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    CocoKujyaku

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    7/3 MDZS交流会6 黒兎 展示小説

    少年の頃の魏無羨の話を江澄から聞き出した金凌は、仲のいい藍思追と藍景儀に話ていた。

    双傑二人の過去話を捏造錬成しました。

    #MDZS
    #双傑
    doubleJacket
    #忘羨
    WangXian

    お前たち、今日は魚だ! 『お前たち、今日は魚だ!』


        
    「魏無羨ッ!」
     ギラギラと、憎く思うほど太陽が照りつける中、雲夢江氏の江晩吟は剣を片手に水中へと飛び込んだ。
     
     時は少し遡る——。
     江氏の宗主、江澄の父親で魏無羨の義父である江楓眠から、川で水鬼の被害が増えているため、討伐を頼まれた。訓練ばかりで、夏の暑さにも辟易していたところに、久しぶりの夜狩とあって江澄たちは大喜びで件の川へと意気揚々向かったのだった。
     実際、周辺へ聞き込みをすれば、被害が出始めてから今までで一年以上も時が経っていた。最初は月に一人あるかないか。だが、ここ数ヶ月で被害の数は増し、ついには渡り船が被害に合った。これがきっかけとなり、江氏へ話が持ち込まれたようだ。
     よく冷えた果物を口に放り込み、聞き込みを終えた弟子の前で魏無羨は名案が浮かんだと、江澄の肩に腕を回して話し出した。
     
     『江澄、あの手でいこう! ほら、川で試したあれだ。魚も水鬼もそう大差ないって! よし。いいか、お前たち! 俺が先に潜って水鬼どもを引きつける。時を見て、背後から江澄が。追い込みに成功したら全員で一網打尽だ。いいな!』
     
     元気よくそう宣うと、魏無羨は常よりも澱みのある川の中へと勢いよく飛び込んだ。
     溺れたふりをして、笑顔でジタバタしている魏無羨を眺める。追い込む先には、弟子たちを先回りさせたあとだ。
    「あいつ、あれで成功すると思っているのか」
     鼻で笑うが、江澄の目は一時も魏無羨から離れることはなかった。
     二柱香ほどして、魏無羨に変化があった。きょろきょろと水面を見ては、時折こちらに顔を向けてくる。その顔から、いつもの笑顔は消えていた。
     それを不思議に思い、だが声をかければ水鬼に気付かれると江澄はぐっと奥歯を噛み締め耐えた。
     ゆっくりと三毒を抜き、いつでも飛び込めるように腰をわずかに落とす。
     すると、魏無羨の顔に焦りが見えた。次の瞬間には水中へと引き込まれ、気泡すら上がってこない。
    「魏無羨ッ!」
     江澄は声をあげて、勢いよく水中へと飛び込んだ。視界はあまりよくないが、魏無羨の赤い髪紐を見つけると江澄はその周辺に水鬼が多数取り囲んでいることに気が付いた。その上、どうやら両手足を掴まれているようで身動きが取れなくなっているではないか。
     ——このままでは、魏嬰が死んでしまう。
     焦り、江澄は三毒を彼に向かって勢いよく投げた。霊力を纏ったそれは、江澄の思う通りに魏無羨へと向かっていく。随便を握る左手に纏わりついている水鬼へ狙いを定め、こちらに気が向くように刺した。急いで剣を引き抜き、手元へ戻す頃には眼前に先ほど刺した水鬼が迫っていて、江澄は剣を掴むとその勢いのまま後ろへと流れた。水鬼との間に、わずかな距離が生まれる。その背後には、こちらに気づいた別の鬼たちも江澄へと目を向け、一斉に向かって来ていた。
     剣を掴んだまま、江澄は水上へと飛び上がる。足を掴もうと飛び出した水鬼を蹴り飛ばし、空中で一回転して剣に乗れば、先ほど魏無羨が沈んだ場所へと剣に乗ったまま勢いよく飛び込んだ。
     まだ、水鬼が二匹、魏無羨の両足を持って川の底へと引っ張っている。随便を抜けばいいのに、なにをしているのかと見れば、随便を握る手から血を流していた。
     口の中で悪態を吐き、水鬼に掴まれていようが関係ないと、勢いのまま魏無羨の元まで辿り着いた江澄は、胸ぐらを掴むと水鬼が手を伸ばすより先に剣の柄を握りしめ、再び水上へと飛び出した。
     全力で霊力込めていたせいで、自分が思うよりも勢いがついてしまい、そのまま川岸へと転がるように着地した。
     ゴツゴツと石の上を転がり、顔や、剥き出しの肩を擦りむいたが、江澄は決して魏無羨を離さなかった。
     飛び起き、未だ魏無羨の手足に纏わりついている水鬼の首を三毒で刎ねた。足元に転がった頭を蹴り飛ばし、魏無羨の元へ膝をつくが、その顔色は白く、胸が動いていなかった。
    「魏嬰ッ! 起きろ! 魏無羨!」
     拳で彼の胸を何度も叩き、大声で呼びかける。数度繰り返せば、魏無羨は口から水を吐いて呻き声をあげた。白い頬を手の甲で叩くと、ゆっくりと目を開けた彼がこちらを見た。
    「江澄……もっと優しく起こしてくれよ」
     この後に及んで冗談を口にする魏無羨に、江澄は目を真っ赤にしながらもう一度、彼の胸を強く叩いた。
    「ふざけるな! 死ぬところだったんだぞ! 俺を置いて死ぬなど、絶対に許さないからな!」
     魏無羨の左手から随便を取り上げ、強引に魏無羨の手甲の紐を解いて、深く傷ついた彼の右手に巻きつけた。
    「痛い! 江澄離せ! 離さないならもっと優しくしてくれ! 怪我人なんだぞ!」
    「うるさい! お前が間抜けにも、水鬼如きにやられたのが悪いんだろ! 少しでも悪いと思うなら、今すぐその口を閉じろ!」
     川岸で、水鬼の骸が散乱する中、いつもと変わらない口喧嘩をしている二人の元へ戻った弟子たちは、意気揚々と二人の喧嘩に口を出し、最後には仕留めた水鬼の数が多い者が、おやつに西瓜が出た際、一切れ多く食べる権利を獲得することとなり、怪我をして不利になったにも関わらず、魏無羨が一人勝ちしたことで幕を閉じた。
     
