吸血鬼パロ吸血鬼パロ
いっけなーい!退勤退勤〜!
華の金曜日の夜だが楽しむ余裕も無く、もうすぐ日付を越えそうだ。
ハァとため息を吐いて、ヒョロヒョロなサラリーマンは革靴の先を見つめた。
薄く埃のついた靴は、くたびれた自分と似ていて、靴底から惨めさも伝わってくる。
夜道も自分の気持ちさえ真っ暗だ。
コンビニに寄ってお酒とお弁当でも買おう。帰って作るの面倒くさい。
あーあ、彼女やお嫁さんがいたらきっと晩ごはんを作って、お風呂を沸かして、待っててくれるんだろうか。
恋人はこれまで一度も出来ず、社会人になり、働いていたらいつの間にかこんなだ。
同僚は大学生時代から付き合ってた彼女と入籍するし、先輩は愛妻弁当を毎日食べている。
周りはみんな恋人や奥さんがいて、家族がいて…どんどん取り残されて行くみたいだ。
学生の頃は漠然といつか大人になれば、結婚するんだろうと思っていた。
でもほとんどの人は、学生時代に恋人を作り、そのまま大人になり、結婚だったパターンが多い。
あの頃にはもう自分が遅れていた事に気付いた。
それでももう諦めているし、親もなにも言わない。きっと親は自分が恋人を作るような人じゃないと思っているんだろう。その通りだから、惨めだ。
それに26歳にもなって童貞で、顔も身長も給与も趣味も私服も平凡中の平凡な男を、誰が好きになるんだろう。
深夜の夜道は、人を絶望感に陥れるのに最適な暗闇の色をしていた。
絶望で前が真っ暗な潔高は足元の障害物に気付かなかった。
おかげでスッ転んでべしょっと上半身をコンクリートに叩きつけた。
痛くて泣いたら、すごく悲しくて惨めになった。
「いたぁ〜〜……」
カッコ悪いし、知らない人に見られたら辛い。
早く起き上がって、転がっていたメガネを付け直す。
少し後ろには長い足が4本も転がっていた。
コレに引っかかって転んだのか…とぼんやりしながら、足から胴体の方へ目を向ける。
今夜は金曜、酔っ払いならゴロゴロ転がっていてもおかしくはないのだ。
「……ヒッ…」
男がふたり、お互いの肩にもたれかかり、座り込んでいた。しかもボロボロ、服も所々破れ血で汚れ、体中傷だらけ。
人がボロボロになってる姿はそうそう見ないはずで、心臓がバクバクと恐怖を伝えてくる。
そして何より、この世の物とは思えないくらいの美形が…イケメンが…いる。
おそらく人生の中で一度会えるか、会えないかレベルだ。
一人は日本人離れした銀髪、マツエクもびっくりなまつ毛、スッと細く綺麗な鼻筋と小さめの顎、ベビーピンクの薄い唇、女に負けない白い肌、逆三角形の上半身と股下何メートルあるんだってくらい嫌味な足。
一人は日本人らしい黒髪、しかも長髪、少し厚めの下唇はセクシーで、一重の目元は涼しげで美しい、体格は男らしく肩もがっちりしている、こちらも足が長い、それと大きいピアス。
ボーッとイケメンの美しさに気を取られていたが、緊急事態だった。
え、と…警察?きゅ、救急車?
「あ、い、生きてるか、確認しなきゃ…あの、大丈夫ですか!?起きて…!」
肩を揺らしたら男がドミノのように倒れてくる。
胸にふたり分の頭が、重い!!
それでも顔に触れた手に温かみを感じて、ホッとする。
口元に手を当ててみると、ふー、と息吹を感じた。
「……よかった…起きてください」
酔ってるなら、お酒臭いはずなのに…匂いはしない。じゃあ、どうしてこんな傷だらけに?
「も、もしかして…ヤクザ…?」
どうしよう…、もしかして面倒な事に首突っ込んじゃった?
ふたりの頬を手で支えて、不安に見つめる。
舞い上がるように、フワッと真っ白なまつ毛が持ち上がる。青くて大きな瞳は初めて見た。
パズルが動くように、スッと涼しい一重が持ち上がり、深い黒の瞳が視線を交わす。
美しい顔がふたつも、潔高を見上げていた。
あまりにも綺麗で、息を止めたけど、男達のブレス音まで美しく聞こえる。
「…ねぇ、誰?」
銀髪の男が首を傾げながら、潔高の手に手を重ねてくる。包まれてしまい、手の大きさが違うのだと分かった。
「あの…ごめん、なさい…その、ボロボロで倒れてるから…心配で、血だって出てるし、怪我してます…」
「名前は?僕は悟、そっちは傑」
「どうも」
傑と呼ばれる男は、心地良い優しい声で癒されそうだった。
「あの、立てますか?帰れます?…あ、警察とか呼んだ方がいいですか?手当しないと…!」
「名前、なんて言うの?」
今はそんな事どうでもいいと思うんだけど…。
「伊地知、潔高です」
『きよたか?』
ふたりとも声も良く、ハマって聞こえた。
「良い名前だね」
「って、そんな事言ってる場合じゃ…」
「警察も病院も大丈夫、いらないから」
「で、でも…!倒れてたんですよ?とりあえず、手当しないと!家に来てください!」
ふたりはパッと目を見開いて、驚いた顔をすると、立ち上がって潔高の両隣に陣取る。
倒れていたのにえらくスムーズに動いたので、潔高も驚く。
え、体、大丈夫なのかな…?
