自身の事を喋ったのは、コンクエストの後に企画された番組以来かも」
     春に企画された、Edenの結成までの“差し支えない部分”だけをドキュメンタリー仕立てで放送した番組の事を凪砂は言っているのだろう。
     ファンや関係者からの反応は上々だったが、ぶっちゃけるとあの内容は、Edenのほんの上澄みの上澄み。それ以上を語るのは地雷原だ。悪意の有無や興味の大小など関係なく、その真実はEdenのメンバーそれぞれのアイドル生命を殺してしまうに等しい。無論、真実に触れてしまった相手も無事な筈ではないし、お互いに不利益しか生じないから、そこに触れない。
    「……あの時は、公に話すからと業界に不都合な所は全て省いてしまったからね……父の事を話せて、茨に聞いてもらえて、嬉しかった」
    「そう、です、か……。閣下にご満足頂けたなら何よりです! ビジネスの場では自分は喋ってばかりなので、話を聞く、傾聴するというスキルも必要だとは重々承知していましたので……少しでも、それが発揮できたなら……」

     いや、自分が言いたいのは、こんな事ではない。何のために、事務所から離れたこんな僻地に来たのか、目的を思い出せ。

     言葉がつまり、黙ってしまった茨を、凪砂は静かに見つめていた。
     茨は凪砂よりも頭の回転が早くて、凪砂より多くの事を考えて、凪砂よりもずっとずっと先まで見据えて話をする事を、凪砂自身が何より良く知っている。そして、先程茨に父の話が出来て嬉しかったと伝えたのは、凪砂自身の素直な本心だ。番組でも、父の話はNGワード。司会も出演者も暗黙の了解といった感じで触れてこなかった事に、改めて父の存在が、影響が、世間からはどんな目で見られているのか、それが理解できないほど凪砂も馬鹿ではない。
     茨にしてみれば、自分を捨てた家族の話でもあるし、凪砂の生い立ちは既に調べて知っている筈だ。それでも、凪砂の言葉を遮らずに聞いてくれたということは、茨の中で何かが変わろうとしているのだと、直感した。だからこそ、じっと、茨が次の言葉を紡ぐのを待った。
    「ええと、閣下……正直に申し上げて、よろしいでしょうか」
    「……うん」
    「ぶっちゃけ、何を聞かされてるんだろう、と思いました。そんな事知ってるし、自分にとっては楽しい話でもない」
    「……そうだね」
    「それでも……、不思議と、閣下の話を、言葉を、遮れなかったんです」
    「……それは、どうして?」
    「話している時の閣下の表情が、とても、何と言えば、その、んーー……あ、愛らしい、と、言いますか、楽しそうで、それを自分が勝手に遮るのは申し訳ないと言いますか……」
    「茨、もう一回言って」
    「言いませんよ!!!!」
    「……どうして?」
    「とうしても、です……」
    「……そう。それは、とても残念」
     何とか絞り出した単語は、普段の茨ならほぼ口にしない……というより、普段の茨なら恥じらいもなくいけしゃあしゃあと「プロデューサー殿! 本日も愛らしいお姿で!」などと口にしているので、今の発言がビジネストークではなく、茨自身の言葉だと理解するのは容易だった。
    「……目や耳だけで記憶しておくにも限界がありそうだね」
    「せめて、ノートと筆記具は欲しいと自分も思いましたよ」
    「……茨、何か書くことを思いついたの?」
    「今は、内緒です」
     そう言って笑う茨の表情は、いつもの何か悪巧みをしている邪悪な笑みというより、無邪気な子供っぽい笑顔だと凪砂の目には映った。

