七夕 七夕の夜、中也は仕事を終わらせて自宅に帰ってきた。玄関には、見慣れた靴が一足。普段、中也が履いている靴より大きい革靴だ。恋人の太宰の靴で間違いなかった。「今日は来たのか」と思いつつ、突然の来訪に嬉しく思っていた。太宰はいつも気分に任せて行動するので、絶対外せない用事以外でいつ会えるかどうかは太宰次第だった。探偵社とポートマフィアは一応協力関係にあるので、適当に理由をでっち上げて仕事中に会えなくもない。ただ、この方法を使うのは中也の仕事に対するポリシーに反している。幸い、太宰の方から週に2、3回は中也の家にやって来るので、逢えなくて寂しいと思ったことはなかった。
「中也、おかえり〜」
「ただいま」
リビングには、すっかり部屋の景色に馴染んでいる太宰が、革張りのソファーで寛いでいた。
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