「伊地知の家に、行ってもいいの?」
「私達、本当に?」
「え、ええ、もちろん、こんなボロボロな状態ではとても帰せませんよ。シャワーお貸ししますから、あ、下着、コンビニで買ってきますね。行きましょう」
大きな男が後ろから雛のように着いてくる。
ふたりはソワソワしながら、時折照れたような表情で笑い、悟と傑は顔を合わせていた。
なんだか妙な光景だった。
新品の下着と飲み物やお菓子なども買い込み、自宅玄関を開けて「さ、どうぞ」と言う伊地知。
悟と傑は「傑、どうしよう…」「悟、こういう時はお邪魔します、だよ」と謎の会話をして、入って行った。
妙な男ふたりは身長がかなり高く、通りで股下が長い訳だった。
すごいイケメン高身長、これにプラス高収入が加われば、無敵なんじゃないだろうか?
無駄な事は考えちゃダメだ、すぐにお風呂を入れないと…。
「お風呂入れますから、順番に入ってくださいね」
「はい。ありがとうございます」
傑はニコッと笑うと、お辞儀をした。良い人かもしれない。
悟からは「伊地知、喉渇いちゃった」と言われたので、リビングのテーブルに買ってきたジュースやお水とコップを出して好きにさせた。
お風呂の順番は悟と傑がじゃんけんをして、勝った悟から入っていった。
大きな男がじゃんけんする様は可愛らしく、おかしかった。
ふたりの服を洗濯している間、潔高の持っていた大きめのTシャツとスウェットを貸し出したが…二人とも丈が短い。
なんというか、そんな気はしてたけど…これは大変だ。
一応洗濯した服は一部分が破れているし、早く新しい物を買わなくては…。
あいにく、明日は休みだ。最寄りの駅ビルにはファストファッションの店があるし、そこで買えばいい。
あの股下に対応出来るだろうか…不安でしかない。思い出せば、駅ビルの中には海外発のファストファッションブランドもあった…そこなら長めもの物もありそうだ。
大きめのTシャツがピッタリのサイズに見えるので、上半身のサイズも大きめな方がいいかもしれない…。
「伊地知、お風呂ありがとう」
「いえ、お二人とも、傷の手当……」
アレ?傷、ない…?頬擦りむいたり、口の端切れてたような…腕も傷があったのに。
ふたりの周りをクルリと回るも、傷は一つも無かった。
「アレ?…怪我してたはずじゃ…」
「伊地知、大丈夫だよ。僕達、そんな怪我してないから〜」
「そうそう、気にしないで。それより、伊地知はご飯食べなくっていいのかい?」
「は、はぁ…?あ、お二人ともお弁当どうぞ?食べましょう」
そう言ったら二人とも『いらない』と応えた。
え?やっぱり気分でも悪いのかな?
「でもお菓子食べていい?僕、甘いの好きだから」
「どうぞ?…あ、傑さんは…?」
「私はお水をもらうから、いいよ。伊地知の食べてる所見ていたいな」
そう言ってふわりと微笑むので、イケメンに微笑まれたら、恋に落ちてしまう少女漫画の女の子の気持ちが分かりそうになった。
それでも伊地知は26歳童貞平凡地味、深夜にコンビニ弁当を食す、冴えない男には変わりなかった。
伊地知の前には傑と悟が座って、モソモソ食べている姿をジッと見つめてきた。
なんか、恥ずかしい。イケメンに見られながら食べてるの、バカみたい。
「あのぉ…本当に食べなくていいんですか?」
「うん。なんなら伊地知がもっと食べなよ」
「食べてる所見るの好きだな。可愛いよ」
スッと長い指が伊地知の口元を掬って、傑はニコッと笑う。
「ついてたよ」と米粒を食べられ、カーーッと体が熱くなる。
い、いや〜!恥ずかしい!イケメンってなんであんな事スッ…と出来るんですかね!?