     
     
    「なんというか、少年の頃から魏先輩らしいですね」
     下界よりも随分と涼しい雲深不知処の東屋で、藍思追は向かいで妙に疲れた顔をしている金如蘭に微笑んだ。
     魏無羨の失敗談を教えてくれと、江晩吟から話を聞き出した金凌は、茶の間の話にもってこいだと二人に話して聞かせていた。奇しくも、通りかかった魏無羨と含光君、それから、金凌と共に来ては雲深不知処の入口で別れた江晩吟の耳にその話が流れ、途中から本人たちの喧嘩を挟みながら最後まで話を聞くことになったのだ。
     今、その三人は山を降りたためここには居ない。
     思追の隣で話を聞いていた藍景儀は、江晩吟から聞いた話をそのまましただけなのに、魏無羨に絡まれ疲弊した彼を労うように、冷めた茶を金凌の杯に注ぎ足してやった。
    「きっと、魏先輩は江宗主に花を持たせた買ったんでしょうね」
     思追の言葉に、金凌は苦く笑う。
     自分達の夜狩について来ても、子供たちが手柄を立てられるよう。努力が報われるように動き、見守る魏無羨の姿が頭をよぎり、景儀も苦い顔をした。
    「でも、まさかこんなくだらない話を聞いた含光君が、外叔父上に勝負を挑むなんて思いもしなかった。案外、喧嘩っ早いのか?」
     睨み合いながら、雲深不知処を降りていった二人を思い出し、金凌は不可思議なことが起こるものだと思追を見た。藍思追の育ての親は、あの含光君だと聞いたとき目玉が飛び出しそうなほど驚いたものだ。育ての親であったなら、自分たちの知らない含光君の一面を見たことあるのではと問えば、思追は苦笑しながら首を横に振った。
    「魏先輩と共に居るようになってから、含光君は少しずつ変わっていったように思います。それに、江宗主の煽りに乗るようになったのも最近のことかと。ただ、どうして競おうと思われたのか、不思議ですね」
     首を捻る二人を前に、景儀は何故わからないんだと頭を抱えた。けれど、この二人にそれを正直に言うのは憚られ、そのまま純粋な大人になればいいとあえて景儀は喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。その代わり、話の方向を変えようと二人に向かって手で魚を作ってみせた。
    「魏先輩なら、水鬼退治のついでに魚を捕って帰ってこないかな?」
     景儀の言葉に、金凌は呆れ顔ながら深く頷く。
    「あり得るぞ。含光君と江宗主が退治してる間、暇だとか言って魚とりに精を出してそうだ」
    「なら、魚に合う副菜でも用意しましょうか」
     思追はにこりと笑うと、弟子の一人を呼びつけて厨番への伝言を頼んだ。
     大人たちの去った東屋は、穏やかな時間が流れ、同年代の少年三人は蘭陵で最近人気だという菓子をつまんだ。どこかで、大人気無い勝負をしているであろう大人三人を思い浮かべる。それぞれの思いはあれど、早く帰ってこないかと帰宅を心待ちにしながら、少年たちの話題は近状の話へと舵が切られた。
     

    〈完〉 
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