. 今年の校外学習も、例年通り水族館に行くらしい。そして何故か下見係に選ばれたのは、俺とるい。
仕事とはいえ、何故男二人で水族館なんか…。カップルに紛れながら、金髪の男とおじさんの謎2人組が向かったのは深海コーナーだ。
るいは楽しそうに、早足で歩いていく。仕事で来てるってこと、忘れてない?
追いかけようとしたけど、何となく"それ"が目に止まった。説明パネルには『ハザマミチオ』と記載されている。
こいつは……人魚。そう、人魚だ。
幻の存在だと信じられていた人魚が、近頃発見された。虹色に輝く鱗、陽の光など知らなそうな白い肌、恐ろしい位に美麗な容姿。それは、幼い頃絵本で見たものよりもグロテスクなものだった。
発見されたのが比較的最近なのもあって、その生態は謎ばかりだ。何処と無く人間に似たその容姿から、単弓類が初期猿人に進化した際、その一部が海に戻り人魚が生まれたのではないか、なんて説とか、人類の遠い元祖…原始両生類の時点で誕生してたなんて説もあったり。実は俺たちが知らないところで極秘の研究が行われていて、その結果クローン人魚が養殖され海に放たれた…なんてSFチックな説もあったっけか。
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