あと笑いかけられると、ちょっと嬉しくなっちゃう気持ちは…なんだろう。
一人暮らしだったし、誰かとご飯食べるのも毎日ではなくて…ほとんど寂しい。
一緒に食べてる訳ではないけど、同じテーブルに居てくれるのが良い。
傑さんの黒髪がしっとりと濡れて、艶っぽいし、思ったより胸板とかしっかりある…。
悟さんも無造作な髪型になっても似合うし、肌が綺麗でツルツル、首筋から鎖骨までの彫りがカッコいい。
ど、どぉなっちゃってんだよ!?
イケメンを二人も拾ってしまった夜はどうかしていた。
ご飯の味は分からなかった。
昨日は寝る前も大変だった。
潔高はお風呂から上がって寝支度を済ますと、寝室へ向かった。
ふたりの寝床を作らなければ…と考えて、来客用の布団が一組しか無い事に、頭を悩ませていた。
ドアを開けると自分のベッドには…イケメンが寝転がっていて「伊地知、おっそ〜い」「一緒に寝よう、おいで」と手招きされた。
「いや!?無理でしょ!?」
狭すぎて潰されてしまうし、ふたりでも満員なのに…。
猫ちゃんと暮らすと、こんな感じにベッドを取られるのだろうか。
そうでもないのに、一人暮らしには少し大きめの部屋が180センチ代の男がふたりもいれば、狭い。
今でも身の丈に合わない大型犬を二匹も飼ってしまった気分なのに。
「お布団が一組ありますから、使ってください。ベッドも使ってください。私はリビングに行きますから…」
「え?ソファーで寝るの?」
悟さんが残念そうな顔をした。何故でしょう…。
ソファーで寝るのが一番残念だと思いますが…?
「私と悟は寝ないから大丈夫だよ」
「な、なに言ってるんですか!?倒れてたのに…寝なきゃダメですよ!あと、明日はおふたりの服を買いに行きますからね!?さすがにボロボロの服じゃダメです」
まくし立てる潔高の側に、悟がチョロチョロと寄ってきて、ニヤリと笑う。
「そこまでしてくれるの?優しいね」
「い、いえ、そんなことはありませんよ。お二人ともお金持ってませんよね?なら、仕方ないですよ」
優しいとは違う気がする。
洗濯する時にポケットには何も入ってなかったし、もしかしたら暴行されて財布を取られたんじゃ…?
それにこんなイケメンがボロボロの服で歩いたら、目立ってしまう…。
ダメだ!職質されちゃいます〜!
「とりあえず、明日はお買い物に行きますから、お洋服着たら、帰れますし、我慢してくださいね」
「僕、家無いし、帰りたくない」
「ファッ!?…い、家ない!?」
「私も、家無いし、追い出されちゃって」
「家出!?おふたりとも、どういうことですか!?」
「女の子の家に居たけど、追い出されちゃってね」
ペロっと下を出して笑って、おどけた顔まで、キラキラになる傑さん。
ムーッとして唇を突き出す、子供っぽい顔まで、プリティーになる悟さん。
が、顔面どぉなっちゃってんだよ…!?
写真撮ったら売れそうだ。
特に傑さんの「女の家から追い出された」は不穏な気配がする。もしかして、クズ野郎なのか?
もしかして、ヒモ!?あり得る!この顔なら絶対ヒモになれてしまう…。
お金持ってないのも納得出来る。
まぁ、いいや、とりあえず疲れたから寝たい。
「と、とにかく私は疲れました…すみませんが、寝ますね。おやすみなさい」
「ヤダー!伊地知と寝る!」
「悟!ズルいよ!じゃんけんしな!?」
「ファーーッ!?」
後ろから両腕を引っ張られて、肩甲骨の凝りが解消されそうになる。
「あだ、だだだ!」
「傑が布団で寝ろよ!僕が伊地知と寝る!」
「あ"〜??悟、またかい?」
「また?傑のせいだろ?獲物が逃げたのは…」
「僕が最初に見つけたんだぞ!それをお前が横取りした」
「はぁ〜??捕まえたのは私なんだよ?おかげで食いっぱぐれたじゃないか、食い物の恨み、絶対に許さないからね!?」
突然、頭上でケンカが始まり、キョロキョロと潔高はふたりを見ていた。
なんの話?食べ物の恨み?獲物って?
それより一緒に寝たいからケンカが始まった?
「え…寝たいんですけど…離して」
パッと離すも、悟と傑は美形同士睨んでいる。
美形の怒った顔って怖いんだな…カッコいい。
「あの、私、ソファーで寝ますからね?」
「ヤダー!僕と寝て!ひとりで寝たくない!」
「え〜!?大人なのに!?」
「悟!伊地知が困ってるからやめな!」
やめなと言いながら抱きしめてくるのは、一体!?
ふたりの胸板にもにゅもにゅされる。
男の人のおっぱいって柔らかいんだな…私、胸無いから分からない。
いい匂い…え?なんで、私の家のボディソープしか使って無いのにいい匂いするの?化学反応でも起こしてます?
