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    nmnk_029

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    nmnk_029

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    人魚の道夫

    #山硲
    mountainWitch

    . 今年の校外学習も、例年通り水族館に行くらしい。そして何故か下見係に選ばれたのは、俺とるい。
    仕事とはいえ、何故男二人で水族館なんか…。カップルに紛れながら、金髪の男とおじさんの謎2人組が向かったのは深海コーナーだ。

    るいは楽しそうに、早足で歩いていく。仕事で来てるってこと、忘れてない?
    追いかけようとしたけど、何となく"それ"が目に止まった。説明パネルには『ハザマミチオ』と記載されている。
    こいつは……人魚。そう、人魚だ。

    幻の存在だと信じられていた人魚が、近頃発見された。虹色に輝く鱗、陽の光など知らなそうな白い肌、恐ろしい位に美麗な容姿。それは、幼い頃絵本で見たものよりもグロテスクなものだった。

    発見されたのが比較的最近なのもあって、その生態は謎ばかりだ。何処と無く人間に似たその容姿から、単弓類が初期猿人に進化した際、その一部が海に戻り人魚が生まれたのではないか、なんて説とか、人類の遠い元祖…原始両生類の時点で誕生してたなんて説もあったり。実は俺たちが知らないところで極秘の研究が行われていて、その結果クローン人魚が養殖され海に放たれた…なんてSFチックな説もあったっけか。

    俺は化学教師だけれども、この人魚ってやつに興味が無いわけじゃなかった。こいつは一体何処からやってきたのだろうか。少なくとも、こんな狭い水槽で、見世物にされるためにやってきた訳では無いだろうに。

    視線を感じて、前を見てみる。ガラスの壁がなければ、口付けができそうなくらいの近さに、そいつはいた。

    小さな口、青い鱗に、吸い込まれそうな紫の瞳。ああ、これは、元素記号53…ヨウ素。ヨウ素の気体のような色をしている。吸い込んだら、いけない。でも、目が離せない、もっと近くで見たい。

    「︎︎_____」

    そんな訳ないのに、そいつはにこり、と微笑んだ。俺に、そんな気がした。心臓が、止まりそうだ。死んでしまってもいいかもしれない、本気でそう思った。

    ____一目惚れだった。
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    10ri29tabetai

    DONE山硲 / sideM 付き合ってない泊まっていけば、と雑に言い捨てたら、数秒の間があった。そのつもりだったが、と妙に淡々と言われてみれば、ひどく自分が期待していることに気付く。
    3人でいることばかりに慣れてしまったこのこたつで、硲と足を寄せ合っているのはいささか居心地が悪かった。否、悪いと言うのは語弊がある。どちらかと言うと、緊張している、の方が近いだろう。
    二人の関係を紐解けば、それはアイドルとして活動する前にまで遡る。その頃にはこういう種類の緊張することもなかったはずだ。むしろ、目を合わせるのも少し怖かった時だってあったと言うのに。
    「はざまさん、るいは今日仕事だったっけ」
    「そのあと打ち上げと言っていたが…む、なんだ、舞田君はこの後くるのか?」 
    硲の問いかけに対して山下はふるふると首を横に振る。だろう、と自分の予想を安心した硲は眼鏡のブリッジを直した。
    緊張感が再び走る。こたつの中で触れた足先。生ぬるくなった彼の足をなぞるように足の指を動かすと、ゆっくりと逃げられる。
    「すまない。当たってしまったな」
    「……や、そういうわけじゃ」
    追うように山下は足を伸ばした。まどろっこしいのは伝わらない。酒に伸びた硲の指を掴み 760

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