蒼色に導かれ【ヴェラン】 旅に出よう。
ヴェインがそう思ったのは、副団長執務室の窓から蒼い空を眺めていた時だ。
いつもより高く見える雲ひとつない空。どこまでも澄みきった蒼い色を眺めていると、広がる空の下に住む人々の中で誰よりも大切な人を思い出す。――まあ、なにも空を見た時だけ思い出すわけではないけれど。
大切な人は、たったひとりの幼馴染みであるランスロット。
今は国境付近の村へ騎士団長として視察に出ている。
彼の碧い瞳は、時間帯や光の加減で空と同じ色に見える時があった。
「今日の空は、ランちゃんの瞳の色だ」
だから、余計に思い出すのだろう。
ランスロットの瞳が空色をしている時、彼は目の前にいる自分ではなく、遠い未来を見ていると感じていた。
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