「くそッ、じゃあ、じゃんけんな!?」
「いいよ、さっきは負けたけど、今度は勝つ!」
悟の左手と傑の右手がパンッとクラップする。
お互いに拳を突き合わせると、3秒見つめ合う。
『じゃんけん、じゃんけん、じゃんけん、ぽん!』
ぽん!じゃない〜!なんで私取り合いされてるんですか!?というか、一緒に寝るってなに!?
「よっし!」
「だーーーッ!」
なにやら勝手に勝敗が決まっていた。
傑さんが勝ったらしい。
悟さんは布団に潜り込んで「傑のバカ、ロン毛、変な前髪、クズ、ハゲろ、女ったらし、一重」と一通り悪口を言う。
傑さんを見上げると笑いながら、ピキピキとこめかみ辺りを動かす。
「ダメ、ケンカしないで!もう寝たいので、寝ますよ!」
傑さんの手を引いて、照明を消してベッドへ潜り込む。
狭い!…やっぱり二人でも無理なんじゃ…。
お布団をかけて、ぽんぽんと叩いてから寝る。
即座に目を閉じた、もし至近距離で美形を見てしまったら、ドキドキで眠れない。
ギュッと目を閉じた。
何故か抱きしめられ、優しく頭を撫でられてビックリした。
「意外と積極的なんだね…ふふっ」
フッと耳元に囁かれた時、背中から腰までをゾクゾグが走った。
ちょ、なんですか、あの声!?
目を閉じてもイケメンが入り込んでくるぅ〜!
優しくて甘〜い声…うわぁ、声帯までどぉなっちゃってるんだ!
「潔高、いい匂いするね」
「〜〜!す、傑さんの方がしますっ」
「そう?いっぱい吸っていいよ」
「いや、あの、別に!ふぁっ」
チュッとおでこに何かが触れて…音がした…。
「可愛い子だねぇ…潔高、おやすみ」
大人しく大きな胸に包まれて、腰と頭に手を添えられてしまった。
え、嘘…………寝た?
私、この状態で寝るの?
待ってくださいよ、お母さん以外に初めておやすみのチューされちゃいました。子供の頃以来ですよ…。
いい匂いするし、抱きしめられて温かい、人のいる所で眠るの…久々だ。
なんだろう、頭撫でてもらうの、気持ちよかったなぁ…。
い、いけない!変な思考になった!寝よう!
翌朝ぐっすり眠れたらしく、快眠だった…。
傑のチューで起こされたので、潔高は変な声を出しながらベッドから落ちていった。
洗面所の取り合いでケンカ、朝起きてチューするのが自分だとかでケンカ…。
止めるのに必死だった。
朝ごはんを作ったら、それは食べてくれてホッとする。
いちごのジャムトーストは悟さんが喜んでくれたり、ちょっと良いドリップコーヒーは傑さんが喜んでくれた。
悟さんは付け合わせのミニトマトは食べないし、偏食だった。
残したトマトは傑さんが食べていたけど…傑さんはトーストもスクランブルエッグは食べないし…体に良くない。
悟さんはコーヒー飲まなかったので代わりに牛乳を渡した。
二人とも食べる物が偏りすぎて、どうしたらご飯を食べてくれるのか悩む。
家が無いなら、今晩も泊めないと…あ!お布団買うか!うちの布団、このふたりだと足が出ちゃう…なんでこんなデカいんだろ。
買わなきゃいけない物を決めた。
ふたりを連れて駅まで歩くけど、両脇にドン!ドン!とデッカい男がふたりもいて、道行く人から視線が…。
やっぱり目立つ、なんか自分が一緒にいるの恥ずかしい。
「伊地知、ごめんな?」
「へ?」
「私達のせいで、お金使わせてしまって」
「いえいえ!そんな…それに、家が無いなら、当分は家にいてください。うち、狭いですけど…いきなり追い出す訳にはいかないですから」
ふたりが腰を屈めて、潔高を覗き込む。
急にジッと見つめられ、立ち止まり、見上げた。
うるうるな甘く青い瞳と優しく細められた黒い瞳。
すごい、男の人が甘えた顔?してる…様になってるから、可愛く見える。
「え、と?」
「伊地知、優しい…僕、好きになっちゃう」
「伊地知、ありがとう」
「あ、え?…は?」
なんか聞こえたけど…気にしない気にしない。
駅ビルの中へ入り、お目当てのお店へたどり着く。
体格が良くても、トップスはなんとでもなりそうだ。今年の流行りがオーバーサイズで助かった。
ボンディングパーカーを色違いで、悟さんは白、傑さんは黒。
コットンのオーバーサイズTシャツを3枚ずつ、悟さんはライトグレー、ピンク、黒…傑さんはグレー、オレンジ、ネイビー。
色を顔に合わせながら選んでいく。
時折、傑さんは目が合うとニコッと笑ってくれる。
ドキドキしちゃうので、やめてほしい。
二人ともなんでも似合いそうだな…。
部屋着のスウェットセットも買っておく。
靴下や下着類もカゴに入れていく。
サッと潔高の手からカゴを取ると「持つよ」とウィンクする傑。
「ウッ…あり、がとうございます」
イケメンのウィンク初めて見た!心臓に悪い!
