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    おたおめ、幹部。
    酔っ払った幹部を書いたら激甘になりました(当社比)。
    バレンタインデー→ホワイトデー→本作
    になります(イベントシリーズ)。

    #太中
    dazanaka

    4月29日「はぁ〜、やっと仕事終わったよ。今日に限って国木田君が離してくれないなんて……」
     太宰はため息を吐いた。今日は4月29日で、中原中也の誕生日だ。誕生日と云うことで、中也の家で一緒に食事をする約束をしていた。
     バレンタインとホワイトデーを過ぎても、ふたりの関係はまだ続いている。バレンタインデーに散々キスをして、ホワイトデーに身体を繋げたと云っても、中也は太宰に対して恋人として接することに気恥ずかしさがまだあるようだ。その姿は太宰にとって、とても愛おしいモノだった。だから今日は、思いっきり甘やかしてやりたいと思っていたのだ。ドロドロに溶けてしまうくらいに。それなのに、これだ。太宰にはサボり癖があり、提出すべき報告書が山ほどたまっていた。勿論報告書を書く暇がないほど忙しい時もあり、それは仕方がない。国木田も少しなら見逃してくれただろうが、太宰がためた書類は提出期限が大幅に過ぎてしまっていた。太宰が定時で帰ろうとすると、国木田に「書類を書け」と催促されたのだ。いつもなら適当にのらりくらりとやり過ごせたのだが、たまりにたまった書類を前に、国木田も見逃せなくなっていた。こんなことになったのは要するに、日頃の行いのせいだった。
     探偵社を出た頃には21時を過ぎていた。ケーキを買って帰ろうにも、開いている店が限られてきてしまう。この時間だと、開いているのは大手スーパーかコンビニくらいだろう。中也の家に向かう途中にある大手スーパーに、太宰は急いで向かった。

     スーパーに到着すると、スイーツコーナーに直行する。幸いこの店舗には来たことがあるので、太宰は何処に何があるか、しっかり記憶していた。閉店時間が近いため、多くのスイーツには値引きシールが貼られている。誕生日なのに値引きされたスイーツを贈ることになるのは、あまり良い気持ちがしない。「来年は中也の誕生日までに書類を処理しよう」と太宰は思った。
    「ケーキっぽいのは、これだけか」
     売れ残っているのはシュークリームやクレープなどの比較的軽めなスイーツが多かった。誕生日なら、もう少し華やかなモノがいい。そんな中、唯一残っていたのはモンブランだった。
    「中也も食べたがってたし、これにしよう」
     ――とは云っても、中也が食べたがっていたモンブランはデパ地下のモンブランだったのだが。今はこれしかないので仕方がない。早く中也に逢いたくて、太宰は早足でレジに向かい会計を済ませた。途中で生花コーナーにも行ってみたものの、何を買えば良いのか分からず、結局モンブランだけを購入した。我ながらなんて情けないんだ、と思いながら太宰はモンブランの値引きシールを剥がした。

    ***

    「中也、ただいま〜」
     あれから急いで中也の家に向かったので、太宰は若干息を切らしながら玄関に入った。いつもなら返事がある。それがないと云うことは、やはり怒っているのだろうか。顔を見ないと分からないので、靴を脱いでダイニングに向かった。
     ダイニングテーブルには、ワインボトルとグラスが2脚置いてあった。中也のグラスには、ワインが僅かに残っている。太宰のことを待ちきれなかったようだ。当の本人はテーブルに突っ伏して眠っていた。とりあえず買ってきたモンブランをテーブルに置き、キッチンに向かった。食事はどうしたのだろうと思ったので冷蔵庫を覗いてみると、中にはサラダが入っていた。他は太宰が来たら作ろうと思っていたのだろう。
    「中也、ごめんね。帰ってきたよ」
     素直に寝かせておくか迷ったが、中也は太宰のことを待っていたのだ。太宰はひとまず中也を起こすことにした。体を軽く揺すって声を掛けた。
    「ん……、だざい?」
    「ただいま。遅くなってごめん」
    「ずっと、まってたんだからな!」
     中也は随分酔っているようだ。顔を真っ赤にさせて中也は云った。
    「わびにちゅーしろ!」
     太宰が想像しているよりもずっと中也は酔っていた。普段中也は、「キス」のことを「ちゅー」とは云わない。
    「いいよ。お詫びならいくらでもするから」
     立ち上がった中也が酔ってふらついた所を太宰が支えた。中也が太宰の首に腕をまわして口付けを強請る。
    「ん!」
     中也のキス待ち顔が可愛くて、太宰は写真を撮りたくなってしまったが、これはお詫びなんだからとまたの機会にすることにした。中也を抱きしめ、口付けを捧げる。許しを請うように触れるだけの口付けを、何度も何度もする。これで許してくれると良いのだが。触れるだけで物足りなくなった中也が口を少し開いた。その隙を逃さず、太宰は口付けを深くする。ワインの味がした。上下の歯列をいつも以上にゆっくりなぞった後、中也の舌を可愛がってやった。熱の籠もった吐息すら漏らさないように、唇を離すことを許さない。中也の体が快楽に震えた。最後に舌をじゅっと吸ってやると、中也はすっかり力が抜けてしまったようで、太宰に体重を預けてきた。
    「だざい、すわれ」
    「うん」
     中也に云われるがまま、太宰は中也の椅子に座った。中也は太宰の膝に、向かい合わせで乗ってきた。
    「ここでシたいの?」
    「それはあとだ」
    「じゃあ、どうしたいのさ」
    「これ、たべる」
     中也が指さしたのは、太宰が買ってきたモンブランだった。
    「だざいが買ってきてくれたから……」
    「ごめんね、スーパーのモンブランになっちゃって」
    「うれしいからいいぜ」
    「それは良かった」
     太宰は中也が嬉しく思ってくれたのなら良かったと安心すると、テーブルの上からモンブランを取った。フタを外してスプーンと一緒に中也に渡した。
    「だざい、あーん」
     モンブランを貰って嬉しいのか、酔っているせいなのか、今日の中也はいつもと違っている。こんなに堂々と「あーん」なんて、太宰は聞いたことがなかった。
    「私が食べるの?」
    「あーん」
     中也がふにゃふにゃした笑顔で云うので断れずに、太宰は大人しく口を開けた。スーパーで買ったただのモンブランなのに、何故だか美味しく感じられた。
    「うまい?」
    「美味しいよ」
    「あーん」
     中也は嬉しそうに笑うと、今度は口を開けた。「俺も食べる」ということらしい。太宰はスプーンでモンブランをすくい、中也に食べさせた。
    「どう?」
    「うまい。ちゅーしろ」
     こんな中也を太宰は見たことがなかった。照れているいつもの中也も可愛いが、この積極的にいちゃいちゃしたがる中也も可愛い。今すぐブチ犯したい衝動を何とか抑えながら、太宰は中也に口付けを贈った。