     夕焼けに染まる空を眺め、二人は静かに帰路についた。


    ***


    「はい。閣下、終わりましたよ」
    「……ん、ありがとう茨。やっぱり茨にしてもらうのが一番心地良いね」
    「誰と比べてるんですか〜?」
    「自分でやるのと、あと羽風くんやゆうたくんにしてもらうの、かな」
     星奏館で凪砂と同室になっている2人の名前が出てきて、茨は密かに優越感に浸る。ふーん、と興味無さそうな返事をするが、足取りは軽くなる。単純に髪を乾かして手入れをしているだけなのだが、他人と比べて自分が良いと選ばれて、しかもあの乱凪砂に選ばれて、腹を立てる人間なんて存在しないだろう。ドライヤーとブラシを片付け、キッチンからミネラルウォーターのボトルを2本手に取り、それを持って寝室の扉を開けたところで茨の動きが止まる。
    「そろそろ寝……えぇ…………」
    「……どうしたの、茨? 入口で立ち尽くしてないで、中に入ろう?」
    「あ、やっ、ちょっと、閣下押さないで下さい!」
     茨の抵抗も虚しく、あっという間に寝室に入ってしまった。目覚めた時にはあまり気にしていなかったが、たっぷりと広い空間にキングサイズのベッドがひとつ。太陽も沈み、月明かりが差し込む室内にぼんやりとオレンジ色の間接照明の灯りが、なんともいえない雰囲気を作っている。
    「ほら、茨。おいで?」
     そう言って凪砂はさっさとベッドの上にあがり、ぽんぽんと枕を叩きながら手招きをする。様になりすぎてて怖いし、まだ成人していないのにこの色気と魅力は本当にもったいない。これは雑誌の表紙にイける……!
    「……また、仕事のこと考えてる」
    「失礼しました! ですが、閣下が魅力的なのがいけないんですよ〜」
    「……色々な発想というか、アイデアが刺激されるんだっけ?」
    「えぇ。プロデューサー殿も言っていたと思いますが、自分もそこに関しては同じ部類の人間ですので……あぁ、自分とプロデューサー殿を同列で語るのは失礼ですね」
     表情は変えず、茨は渋々と掛け布団をめくられ凪砂の作ったスペースへ身を滑り込ませる。一緒に寝るつもりなんて、茨の中ではかけらも無かったが、そもそも寝る場所が寝室のこのベッドだけなのでどうしようもなかった。ソファで寝ても良かったのだが、寝た後で凪砂がおそらく、いや絶対に寝室に運ぶので無駄な足掻きにしかならない。そして起きてびっくり、余計に心臓に悪い。
    「……茨、もうちょっとこっちに寄って」
    「いや、これ以上はちょっと、近……」
    「ねぇ、どうして背中を向けるの?」
    「顔が近いです閣下!」
    「私はちゃんと茨が眠れる方法を試してみたいだけなのに……」
     凪砂が迫ってくるのが背後の気配から手にとるように分かる。しかし、これ以上距離を取ると、茨は完全にベッドから転がり落ちてしまう。まぁ別に落ちた所で怪我をする高さでもないので、そうしてまで逃げてもいいのだが、そうなると凪砂の寂しそうな顔が目に浮かび、口を開けば「茨は私のことが嫌い?」と聞いてくるのも想定内。考えを巡りに巡らせ、今以上に情けない姿を晒していた、深夜のあの日の事を思い出す。
     あれに比べれば、全然可愛いものではないか、と無理矢理吹っ切って、茨は180度反転し凪砂と向き合う。
    「……っと、観念した?」
    「まぁ、そんなところです」
    「じゃあ、茨……抱き締めてもいいかな?」
    「え、嫌です」
    「……観念したんじゃなかったの?」
    「一緒のベッドで寝るのと、閣下が自分を抱きしめて寝るのはまた別の話です」
     あっ、すごくめんどくさそうな感じの顔をしている。凪砂の表情から、おそらく茨の理屈めいた言い訳を真正面からねじ伏せるつもりだと察し、腹をくくる。強行されて押し倒されたとしても驚かないぞ。
    「茨、セロトニンの分泌を増やすために必要なのは、バランスの取れた食事、規則正しい生活、そしてグルーミング……人との触れ合い。あと、オキシトシンも触れ合いが効果的。後で後悔したくないから、やれる事は全部やっておかないと」
    「ウワ―、閣下……てんこ盛りじゃないですか」
     茶化す言葉も華麗にスルーして、凪砂は茨の身体を抱きしめ、腕の中に閉じ込めた。
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