「僕も荷物持つよー」
「じゃあ、まだ買う物あるのでもう一つカゴ持って来ますね」
「持ってくる!」
無邪気な笑顔でカゴを取りに行って、帰ってくる間、女の子達が「キャー!?」とざわついていた。
うっ…早く買って帰らなきゃ…。
悟さんにお礼を言ったら、によっと子供みたいに笑っていた。可愛い。
「お二人とも、足が…長いので、股下が一番長い物で試着してみましょう」
無難にストレッチスキニーとデニムスキニーにしよう。
股下84センチ…これでダメだったらどうしよう。
ふたりを試着室へ通し、外で待つ。
チラチラと女の子達か向こうから見てくるけど、無視する。
シャーっとカーテンが開いて、二人が出てくる。
「伊地知〜!どう!?」
「ちょうどいいよ」
お二人とも顔もスタイルも良いので、なんでも似合う事は分かっていた。
よかった〜、丈がちょうど良さそう!
「悟さん、丈はちょうど良さそうですね。あとちょっと長くてもいいですが…」
「ん?そんなに気にならないよ」
「そうですか、分かりました」
悟さんはスキニーの黒、デニムのサックスにしよう。無難だけど使い回しが効く方がいい。
「スキニーもいいですが…こっちの方が傑さんに合うと思います。着てみてください」
後から見つけたデニムパンツを渡す。
バルーンの丸みがあるアンクル丈のデニムだ。
黒か白か迷ったけど、どっちも買っとくか。
傑さんは体格がしっかりしてるから、ラインが見えないゆったりしたシルエットのが似合いそうだ。
関節は見えない方がいいな、リネンシャツも似合いそうだな。
「はい、どうかな?」
出てきたら、予想通り良かった。
ワンサイズ大きめにして正解だ、ジャストサイズだと丈が足りなかっただろう。
長すぎず短すぎない。
「素敵です。よかった、これは色違いで買いましょう。白と黒にします」
「ふふっ、ありがとう」
「とりあえずコレを会計してきますね。後でお渡ししますから、着替えてください」
「分かったよ」
「うん、ここで待ってる」
「分かりました。すぐ戻りますね」
試着室の前の壁に寄りかかり、手をヒラヒラさせる悟さん達を置いてレジへ向かった。
最近はセルフレジが多くて助かる。気兼ねなく自分のペースで会計出来るのは嬉しい。
後ろから他のお客のプレッシャーなど無いし、電子タグが導入されてからは、Janの読み込みも一瞬で終わる。
すごいよな、カゴをそのまま置いたら何が入ってるかカウントされる。
アプリの会員証をカメラに読み込みさせると、一部商品がアプリ限定価格と表示される。
「あ、ちょっと安くなった。よかった」
Tシャツとデニムのパンツは限定価格だったらしい、あまり見ずに買ってた。
元々安いのに…それにしても助かった…というか、あの二人これからどうするんだ…。
決済を電子マネーで済ませ、店員さんにお願いしてタグを切ってもらった。
畳んでエコバッグに入れて戻ると、彼らが女の子ぐるりと囲まれていた。
「げっ…!?」
思わず声が出てしまった。
それに気付いたのか「伊地知〜!」と大きめに手を振る可愛い悟さん。
見た目は天使のように愛くるしいので、可愛いと思ってしまう。
近寄って行くと女の子達から(誰、このおじさん)みたいな雰囲気を出されて、しんどくなる。
老けて見られがちなのは分かってるし、こんなイケメンを連れてるのも怪しいよね。
「あ、あのお待たせしました。これに着替えてください」
女の子達は黙って退いてくれたけど、邪魔したみたいでムッとされてしまった。
しんど…い。
とりあえず、すみませんと謝ったらそそくさと散っていった。
も〜、なんか、どうしよう〜!早く帰りたい!
