人形は歌わない アズカバンの囚人 X 夕食後、寮に戻るために大広間を出た。何かやらかした生徒のせいで、いつもの帰り道が使えず、外に面する廊下を通ることになった。寒さに身を震わせながら、沢山の生徒たちが早足で通り過ぎていく。ふと、珍しく雲のない宙を見上げた。瞬く星、満月が終わって、不完全な形の月が明るくホグワーツを照らしている。
『シリウス』
『何て?!』
『今日はよく見える』
『なんだ、星のことか』
まだ幼かった私がかつてしたように、外にふらりと出て、星を眺めた。あれがシリウス、北極星はあそこで、プロキオンと……
『おや、みんな揃ってどうしたんだい?』
『あ、ルーピン先生』
『咲夜が、星を眺めてるんです』
『先生、今日顔色悪かったけど、大丈夫?』
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