月下の夜想曲【二夜目】藍曦臣と江澄は、妓楼という共通の話ができて親しくなった。
「だから、江宗主の剣術は舞う様に美しかったのですね」
「い、一応、楼主だからな。指導するにも、私も解らなければ教えようもありませんので」
相変わらず鉄紺の旅装束を着ている藍曦臣は、蓮花塢に招かれていた。
「竜胆(ろんだん)の相手をしてくれたらしいので、よろしければ蓮花塢に来ませんか」と江澄が誘ったのだ。
「彼女は、あまり表にでないのですか?」
「そりゃぁ、高嶺の花にしておけば、彼女相手に会いたがって通う客が多いのですよ」
「そんな方のお相手をさせていただいたんですね」
ほわっと、耳を赤くして目を潤ませている藍曦臣を見つめた。
自分の事を高嶺の花だといったことに羞恥を感じているのに、恋をした乙女のような顔をされてはこちらが照れる。
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