でも、夕飯の買い物したり、コーヒーくらい飲みたい。せっかくの休みなんだから!頑張ろう。
甘い物が好きな悟さんなら、フラッペとか好きだろうな…期間限定のいちごミルクフラッペ飲ませてあげたら喜ぶかな。
潔高は自分でも気付かないうちに、ふたりの事を考えていた。
着替え終えた二人にお礼を言われ、照れて笑った。潔高は選んだ服を着た二人がすごく似合っていたので、少し嬉しくなった。
悟さんはピンクのオーバーサイズTシャツに黒のスキニー、シンプルでも上下のバランスが良い、もう何も言うまい。
傑さんは黒のボンディングパーカーに白のバルーンデニム、こちらはゆるっとしていて、柔らかい雰囲気が彼に似合う。
「素敵ですね、お二人ともお似合いです。よかった〜」
フワフワと満足そうに笑う潔高に、悟が勢いよく抱きつく。
「ホワッ!?」
「ありがとう、伊地知、大好きだよ」
「え、は、はい?ちょ、ちょっと離れて」
傑さんにチラッと目を向けると、胸の前で両手をグーにして「悟!ズルいよ!私もギュッてしたい!早く代わりな!?」とお茶目な事を言ってくる。
コレは笑った方がいいのかな?なんか、すご〜く懐かれてるのかな??
結局、二人一緒にぎゅーっと抱きしめられて、胸に押し潰されそうになった。
「ほわ〜、クリームたっぷり!美味しそう!」
案の定、いちごミルクフラッペのポスターを見て、あ!と声を上げた悟さんに「疲れましたよね?お茶してから、お買い物に行きましょう」と誘った。
傑さんはアイスコーヒーで、朝と同じくコーヒーを選んだ。
自分は大好きなほうじ茶ティーラテにする。
家で飲めない物は時々飲むから美味しい。
「ん、甘い、美味しい」
「よかった〜、あ、今晩のお夕飯は何が食べたいですか?」
そう言った直後、自分の言葉に不思議と驚いた。
アレ…なんでこんな、私…この二人の夕飯作るんだろう?
ヒモを飼う準備してるんだろうか…?
「あのさー、僕達、吸血鬼だから夕飯は要らないよ」
ブハッと飲みかけのほうじ茶ティーラテが口から出て行った。
嘘でしょう……????
女神のコーヒーショップで話す内容では無いことは確か。
「あ、あ、きゅ、きゅーけつきって…アノ?血を吸う?」
「そう、だから夕飯は血がいい。伊地知の、飲ませて。僕達、狩りに失敗したからお腹空いちゃってさ」
「悟、失敗したのは君のせいだろ。私が捕まえたのに」
色々ツッコミたいけど、私、もしかして餌になるんですか?
「え…と、どうして失敗したんですか?」
「僕達さ、顔がいいから女の子ばっかり捕まるの。流石に同じ味で飽きちゃって。男を捕まえようとしたら、取り合いしてケンカになっちゃって…男には逃げられるし、お腹空いてたのにケンカしたら、もっと疲れちゃって、体回復するまで寝てようって…そしたら伊地知が助けてくれた。ありがとうね」
え〜〜〜誰かに襲われてた訳じゃなくて、自分達でボロボロになってた〜〜?????
しかもくだらない理由で…?嘘でしょう。
キャットファイトが激しすぎて、あんなボロボロになってたのか…心底どうでもいい。
「驚かせてすまないね。でも怖がらないで、血を吸うけど、殺すわけじゃないんだ」
「は、はぁ…あの、だからご飯を食べないんですね?じゃあ、あの飲み物は何故、飲めるんですか?」
甘いフラッペを啜る悟を不思議だと思い、見上げる。
傑さんも今朝はコーヒーを飲んだし…。
「人間と同じで、主食以外にもお菓子やお酒やタバコとか趣向品ってあるよね?僕ら血だけで生きられるけど、やっぱりそれ以外に必要なんだよね」
「私はタバコやコーヒーもお酒も好きだよ」
なるほど…吸血鬼って言っても割と人間と同じような感覚らしい。
「では、家が無いって言うのも…なにか理由が?」
「それなんだけど、吸血鬼って家を持たないっていうか…」
傑は腕を組んで、悟に向かい合い頷く。
「招かれたら、好きになっちゃうっつーか…伊地知から家に来てって言われた時、ドキドキした…」
「私も…惚れちゃうよね、招かれちゃうと…ね?」
ねー?とお互いに照れて笑いながら、飲み物を飲む。
「は?え…?」
「伊地知、好きだよ。僕、ずっと一緒にいたいな?」
「私だって好きだよ。伊地知にも愛されたい」
両側から手を握られ、甘えたように見つめられる。女の子なら、イチコロかもしれない。
「あの…その、私、男ですよ?血だって、ほら、見た目ガリガリなんですよ、美味しい訳ないでしょ?ハハハ」
そう、男の血が飲みたいとか以前に、こんな不健康な男の血が美味しい訳ない。
新鮮な若い子の方がいいんじゃないかな?
二人はニコッと笑うと、手をスリスリと撫でてくる。
「伊地知は絶対美味いよ。だって、童貞でしょ?」
「どどどどどっ!?いや、あの!?ここ、カフェなんでぇ、お願いしますよっ!?」
変な事言わないで欲しい、もう吸血鬼の言葉でもかなり大変かもしれないのに!
