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    いしえ

    @i_shi_e

    新規の文章と絵などの公開をこちらに移動。
    幽白など。文と絵(と過去は漫画も)など。
    幽白は過去ログ+最近のをだいたい載せています。
    一部、しぶにあげている小説ものせています。
    以前のものだと、ごっず関連や、遊Aiほか雑多。

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    いしえ

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    忍の没後、亜空間にて、とこしえを生きる。忍からは、各人格ごとにひとつずつ贈り物を詰めたタイムカプセルが贈られていたのだった。

    #幽白腐向け
    ghostsAndGhostlyRot
    #仙樹仙

    とこしえを贈り合う/仙樹仙 ひとつの人格につき、ひとつずつ。樹への贈り物を詰めたそのタイムカプセルは、永劫、あくことのない。
     忍の言い出したそれに、樹は多少なり驚いた。ナルならばまだわかるけれど、と。同時に、言い知れぬよろこびが身に沁みゆくのも感じたものだ。忍が、主人格たる彼が主導したそのプレゼント。それは、約束されしとこしえへの返歌。お前がオレに、永遠をくれる。だからオレも、お前に、永遠を贈ろう―― 彼らは、とこしえを贈り合うのだ。
     忍のなきがらを抱き締めながら、樹は、時折、タイムカプセルの中身を繰り返し想像する。シャイなカズヤは恐らく、ろくなものではなかろう。ナルは、たとえばハートのロケットペンダントとか? ヒトシはちいさな植木鉢、とか。忍は…手紙かもしれない。ふっ、と、笑みのこぼれるそれらの、想像にすぎない中身が、樹に、自身のてのひらをぼうっと見つめさせる。きゅっ、と、ちいさく握って、開き、忍の手と重ね握りしめる。
    「なあ、忍…お前は、オレに、なにをくれたんだろうな」
     こてり、と、かたちよい頭を胸元にて撫ぜ、誰の邪魔も入らぬ亜空間ですべて気を許し、自然やさしく、綿雲よりもやわらかくなる声音で問いかける。忍の髪を梳いては整え、頬を、くちびるを、寄せる。当然、忍のなきがらから直接的な返事はない。樹の笑みが、深まった。箱を開ければ、容易く答えは知れる。彼らの意図も、容易に知れよう。だが、樹には開けるつもりは永劫なかった。
    「…お前のくれたこの箱の中身を、想像するとき――オレの頭から、足のゆびさきひとつさえもが、お前の人格たちと過ごしてきた時間を思い出すよ。ああ、あのときのあれだろうか。こんなことも、あったものだな、と…。…ありがとう、忍…」
     いつくしむゆびさきは、忍の前髪の一束を絡げ、ふわりてのひらで掻き上げてまたつまむように整える。樹にとって、忍とのとこしえに、別段時間つぶしのようなものは無用。彼と自分と、それさえ居ればいい。ほんとうに、それだけだったのだ。だから、ただただこの贈り物が意味するのは、自分たちの過ごしてきた短くも永遠に等しい時間が、正しく、永遠なのだという証明。そのあかしが、うれしかった。
     とわに、箱の中身に想いを馳せるとき――馳せ、つづけるとき。そこに初めてとこしえが、成立する。忍から贈られたとこしえが、永劫続く時間が、約束されるのだ。樹は、その、これからさきの永遠を想う。箱の中身は、正解を求めない。箱の中身は、儚い刹那をとこしえに、換える。箱の中身は…
    「……ははっ。今、ひどく陳腐な言葉が浮かんだよ。…“箱の中身は、愛”。…これがTVドラマのクライマックスなら、きっと視聴率は伸び悩むだろうな。だが…オレは、たとえば何も書かれぬ紙切れひとつでも、…いいや、空気の入っただけの箱でさえ、お前の遺したものからそれを、感じ取るのだろうな。やはり人間くさいやつだ、と、お前は、いつものように曖昧に笑むのだろう…」
     人間であることを、誰より悩んでなお、樹の人間くささを愛した彼。人間であることを、誰より恥じてなお、樹のその中間性を、愛した彼。樹は“人間くさい”妖怪で、忍にとってその曖昧さは、やわらかな憧れだった。自身はたとえ魔界で死のうと、魔族になることはない。解っていてなお、それでも、なお。人間なのに、魔界で死にたい。――人間だから、魔界で、死にたい。断罪。裁きは、自身によってのみ。忍の望みは、それだけだった。
    「ああ…お前に寄り添いつづける時間は、幸せそのものだ……愛している、忍……」
     額に口づけて、ふわり、笑む。贈り合われたとこしえは、今日もどこかで人知れず、そのカプセルを時空の狭間に浮遊させている。





