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    chisaorito

    @chisaorito ヴェランをかきます💛💙

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    chisaorito

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    いい夫婦の日のヴェランちゃん💛💙

    2022/11/22 up

    #ヴェラン
    veranda

    黄色い薔薇のプロポーズ「ただいま、ヴェイン」
    「おかえりー! ランちゃん!」
     日が暮れた後、ヴェインが副団長執務室で書類仕事を片付けていると、朝から視察に出ていたランスロットが訪ねてきた。
    「視察どうだった?」
    「うん、順調に復興してたな」
     昨年、魔物の襲撃にあった村は、人の命こそ守られたが、建物や治水、畑の損傷が酷く、騎士団を派遣して復興に力を入れていたのだ。
     順調に復興しているのなら良かったと胸を撫で下ろすと、ランスロットが手にしている花に目が留まる。
     黄色い秋薔薇の花束だ。
    (ランちゃん、人気者だからなあ〜)
     きっと、道中で渡されたか、視察先で渡されたのだろうと思っていると、その花束をランスロットが差し出してくる。
    「綺麗な花だな〜! 今、活けてやるからちょっと待っててくれ! ランちゃんの執務室に飾って……」
    「そうじゃない。お前にだ」
    「へ? 俺?」
     誰かから預かって来たのだろうか。五十本はあるだろうゴージャスな薔薇の花束を貰う心当たりがないと首を傾げていれば、「俺から、お前に感謝の気持ちだ」と微笑みを浮かべてランスロットが言う。
    「感謝の気持ち?」
    「ああ、今日はな、『いい夫婦の日』だそうだ。この日は日頃の感謝を伝え合うと聞いたから」
     視察先の村人にでも聞いたのだろうか。
     視察先は農業が盛んで、フェードラッへでは重要な土地だ。そこでは花の栽培も盛んに行われていた。城下町の花屋はその村から仕入れをしていたはずだ。
     生花を販売する為に『○○の日』と名付けて、色々とイベントを展開しているのだろう。
    (『いい夫婦』なんて、俺たちにはカンケーねえけど、ランちゃんは感謝の気持ちで贈ってくれたんだな)
     感謝をしているのは、自分も一緒だ。今日は無理だが、明日にでも感謝の品を用意しようと思う。
    「ヘヘっ、ランスロット、嬉しいぜ。ありがとな! 暫く楽しんだら、ドライフラワーにしよっかなあ」
    「ふふっ、お前は花が好きだろう?」
    (薔薇を見て、俺を思い浮かべてくれたのか? そんなの嬉しくて仕方ないぜ!)
     ヴェインは花弁に鼻を近づけて、息を吸い込んだ。甘い芳香は幸せな気持ちにしてくれる。
     花が好きだったのはヴェインの祖母だ。その影響で好きになった。
    「書類は片付きそうか?」
    「おう! これにサインしたら終わり!」
    「じゃあ、食事に行かないか? いつもより少し奮発して」
     そろそろランスロットが戻ってくる時間だと予想し、それに合わせて書類仕事をしていた。戻ってきた彼を自宅に招いて、いつものように料理を振る舞って、視察を労おうと思っていたのだが、先に誘われてしまった。
     しかもいつもより奮発すると言う。
    「なんかいいことでもあった?」
     ランスロットがどうも浮かれているようなので、聞いてみると、彼は薔薇の花より華やかな笑顔を咲かせた。
    「ふふっ、今日は『いい夫婦の日』だからな」
    「ゴロ合わせか〜。でもさ、俺たちに関係ないだろ、夫婦じゃねえし……?」
     今しがた考えていた内容を、今度は口にしてみた。すると、ランスロットは我が意を得たりとばかりに瞳を輝かせる。
    「それだ!」
    「どれ」
     急に大きな声を出され、手にしていた大切な花束を落とすところだった。しっかり受け止め、黄色を見つめる。
     黄色い薔薇の花言葉は「友情」だ。
     ランスロットも花言葉は知っている筈だ。子供の頃、祖母にふたりして講義を受けたから。
    「花言葉を知っていると、プレゼントを選ぶ時の選択肢が増えて、その上、もっと想いが込められていいですね」
     庭の花を摘みながら、「初恋」「友愛」「貴方を忘れない」「これは怖いですよ、復讐」と教えてくれた。
     その教えを受けたランスロットが、ヴェインに手渡す為に選んだのが、黄色い薔薇だ。
    「いい夫婦」とはかけ離れた「友情」の花。
     ランスロットは誰よりもヴェインを大切にしてくれるし、特別扱いもしてくれていると感じてはいるけれど、それは「友情」だと釘を刺されたようだ。
    (うん、俺は一生、ランちゃんの親友でいるから)
     ランスロットが友達でいたいというのなら、――もしかして、ランスロットもヴェインと同じ気持ちでいるんじゃないか、なんていう甘い期待は、封じて生きていく覚悟もある。
    「黄色い薔薇が好きなんだよ、俺は」
     黄色の持つ意味を考えながら、薔薇を見つめていると、ランスロットがボソリと言う。
    「……うん?」
    「お前を思い出す色だから」
    「ランちゃん」
    (黄色い薔薇を見るたびに俺を思い浮かべてるってこと?)
    「お前の髪の色みたいでさ、見てると元気になってくる」
     薔薇だけではないのかもしれない。黄色い物を見るたびに、ヴェインを思い浮かべているのかもしれない。
     ヴェインの色だから、黄色い薔薇が好きで、花屋で選んだのだろうか。
    「友情」という花言葉で選んだのではなく?
     それがどんな意味を持つのか――。
     返事はすぐにランスロットがくれた。
    「黄色い薔薇は『幸福』って花言葉もあったよな」
    「あったと思うけど……、有名なのは『友情』だろ?」
    「『友情』より、ヴェインと『幸福』になりたいと思ったんだよ、俺は。だからさ、俺と夫婦になろう」
    「ランちゃん……っ」
     ランスロットに「夫婦になろう」と言われた瞬間、ヴェインは彼の細い身体を抱きしめていた。
     それを伝えたくて、『いい夫婦の日』だと口にしていたのか。
    (プロポーズするつもりで、浮かれてたとか、愛しすぎない)
     胸がいっぱいで、何も言葉に出来なくて、ただ、腕に力を入れる。
    「……ヴェイン。返事を聞かせてくれよ」
    「……『なる』にきまってるだろ……っ」
     なんとか出した声は、震えた涙声だった。
     まったく格好がつかない。
    「ふふっ、じゃあ、今から『いい夫婦の日』を楽しめるな、ふたりで」
     甘い声が聞こえ、背中にしがみつく指先の感覚がする。
     抱きしめた腕を緩めることが出来なくて、このままじゃ食事に行けないな――そう思いながら、ランスロットを抱きしめ続けていた。

