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    chisaorito

    @chisaorito ヴェランをかきます💛💙

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    chisaorito

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    フェスでのリミランちゃんのマントの裾をお世話するヴェインくんが良過ぎて……

    2023/07/10up

    #ヴェラン
    veranda

    白い鎧と赤い頬「ランちゃーん!」
     俺が帰城し、陛下への報告を済ませてから騎士団長室へ向かい階段を上っていると、ヴェインの足音が背後で響く。歩幅の大きな重量を感じさせる音。金属の触れ合う音が賑やかだ。
     振り返ると、階段のいちばん下でヴェインが目と口を大きく開けていた。
     感動に打ち震えている時によくする顔だ。子供の頃から瞳をキラキラさせて、俺を見つめてくる。
    「うおおぉ〜! 本当に白い鎧だー!」
     新しい鎧は、王国フェードラッへを守護する妖精――まだ確証は得ていないけれど――の試練を受け、授かったものだ。
     一緒にカムランへ調査に出掛けた団員から「ランスロット団長が新しい鎧と剣を手に入れた」とでも聞いたのだろう。
     俺は素晴らしい双剣を早くヴェインにも見せたくて、階段を一段下りた。
     双剣は氷みたいに透明で、光に翳すと中に虹が見えるんだ。清らかで美しい双剣は、魔力も秘めている「特別な剣」と思える短剣だった。
     フェードラッへの子供が昔から憧れる「聖剣伝説」に出てくるエクスカリバーを実際目にした時も、実は子供の頃の興奮を思い出して、ワクワクした気持ちを抑えるのに苦労した。
     けれど、今、それ以上に昂ぶる気持ちを抑えられないから、早くヴェインに話して、思いを共有して欲しい。
    「ヴェイン、見てくれ……」
    「あっ! ランちゃん、ストップ!」
    「え?」
     階段を下り始めると、ヴェインが必死の形相で俺を止める。何か踏んではいけない物でも足元にあるのかと下を見たけれど、特に何もない。今、上ってきた階段だから、何もないのは分かっているが……。
    「ヴェイン?」
    「ランちゃん、じっとしてて! そのまま動かないで!」
     一瞬前まで驚きと感動を見せていた表情はすっかり消え去り、何やら真剣だ。言われた通り、その場でじっとしていると、段を飛ばして、あっという間に傍まで来た。するとヴェインは、少し屈んで俺の纏っているマントの裾を丁寧に持ち上げる。
    「いいぜ! 動いて!」
     ヴェインの視線に促され、大人しく階段の上へと戻った。
    「はあ〜! アブなかったー!」
     マントから手を離し、胸を撫で下ろしたヴェインは、そのまま背後で俺のマントを直しているようだ。
     ……これは、ヴェインの世話焼きだな。
     意外と丈が長いと、俺も思ったけど。
     新しい鎧の白いマントが長くて、階段を下りる時に裾を引きずると思ったのだろう。
    「ありがとな、ヴェイン」
    「いやいや、お安い御用だけど……」
     そう言って顎に手を当て、何か考え始めている。眉が寄ってるぞ。
    「大丈夫だって。俺も気をつけるから」
     おそらく、新しく授かった大切な物を汚してはいけないと、その対策を考えているのだろう。
     色も白いから、汚れが目立つ。
    「その、俺の私室に入る前に外せばいいだろ?」
     まだ考え込んでいるヴェインをのぞき込んで聞いた。
     自分で言うのもアレだが、マントがいちばん汚れそうな場所は俺の部屋だからな
    「え? ……あー、うん。そうじゃなくて、汚れるのも気になるって言ったら気になるけど。汚れたら俺が洗うし……、それよりもさ。汚れるより、ランちゃんが踏んだら危ねえなあってそっちが気になる」
     なんだ、眉間に皺を寄せて真剣になってると思ったら、俺の心配か。
    「ふふっ、それこそ気をつけるよ。それに普段は身につけないし」
     公の儀式や、遠征や、戦に赴く時でもなければマントは外している。正直、普段身に付けているのは邪魔だ。
    「……うん、そうだな」
     ヴェインはまだ気掛かりなことがあるらしい。晴れない顔をしている。
     話しながら歩いていると、あっという間に俺の私室へ着いた。執務室へ寄ろうと思っていたが、ヴェインに促されたまま歩いて来てしまった。
     まあ、陛下にも休むように言われているし、今日は休むか。
     部屋に入ると、ヴェインはマントを外してくれて、しっかり形を整えた後、外套掛けに吊るしている。ソファーに脱ぎ散らかす俺とは違うんだよな。
    「ランちゃん、新しい鎧、良かったなあ」
     振り返ったヴェインの顔は、心から喜んでくれているものだった。気掛かりは消えたのか?
     俺は鎧と双剣を授かった事の顛末をヴェインにも話して聞かせる。
    「……だから、試練を乗り越えられたのは、お前のお陰だよ」
