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    creapmilkcrazy

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    なんかちょっとだけ続いてます。
    まだ途中です😭

    #五伊地
    goiji

    ベランダベランダ2


    金と時間と余裕さえあれば、ワンオペ育児は楽勝だと思っていたが、絶対に一人ではどうにも行かない時は来る。
    そのため、大親友の一人に助っ人を頼んだ。
    プロのベビーシッターを頼めば良いだろうが、これからも親友に頼むかもしれない。なので慣れてもらうために呼んだ。
    インターホンが鳴り、潔高はパッと顔を上げた。
    「あ…!」と指を玄関へ向けて、五条を見ている。誰かが来る事なんて、あまり無いし、宅配便かウーバーイーツくらいだ。
    「潔高、玄関を開けに行こう」
    トトトと廊下を進み、潔高はピンポーンが鳴るとワクワクして玄関を覗きに行く。
    まだ鍵を開ける事は出来ないから、一人で出られない。
    「さぁ、誰が来たか、覗いてごらん?」
    抱き上げて覗き穴に近づけると、小さなレンズの向こうに張り付く。
    きっと大親友がいるだろう。多分、子供が僕よりも好きな人間だから、気合いが入っているはずだ。
    僕だけと一緒にいる時間が多すぎて、潔高に良くない気もして来た。
    本当は可愛いから、旅にも外にも出したくなんてない。
    「あ…っ!」
    興奮したのか、僕に振り返ると黒い瞳をコロコロと輝かせる。一度抱き直すと顔を同じ高さにして、目を合わせた。
    子供は鏡のようだと思う、僕の顔が真面目になったら、潔高も同じ顔をする。
    きっと笑ったら、潔高も笑うんだ。
    「潔高、今日は僕、お仕事でどーしてもお出かけするんだ。潔高はお留守番だよ」
    「なに?…おる…す?」
    「お家で待ってる事だよ。僕の代わりに、お兄さんが来たから、遊んでてね?」
    「…うんっ」
    「良い子だなぁ…お土産何がいいかな?なんでも買ってあげるよ」
    「…?」
    「欲しいものない?おもちゃ?お菓子?なんでもいいよ」
    「…おもちゃある、おかしある」
    家にはおもちゃもお菓子もあるって言いたいらしい。潔高は真面目な顔でそう答えた。
    潔高は普段から何かが欲しいとか言わない。
    お買い物に行っても、物に興味を示す時もあるが、手に取って見て、戻すを繰り返してる。
    僕がガキの頃なんて、欲しいおもちゃがあったら、床とお友達かってくらいに頻繁にゴネたのに。
    これが欲しいの?と聞いても、見た後は何にも反応しない。
    だから欲しい訳じゃないんだろう…ただ、興味があるだけなんだ。
    潔高が欲しい物が未だに分からない。
    七海からもらったテディベアは大切にしてるが、選んだ訳じゃない。
    「潔高…潔高が欲しい物は無いの?」
    このままじゃ、いつか来るお誕生日に間に合わないかもしれない。
    「なぁ、潔高〜、金ならあるんだよ〜」
    「カネ…?」
    「おっと、なんでもないよ…ごめん。なんか美味しいケーキ買ってくるね…」
    多分、ケーキなら食べてくれるかな…。
    ギュ〜っと抱きしめて、潔高の頭を撫でると肩に頭を乗せてくる。
    前はこんな風に体を預けてくれる事はなかったのに、嬉しくて愛しい。
    マジ?今から僕、仕事なの?ヤダ!
    ライトグレーのスーツを着たまま、抱きしめていたら、さすがに遅いのかもう一度インターホンが鳴った。



    「あ!」
    潔高が声を上げて、ドアに振り返る。
    深いため息を吐いて鍵を開けた。
    「あーハイハイ、開けますって」
    向こうからドアノブを引っ張ったのか、ぐぃんっと勢いよく開いた。
    「きよたかく〜ん!こんにちは〜!!すぐるお兄さんだよ〜!」
    どデカくてガタイの良い男がキ◯ララのエプロンを着けて、両腕を広げて待っていた。
    潔高はポカンとして、まぶたをパチパチとさせる。
    「お前、声デケェし驚いてんだろ…怖がらせるなよ。ハァ…今からでもベビーシッターかショーコを呼ぶぞ?」
    「ベビーシッターなら分かるけれど、ヤニカスの硝子に子守りが務まるかい?すぐるお兄さんの方が良くない?いきなりクビかな?」
    「つか、キ◯ララってキャラじゃねーだろ。サン◯オを着ていい見た目じゃないの分かってる?」
    「可愛いと思ったんだけど…だって、幼稚園の先生ってみんな着てるし…せっかくビ◯ティッ◯スで選んだのに…」
    真面目な男だから、ファンシーショップでちゃんと悩みながらキャラクターエプロンを選んだ所が頭に浮かぶ。
    あまりにも似合わなくて笑えた。
    「お前、形から入るんだな…」
    「ふふふ、どうだい?ゆめかわいいだろ?」
    「いや、ク◯ミちゃんのが似合うだろ」
    「あー、実はマ◯メロと悩んだよ。可愛いだろ?」
    片目をつむり、人差し指をこめかみに当てながら悩んだと言う。
    「そこはどーでもいいよ。はい、僕のお友達のすぐるくんで〜す」
    潔高に傑を紹介すると、ペコリとお辞儀をする。
    こんにちはが出てこないのも、あまり人に会わないからだ。
    「こんにちはっ、きよたかくん」
    「こ、こんにちは…いらっしゃませ」
    「いらっしゃませ…って可愛い〜!えらいね〜そんな事言えるのか〜」
    潔高は恥ずかしくなったのか、顔を反らしてしまった。
    「じゃあ、よろしくな。傑」
    潔高を降ろして玄関を出ると、傑が入れ替わりに入った。
    「はい、いってらっしゃい〜」
    「バイバイ…」
    「きよたかぁ〜…バイバイやだよ〜」
    悟はしゃがむと抱きしめて「チューして!いってらっしゃいのチュー!」とせがむ。
    「おいコラ、早く行きな」
    傑がゴミ見るような目で見下ろしてくるけど気にしない。
    潔高は悟の顔をペタペタと触ると、ほっぺに唇を添えてくれた。
    触れるだけのキスだが、悟のやる気に着火するには充分だった。
    「…キヨたん…僕、頑張るね」
    「バイバイ、バイバイ」
    そう言って小さい手をヒラヒラさせてくれる。めちゃ、可愛い。離れるの寂しいけど、いってらっしゃいしてくれるのは可愛い。
    そうして会議に向かった。
    潔高にチューをしてもらった、今日の僕は無敵だ。