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    ゆゆしきゆく

    MOURNINGヴェラン気味
    だから怒られてんだよ!ってのを自己肯定感が低すぎる故にわかってないヴェの話
    途中あんまりしっくりきてないからそのうち書き直したい
    ランちゃんは、かっこいい
    かっこいいし、強いし、賢いし、俺みたいな泣き虫じゃない
    「ランちゃん!!!」
    体、動いてくれ
    良かった、間に合った
    そう思うと同時に体に衝撃が走る
    口から声にならない音が出た
    「ヴェイン!!!!!!」
    後ろからランちゃんの声が聞こえる
    今どんな顔してんだろ
    でも間に合って良かった…
    ごぷと口の中に熱くて鉄臭いものが迫り上がってくるのを感じる
    あ、これやばいかも
    体に力が入らなくて立ってられない
    もう上向いてるのか下向いてるのかどうなってるのかすらわからない
    ごめん、ランちゃん
    俺…もう、ダメかも…
    崩れ落ちる視界の横で黒と青が明滅して消えた



    「…ってぇ…」
    めちゃくちゃ痛い
    起きあがろうとしたけど腕あがんない
    何これ、何でこんな痛いの?
    そうだ俺、ランちゃんを庇って…ってあれ?俺、生きてる?
    めっちゃ痛いけど
    うわー俺ってめっちゃ頑丈…
    そんなことを思っていたら聞き覚えのある声がした
    「ヴェイン!!!」
    「ラン…ちゃ…」
    痛む顔をどうにか動かして声のする方向を見ると見慣れた黒い髪が見えた
    でも、あれ?もしかしてランちゃん怒ってる?
    親の顔より見た幼馴染の 1325