     自信を失った時、ヴェインの言葉が甦った。
    『お前のことは信じてる!』
     あのヴェインの言葉に、俺は何度救われているのか分からない。
     何があってもヴェインは味方でいてくれるというのは、一番の支えで、救いだ。
    「えー? ランちゃんの実力だろ? 俺の言葉って言うけど、あの言葉だって子供の頃からランちゃんが俺を信じさせてくれたからだし」
     子供の頃から、ヴェインが信頼を寄せてくれるから、裏切らない自分になりたかっただけなんだが。
    「まあ、とにかくさ! その鎧、ランちゃんに滅茶苦茶似合ってるぜ! 白と青と金色! カッコイイな〜!」
    「よく見せてくれ」と言われ、ヴェインの前でくるりと回って見せた。
    「おおー……、今までの鎧も似合ってたけど、白い鎧は高潔さが滲み出てて、ランちゃんの『より良い国にしよう』って思いを感じられて、すげーいいな」
    「なんか、そんなに褒められると照れるな」
     真剣な、熱い眼差しが見つめてきて反応に困る。ヴェインが喜んでくれて、俺の喜びも一層強まったけど。
     この白い鎧を赤く染めないようにしないとな。
    「それで? 何が気掛かりなんだ?」
     ヴェインがお茶を淹れてくれて、一服した後、聞いてみる。
     先程のヴェインが気になって、追及してしまった。ヴェインが気掛かりな顔を見せるから、まだ双剣を見せていないんだぞ。
    「えっ?」
    「隠しごとをするなら、顔に出すなよ。まあ、隠してもお前の表情なら読めるけど」
     マントを汚したり、踏んだりしないよう気をつけると伝えたけれど、他に何が気掛かりなのか。
    「ええ〜……、ランちゃん、笑わない?」
    「そりゃ、内容によるな」
    「うっわー! ひでえ〜! 笑わないって言って!」
     頬を膨らませているので、笑わないと誓う。
     ヴェインは彷徨わせた視線を何度か掛けてあるマントへ向け、口を開いては閉じた。
     そんなに言い難いことを言わせようとしてるのか?
    「ヴェイン、無理なら……」
    「言わなくても」と続ける前にヴェインの言葉が紡ぎ出される。大きな、力の篭った声で。
    「ランちゃんのマントに、誰かが触れるのはイヤだなって思っただけ!」
     一息に告げられた思い。
    「ん?」
     思ってもいなかったセリフを聞いて、間抜けな声が出てしまった。
    「それって……」
    「ランちゃんの大切なものに触れるのは、俺だけがいい!」
    「ヴェイン」
    「あー! もー! こんなん滅茶苦茶恥ずかしい! 俺だけが触りたいなんて!」
     ――それは所謂独占欲というヤツだろうか?
     ヴェインにも、そんな気持ちがあるのか?
     上手く言葉に出来ないでいると、ヴェインは続けて叫んだ。
    「式典とか! ランちゃんがマントを纏ってさ! 従者がマントの裾を持って壇上に上がったり それ、俺がお世話したい! ランちゃんのお世話は俺が……って」
    「お世話って言うな!」
     カッコ悪いだろ! まあ、確かにいつも世話を焼いてもらっているけどな!
    「大体、お前は副団長だろう? 公の場では俺の世話を焼いてないで、堂々と立ってろ」
    「うおぉ〜! 副団長になったら、ランちゃんのお世話も出来ねえのかー! 想定外!」
     ソファーに腰掛けたまま、ヴェインは頭を抱えている。
     そんなに嫌なのか? 
     ヴェイン以外の誰かが、俺の大切な物に触れるのが?
     そんなに俺に構いたいのか? どうして。
     俺は立ち上がって、ヴェインの前まで行き、その場へ屈んだ。床に膝をついて、頭を抱えているヴェインを下からのぞき込む。
     驚いたヴェインが勢い良く顔を上げた。
    「……ランちゃん」
    「ふふっ、すごい顔だぞ?」
    「……笑わないって誓っただろ……」
     間近で見つめると、唇を尖らせたヴェインの顔がどんどん染まっていった。
     期待してもいいのだろうか。
    「これはお前を笑っているんじゃなくて、嬉しくて笑ってるからノーカウントだ」
    「……嬉しい?」
     キョトンとしたヴェインは、俺の真意を探ろうと真っ直ぐに見つめ返してくる。
     表情がコロコロ変わって、見ていて飽きない。ヴェインのどんな表情も俺は好きだ。
     ヴェインが俺を独占したいと思っていると知れて嬉しい。
    「俺だって、お前にしか触れさせたくないと思ってる」
     だから、従者が俺のマントの裾を持つことはない。
     大体、子供の頃から、ずっとヴェイン以外には触れさせてないのに。
     気付いてなかったのだろうか?
     ヴェインに世話を任せるのは、ヴェインを信頼しているからだし、何より、俺の甘えたいって気持ちの表れなのだろう。
    「ランちゃん、それって……」
     ヴェインの瞳が潤んで揺れている。
    「……とりあえず、俺の鎧を脱がせる手伝いをしてくれないか?」
     下から見上げたまま聞けば、ヴェインはますます顔を染めるのだった。
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