    「最強の悟くんご帰宅だぞ〜!?ただいま〜!」
    無事に家に戻ると、お出迎えが傑しか来なかった。
    「ハ?おい、キヨたんを出せや」
    「悟…おかえり。潔高くんは今なんか元気なくて…」
    「ハァ!?熱!?怪我か!?大丈夫なのかよ!」
    「大丈夫だよ、ただ、その…公園行ったんだけど…」
    思わず胸ぐら掴んで悟は凄んだ。
    「こ、公園デビューしたのか!?僕以外のヤツと!?僕だってまだなのに!傑の馬鹿!」
    「まだ公園行ってなかったのかい?いや、遊ぶならお外が良いかなって思ったんだよ。でも…あまり遊ばなかったよ」
    傑から離れると、エプロンを直して部屋に戻った。
    リビングの床の上に座って、潔高はテディベアを握っていた。
    見るからに背中を丸め、肩は落ち、俯いている。
    「…え、何?めちゃくちゃ落ち込んでるじゃん…」
    買って来たお土産のケーキをテーブルに置いた。
    新しいおもちゃも買って来たから、それで機嫌直してくれるといいけど…。
    「潔高く〜ん…ただいま〜」
    背中に声をかけるけど、無視された。
    あー、ダメだ。もう聞こえませんって感じだ。
    「まぁ…その、とりあえずケーキ食べようぜ?な?」
    傑が準備する間、哀愁漂う背中を見つめた。




    ゆでたまごの殻も剥けなかった悟が、子育てをし始めたと聞き、不安になったのは私だけじゃなかったはずだ。
    頭も良いし、仕事も出来るが、イコール家事も育児も出来るとは限らない。
    なんでも出来る人だと周りから思われているが、悟のゆでたまごを剥いて来たのは、悟の乳母だ。
    ついでに私はぶどうの皮を剥いた事がある。情けない作業だ。
    そんな悟が子供を引き取ると言い出して、不安になった。冗談だと思っていたが、3ヶ月後に聞いたら本当だった。
    確かめに来たら、案外普通に暮らしている。
    部屋はこまめに掃除しているし、子供が触らないように物が落ちてない。
    冷蔵庫を開ければ、作り置きのおかずがタッパーに入っていた。にんじんのグラッセは小さく切ってあった。
    ゆでたまごもタレに漬けてあった。
    白身がボロボロになって欠けているけれど、美味しそうだった。
    なんだが笑えてきた。あぁ、硝子に教えたい。
    悟がゆでたまごを作れるようになったって。
    キッチンのカウンターには子供用におやつもカゴも乗っていた。
    中にはたまごボーロやア◯パンマ◯グミもチラッと見えた。
    人って変わるんだなぁ…。
    「なぁ、悟」
    「ん?何?」
    お茶を入れて、テーブルに持って行くとケーキを皿に乗せて、悟が潔高に振り向いた。
    「なぁ、公園でケンカでもしたの?」
    傑は首を振って、話し出した。
    公園に行く時は楽しそうに歩いていたが、着いたら驚いていた。
    『潔高くん、何から遊ぼうか』
    『……』
    ママー!と言う声が聞こえた。
    一緒に公園の中を歩いて、子供連れのお母さん達に挨拶した。
    『こんにちは』
    黒髪長髪イケメンが現れて、お母さん達は華やいだ。
    愛想良く笑って仲間にいれてもらったのだけど、潔高くんはお母さん達を見上げてばかりだった。
    人見知りしたのか、喋らなくなって、子供達の仲には入っていけなかった。
    何もせずに帰って来たけど、なんだか落ち込んでしまった。
    「ハ?遊ばなかったの?」
    「んー、ブランコしようって誘っても、無だったよ。家に居た時は私にも話をしてくれたのに、外に出たら、無反応でね。人見知りしたのかな」
    「……ケーキ食ったら、もう一度、公園行ってみるかな」
    潔高を呼んでもやっぱり無反応で、抱っこして膝に座らせ、ケーキを口元に持っていく。
    「ほら、美味いよ。食べないのか?」
    「………」
    「悟くんが食べちゃうぞ〜」
    パクリと食べて見せるも、潔高はボーっとしていた。
    「悟、潔高くんの分ちゃんと残しておきなよ」
    「分かってるよ。どうしたのかな…」
    「ごめん、私が何かしてしまったのかもしれない。機嫌、直してくれるといいけど…」
    「あー、大丈夫だろ。傑のせいじゃないよ。ちょっと難しい子なの。な?潔高」
    潔高は黙って冷たいお茶を飲んでいた。
    しゅんっとして、目を閉じた。
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