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    いしえ

    PAST短編集『主従ア・ラ・カルト』2020/01/18大安発行。受攻お任せ多めバトビ主従CP全年齢本web再録。本への編集時にいれたあとがき等以外全てpixiv公開の短編小説で、webから本にしたものを更にポイピク用に編集しweb再録。
    もくじ、まえがきあとがき、ラストにいれた文章も入れましたが、挿絵のメニュー表等、関連画像https://poipiku.com/26132/9933701.htmlにて
    主従ア・ラ・カルト/受攻お任せが多めのバトビ主従CP全年齢本【本からのweb再録】◆Menu *受攻お任せのものについて…片方で見て頂いてももちろん構いません! as you like

    ◆それはおやすみの魔法(原作主従)
    独自設定(ハーブ、今回は特にカモミールを母の影響で生活によく取り入れてきた幼少期と、カイン改心時の話)。
    カインの父が亡くなったとき習慣が続くか途絶えるかで、2パターンに分岐します。
    受攻曖昧(ジョシュカイ寄りの部分とカイジョシュ寄りの部分とが混在)です。

    ◆propose -誓いの宣言-(原作5年後)
    原作ラスト、5年後の、18歳と21歳の主従。
    受攻お任せですが主からのプロポーズ(従もするつもりがあった)。受攻がニュートラルなかんじです。わりとカイジョシュ寄りに見えやすいですが、そう見えるジョシュカイっぽい要素もあるかと思いますので、そんなかんじで大丈夫なかた向けです。
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    いしえ

    DONE甘いけど終盤シリアス。頭の回転の良い蔵馬や真面目な桑ちゃん相手に、樹はさぞかしたのしく話し甲斐があったろうなぁ、と感謝が止まらないですね…彼らのさいごのヒトとの関わりに華々しさがあるのマジで泣ける…
    忍が霊界に行く気なくて樹もそのつもりだったから霊界は死期が近くともイコール霊界に来る予定者リストには把握できてなくて、その意味でも忍が消息不明だったんだろうな。静かな風がさらうべく在るたましい尊い……
    さざなみが、寄せては引く/仙樹仙&ナル樹で樹のノロケシーンif/樹+蔵+桑(一瞬名前だけミノルも) 亜空間は樹を語り部に、静かな線香花火を、ぱちり、ぱち、とはぜさせる。ぱち、ぱちと、それは何の喝采もなく、静かに、しずかに、ちいさくはぜるのだ。それはちょうど、“仙水”の別人格について樹が語っていた時のこと。ナルという女性人格について、樹はこのように語った。
    「オレはよく彼女に悩みを打ち明けられ、そして慰めた。忍とカラオケに行くと、ナルはいつもひょこりと顔を出し、決まってオレに『守ってあげたい』をリクエストしたものさ。彼女はいつもうれしそうに、――そしてさびしそうに、オレの歌声に耳を寄せていたよ。彼女はたいてい『悪女』や『あの娘』を選び、歌いながらぼろぼろ涙をこぼしていた。オレはそんな彼女の肩を抱き寄せ、そして胸を貸していた。これからも、きっとそうするだろう」
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