傑さんが耳元に手を添えて囁いてきた。
「私達、分かるんだよ。童貞や処女って、匂いでね。美味しそうな匂いしてるからね…それにそうそう居ないだろ?」
「さ、囁かないでっ!」
童貞がそうそう居ないとか、傷つくので言わないで欲しいです。
「恥ずかしがる事ないじゃん、良い事だよ。なんなら、これからは僕達がいるし、恋人にしてよ」
「ハ!?こ、こい…?」
「私も立候補するよ、どうかな?」
いや、待って、良い声で囁いて来ないで。
耳おかしくなりそ…ひぃ。
「と、とりあえずっ、好きでもないのに、そんなの無理。家に招いたから好きってなんですかっ、訳分からないです」
潔高の真っ赤な顔を眺めて、ふたりはそっと離れた。
「吸血鬼にとって、それは口説き文句と言うか…ドキドキさせられてしまう言葉なんだよ。」
ええっ!?そんなつもりないのに…どうしよう。
「吸血鬼は家持たないから、それを提供してくれるとなんか、こう…好きになっちゃうな?」
傑さんは何度も頷いている。
「悟は実家あるけど、家出中なんだよね」
「さすがに実家住みの吸血鬼とかダセーじゃん?親にも言って出てきたし、帰るつもりないよ」
「まさか、私の家にずっと居るつもりでは無いですよね?」
悟さんは首を傾げた、あ、これはそのつもりだ。
「そうだけど?伊地知の事好きだもん」
実家住みより、ヒモの方がダサいと思うんですけど…。
「いや、ちゃんと出てってくださいよ。次の家見つかるまでは居てもいいですけど…悟さん実家あるなら帰ったらいいでしょう。ヒモはダサくないんですか?」
悟さんはもう一度首を傾げて、分からないって顔をする。
傑さんが笑いながら「吸血鬼はヒモなのが普通なんだよ」と答えた。
笑い事ではない。潔高は絶句してしまった。
傑さんの女の子の家にいた理由も、吸血鬼はヒモだから?
「次の家なんか探さないよ。伊地知の側にいたいし、好きなんだから無理」
「私も伊地知の血が飲みたいな。私達、基本的に食費はかからないし、寝なくても平気だよ」
ニコーッと笑う傑さんにそうじゃないと言いたい。
「寝なくても平気だから、お布団要らないって事ですか?」
「そうだね、血が足りない時だけかな、寝るのは」
「いや、あの…なんか、人間とは違うって事は分かりました。今夜、帰ったら血を、分けますから…次の家見つけてくださいね」
「ヤダ。伊地知の側にいたい」
「私も、血は欲しいけど出ていきたくない」
話が通じなくなって来て、すぐに諦めた。
あぁ…なんて人を拾ってしまったんだろう。
食費はかからないが、趣向品にはお金がかかった。悟さんはお菓子、傑さんはタバコを欲しがる。
自分の分の食材とお酒を買って帰った。
傑さんが「持つよ」とあの綺麗な顔で笑いかけて、荷物は持ってくれた。
思わずドキッとしてしまったが、ヒモらしいと言えばそうであった。
帰ってから夕飯の支度にとりかかる。
その間、悟さんは棒付きキャンディーを咥えて、私の後ろに立っていた。
「あの?なんですか?」
「ん?あ、可愛いから見てた」
「へっ!?」
後ろからそろっと抱きついて、耳元で笑う。
手元が狂いそうになり、やめてくださいとお願いしていたら、風呂場の方から傑さんが戻って来た。
「伊地知、お風呂洗って入れてるから終わったら入りな?」
「あ、すみません!」
「家事は手伝うよ。お洗濯物は取り込んでおくね。悟、邪魔しちゃダメだよー」
そう言ってベランダの方へ向かい、テキパキと洗濯物を取り込み、畳み始めた。
すごい、これはもはやプロの領域では…?