    ***

     あれから「あーん」と「ちゅー」を散々させられ地獄なのか天国なのか分からなくなった頃、ふたつのモンブランが漸くなくなった。もう耐えられない太宰は、中也を抱えて寝室に向かった。
    「中也、もう我慢の限界なんだけど」
     ドサリと中也をベッドの上に下ろす。中也の酔いはまだ醒めきっていないようだ。ふにゃんとした雰囲気がまだ残っている。
    「だざい、だいすき」
    「それはこっちの科白!」
     耐えきれなくなった太宰が中也に覆い被さり抱きしめる。中也は太宰の背中に腕をまわし、ポンポンと軽く叩いた。太宰は暫く抱きしめた後、中也を喰べてしまおうと顔を上げた。すると――。
     中也はすやすやと寝息をたてていた。あれだけ我慢したのだし起こしてやろうかと太宰は考えたが、そうするのはやめた。明日は中也も休みだからだ。時間はまだたっぷりある。
    「明日、覚えてなよ……!」
     おめでとうとも伝えられなかったので、それも含めて明日はたくさんお返ししてやろう。中也の寝顔も可愛いなと思いつつ、太宰は明日の計画を考え始めた。
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    mia_1203_

    DONEおたおめ、幹部。
    酔っ払った幹部を書いたら激甘になりました(当社比)。
    バレンタインデー→ホワイトデー→本作
    になります(イベントシリーズ)。
    4月29日「はぁ〜、やっと仕事終わったよ。今日に限って国木田君が離してくれないなんて……」
     太宰はため息を吐いた。今日は4月29日で、中原中也の誕生日だ。誕生日と云うことで、中也の家で一緒に食事をする約束をしていた。
     バレンタインとホワイトデーを過ぎても、ふたりの関係はまだ続いている。バレンタインデーに散々キスをして、ホワイトデーに身体を繋げたと云っても、中也は太宰に対して恋人として接することに気恥ずかしさがまだあるようだ。その姿は太宰にとって、とても愛おしいモノだった。だから今日は、思いっきり甘やかしてやりたいと思っていたのだ。ドロドロに溶けてしまうくらいに。それなのに、これだ。太宰にはサボり癖があり、提出すべき報告書が山ほどたまっていた。勿論報告書を書く暇がないほど忙しい時もあり、それは仕方がない。国木田も少しなら見逃してくれただろうが、太宰がためた書類は提出期限が大幅に過ぎてしまっていた。太宰が定時で帰ろうとすると、国木田に「書類を書け」と催促されたのだ。いつもなら適当にのらりくらりとやり過ごせたのだが、たまりにたまった書類を前に、国木田も見逃せなくなっていた。こんなことになったのは要するに、日頃の行いのせいだった。
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    mia_1203_

    PASTイベントシリーズ
    バレンタイン「ついに、これを使う時が来たか」
     中原中也は、眉間にシワを寄せながらひとり呟いた。今日はバレンタインデーだ。それも、元相棒の太宰治と恋人になってから初めての。何がどうなったのか、あれほど嫌いあっていたはずだったのに、気付けば恋人などという関係になっていた。恋人になってからまだ1ヶ月程しか経っていないので、いつまでこの関係を続けられるのか皆目検討がつかない。中也にも太宰にも、「恋人」という実感がまだ湧いていないのだ。そんな状況の中、バレンタインデーは恋人になってから初めて何か出来るイベントだった。だから、中也は張り切っていた。自分たちが「恋だの愛だの口に出すことは似合わない」と思っているものの、こんな関係になってしまった以上、嫌いな気持ち以上に「好き」と思っているのは間違いなかった。お互いそれが分かったからこそ、この関係を受け容れたのだ。恋人になってふわふわした気持ちの中、目前に迫っていたのはバレンタインデーだった。今思えば、通常であればこんなものは買わなかっただろう。恋人になりたてで、あり得ない程浮かれていたのだ。そしてあれこれ迷って、購入してしまった。ハートの形をした、陶器のマグカップを。
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