「あの、傑さんはお料理も出来ますか?」
「もちろん。悟とは違ってね。そいつはお坊ちゃんだから、なーんもしないよ」
ぷーっと頬を膨らませ、ギュッと抱きついてくる。
悟さんを見上げると「僕だって教えてもらえば出来るもん。伊地知、僕にも教えて」と見つめられる。
「じゃあ、料理から…やりましょうか」
「ホント?」
「はい。私のお手伝いから」
「するする!」
とりあえずお野菜を洗って切るとか、それくらいから始めた。
悟さんは意外にも器用でやれたので、そんなに苦労はしなかった。
上手だと褒めたら嬉しそうに笑ったので、可愛くてちょっと心が揺れる。
無邪気な所が可愛い。
ご飯の支度を終えて、部屋の引き出しから自分のパジャマや下着を取りに向かうと…。
引き出しの中身は先程の洗濯物が、きちんと畳まれ、並べられていた。
しかも、洗濯した新しい物は後ろへ、これから使う物は前に並んでいる。
「すごい…」
お風呂に向かい、浴室のドアを開けるとお風呂には入浴剤が入っていて、マットや手桶が綺麗に並んでいた。バスタオルやフェイスタオルも準備されている。
服を脱いで、洗濯機に入れる時も柔軟剤や洗剤が既に洗濯機にセットされていた。
「傑さん…プロなのか?」
お風呂はいい湯加減で、ホッとして気持ちよく入れた。
シャンプーを出した時、アレ?と疑問に思った。
確か、シャンプー無くなりそうだったはず…入れなきゃと思っていたのに、入ってる。
傑さんが入れたに違いない…。
「傑さん…気が利く人だな…」
だから多分、女の子のヒモだったんだろう。
なんとなくモテる理由が分かった。
お風呂を上がると傑さんに「シャンプー、ありがとうございます」とお礼を言うとにこーっと目を細めて笑う。
キッチンの換気扇の下、紫煙を揺らしつつ、冷蔵庫から缶ビールを2本取り出す。
「はい。乾杯しよう?」
「はいっ…」
カンッとあまり響かない音に釣られて、悟が唇を尖らせながら顔を覗かせた。
「ズルくね?二人だけ楽しそうじゃん」
傑が手の甲を見せながら、しっしっと振った。
タバコを咥えたまま、潔高の隣で笑う。
「ハイハイ、早く風呂入んな?」
小さな舌打ちを残して、悟は消える。
「悟は下戸なんだ。だから伊地知は私と飲もうね?」
タバコと酒を行き来するごつごつした指と紫煙の甘い香り、優しいのか優しくないのか分からなくなる。
こくんっと子供のように頷く潔高に微笑むと、指先で濡れた前髪を退ける。
「可愛い子だね、潔高は」
「へっ…?」
「はい。おつまみも食べなー」
冷蔵庫からお豆腐に角切りトマトとキムチを乗せた小鉢を出す。
「えっ、作ったんですか?」
「うん。ごま油かけて、完成。はい、どうぞ」
キッチンの小棚からごま油を取り出し、お豆腐にかける。
お箸と一緒にテーブルに持って行くあたり、伊地知は行儀が良い。
キッチンで食べちゃえばいいのに。
ビールも添えて、頂きますと手を合わせる。
傑も向かいに座って、肘をつくと少し厚めの唇を引き上げる。
「美味しいです、これ簡単に作れますね。トマトとキムチって合うんだ。お醤油が無くても、キムチとごま油の塩気が効いてる。私も作ってみますね」
「そ、乗せるだけだからね。今日はお疲れ様でした。当分は居候だから、家事や料理もするよ。して欲しい事があったら何でも言ってね?お使いくらいなら悟も行けるし」
家事や料理は無理だけどとニヤリと笑う傑さん。
確かに…野菜切るのも初めてだった人が家事をする訳ない。
逆に傑さんは家事や料理を任せても良いかもしれない…ちょっと、悪い気もするけど。
「あの、出来る範囲で結構なので…よろしくお願いします」
「素直でよろしいね。潔高は可愛いね。毎日
お仕事大変だろう?家の事は私がやっておくから」
えぇっと…お嫁さんが居たら良いなーと思ったりもしたけど、なんかそうじゃない。
これじゃないです…なんだろ、確かに家事をやってもらえるのは嬉しいけど…何でこうなるんだろ。
「は、ははは、美味しい」
エキゾチックな黒髪ロングのイケメンに家事をお願いする日が来るのは、お嫁さんが来るよりも確率が低い気がするよ。
おつまみは美味しいし、ビールも用意してくれる。お嫁さんみたいな事をしてくれるイケメンは吸血鬼らしい…が、さっきからビールを飲んで笑っている。
「あの、吸血鬼って何か気をつけることありますか?私…何も知らないので…これから暮らす時に何をしたらいいか…」
律儀な所も可愛らしい。まるで初めてペットを飼うみたいだ。
実際、ペットの方が可愛いだろうに。
傑はクスクスと笑いながら、タバコを灰皿へ押し消す。
「血をもらいたいね。1週間に一度でいいよ。食事は特に必要ないから」
なら食費、変わらないかも…と伊地知は呑気に考えていた。
趣向品を買うにしても、そんな毎日じゃないだろう。
「さ、ご飯食べて、ゆっくりしてよ」
作っておいたご飯を温めにキッチンへ戻り、お風呂上がりの悟さんにジュースを渡していた。
悟さんが席に着いて私が食べるのを楽しそうに見つめる。
美味しい!?美味しいですよを繰り返した。
悟さんが切った野菜を食べると、嬉しそうに笑っていた。
あのキラキラな水色の瞳がニコニコするので、不覚にも可愛いと思ってしまった。
無邪気な子供みたいな悟さんも血を吸うのか。
焼うどんを食べながらボンヤリと眺めていた。